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八十分間異世界半周  作者: 仙葉康大
第六章
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雲は無慈悲な夜の帝王②

 林間学校と言っても古い木造建ての校舎に泊まるわけではない。


 これから三日間、わたしたちが使わせてもらう宿泊施設は、「青年の家」という名前で市民県民に親しまれている。運動場、テニスコート、体育館、キャンプ場が近くにあり、部活の合宿にも使えるし、予約をいれるだけで誰でも無料でスポーツやキャンプを楽しめる。


 バスが停まった。


 私たちは「青年の家」の本館の前に降り立ち、そばにある広場に移動した。三本あるポールの先には、国旗や県旗や「青年の家」の旗が掲げてあった。


 施設の人にあいさつする。簡単な説明を受けてから、私たちは本館に入って行った。


 通路を進み、階段を上り、連絡通路を歩いて西棟へ。その四階の405号室が私たちの班に割り振られた部屋だった。


 和室だ。座布団が部屋の隅に重ねておいてある。その傍に足を折りたためるタイプの座卓が立てかけてある。テレビはない。ベランダもないが、窓はある。木々の乱立する、山の斜面が見えている。


 ボストンバッグなどの大きな荷物は置いて、リュックとお弁当だけ持ってすぐ部屋を出る。


 今日一日目の予定は、午後から登山、帰ってきて、夕食を食べ、夜は天体観測、ということになっている。


 野球やサッカーのできるグラウンドに集合した私たち生徒は、点呼ののち、散らばってお弁当を食べ始めた。ほとんどの生徒は班で固まっている。私たちもそうした。色とりどりのレジャーシートが敷かれたグラウンドは、俯瞰ふかんしてみると、さながら、一個のモザイク画のように見えるだろう。


 お弁当箱は今日に限り、使い捨ての、捨てられるプラ容器だ。お母さんが早起きして作ってくれた卵焼きを食べる。


「なんか怪しい」


 そう呟いた八重の視線の先は、空だった。鈍色の、重たそうな雲が私たちのはるか頭上を(おお)おうとしていた。


「雨さえ降らなければ行けるでしょ。大丈夫大丈夫」


 すみれは楽観的だ。うらやましい。私なんかはすぐ悪い方悪い方へ想像してしまうから。


「ねえねえ山頂で何する? ヤッホーってする?」


 興奮して話すすみれをよそに、さくらと八重はいよいよ暗雲に埋め尽くされた空を仰いでいる。


「無理そうね」

「だね」

「なんでそんなこと言うの? 音根は行けると思うよね?」

「う、うん。い、行けたらいいね」


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