ノーパンツ・ノーライフ④
お風呂から上がったあと、寝るまでは自由な時間だ。やらなければならないこと、宿題とか予習とかは夕食までに済ませてある。
本棚の前に立つ。
今日は何の本を読もうかな。
あ、そうだった。私は手と手を軽く合わせる。深入くんから本を借りるんだった。
姿見で身だしなみを確認する。パジャマのボタンはちゃんととまっている。よし。あとは行くだけ。
それから十五分ほど部屋の中を歩き回った後、私は廊下に出た。隣の部屋のドアをノックする。
「はい」
深入くんの声はいつもより少しだけ高いような気がした。
「は、ははは入っていい?」
「音根か?」
扉が開いた。
「どうした?」
「あああああの、ラ、ラララライトノベル借りて読んでみたいって今朝言ってたでしょ。だ、だから、その、き、来ちゃった」
そのとき、部屋の中と外、その境界線で至近距離で話をしていたものだから、ふと、目が合ってしまった。
とうに湯冷めしたはずの体が一気に火照りを取り戻した。
「まあ何だ。中に入るか?」
「う、うん」
「いや、待て。ダメだ。ダメに決まってる。馬鹿か俺は」
「え? い、いい入れてくれないの?」
「悪いが、物の受け渡しは廊下で行う。いいな?」
私がうなずく間もなく、深入くんはドアを閉めてしまった。拒絶の音が私の鼓膜を震わせた。
部屋に入れてくれるものとばかり思っていた。
私は一人で舞い上がっていたみたいだ。兄妹になったとはいえ、私たちに血のつながりはない。普通の兄妹のようにお互いの部屋を行き来するなど、許されないのかもしれない。
数分後、深入くんはラノベを三冊、持ってきてくれた。
「気に入らなかったら、途中で読むのやめていいからな」
「ああありがとう」
にじんできた涙を悟られないように、私はうつむいたままその場をあとにした。




