ハードスケジュールな正月
祖父母の家で暮らしていた一時期、正月がハードだった。もしやこれが普通かとすり込まされていたが、成長し、友人に聞いたところ変だよと指摘された。
正月前、ばーちゃんが機械で餅をつく。味は何もない白とゴマ入りとよもぎ。四角に切り分けてそのまま食べる用と凍らせる用と鏡餅用を用意しする。なんでそんなに作るのか当時は気もしなかったが、お節がない分だろうと思う。
ちなみにお節を一度も喰ったことがない。お雑煮とお汁粉攻めの正月である。
それで、鏡餅は全部屋分を用意するのだ。勿論、トイレも風呂場も車庫にすら置く。そうなると自ずと「八百万の神っているんだな」と思うわけで、鏡餅のそばにはろうそくも立て、除夜の鐘と共に一斉にコタツから這い出て家の中をぞろぞろと徘徊するのである。
まずは神棚から、ついで仏壇。その次からは各々自分の部屋を拝み、あと被らないようにそれぞれ好きな部屋を回って歩き、最後に外に出てブルブル震えながら車庫で手を合わせる。車庫は火をつけない分、余計に寒かった。
そうして、全て終えるとロウソクの火を消しコートを着て、近所の神社を巡る。――そう、巡るのだ。三箇所。受験のときは四箇所に増える。
やっと家に帰れるのは二時三時。
へとへとの寒暖の差で頭は痛いし、腹減るしで、コタツでぬくぬくしつつお汁粉喰って寝る。次の日、起きるのが昼近くてもしょうがない。体力を温存できるときにしておかないと、次に待ち受ける母の趣味の福袋巡りが持たないのだ。
正月が普段よりキツイのが、我が家であった。
祖父母の老いと引っ越しでなくなってしまった習慣。




