第18話 閑話
お待たせしました。
よろしくお願い致しますm(_ _)m
「こういう事をされると困るのだが」
「何を言っているのでしょうかねぇ。トワイセル公家嫡男殿」
「……公爵家嫡男ともあろう者が、子爵令嬢に手こずるとは。情けない」
チッと舌打ちをしながらも、淡褐色の瞳は楽しそうに目の前に座る男を見つめている。案内されて入った応接間の調度品はきっちり整えられ、何とも憎らしく思えるほどに公爵家に相応しく上品に並んでいるのだった。
「ふ、貴殿に比べれば純真無垢な想いからくる行動じゃないですか」
「純真……無垢だと。笑わせるな、この腹黒めが」
「どうやら公家嫡男殿は虫の居所が悪いらしいですねぇ」
「煩い」
クツクツと笑う見目だけは誰よりも……否。この国で一番美しいとされる男を睨みつけた。
「貴様のせいでティアが里帰りする事になったんだぞ。折角の休みだと言うのに……」
「それはそれは。おかげで彼女の顔が蕩けんばかりだったのには感謝しかありません」
「いつまでそんな気色悪い話し方をしているんだ。今すぐ止めろ」
苛立たしく思い、手にしていたティーカップを荒々しく置けば冷めた眼で見つめ返してくる。いつもそうだ。冷静沈着なこの男が乱されるのはいつだって未だ幼い少女を目にした時だけだ。
ある日の夜会で声をかけようと近づいた時、見てしまったのはロケットに隠された姿絵だ。ハッキリと見えたそれは自身の愛する人の妹だった。偶然とはいえ見てしまった後は後悔した。甘く蕩けた瞳の中に、己と同じ狂愛を感じたから。
「はやく己の手中へ閉じ込めてしまえ」
「それが出来れば苦労はないよ。あーあ。イグナが羨ましい」
「ふんっ、貴様には借りがあるからな。力を貸すのはやぶさかではないが……我が愛しの姫には逆らえまい?」
「……イグナも大概人の事言えないよね」
「貴様もな」
呆れを含んだ声音に笑いが込み上げる。要は己自身も、目の前のこの男も似た者同士という事だ。己の手の届くところへ閉じ込めドロドロになるまで愛し、可愛がって己だけを見て欲しいという何とも身勝手な仄暗い欲を、執着を持った者。
目の前の男も己自身も、自覚があるだけまだマシだと言い聞かせるように慰めた。
紅茶が温くなる頃、公爵家に仕える優秀な執事が代わりの茶を淹れ直した。湯気とともに香しい匂いが辺りを包む。
それを機に本来の目的を済ませてしまおうと口を開いた。
「……手紙の摺り替えはやり過ぎだ」
「あぁ、バレたか。オーランティア嬢も一緒じゃ、今頃は彼女にも知られているかな」
「だろうな。ティアもフローラル嬢も馬鹿ではない」
「と、なるとヨーグ商会はもう使えないか……。仕方ない、手紙は諦めるしかないのかぁ」
確信を突けば、焦る事なくあっさり認めた。愛しの姫が何か思い詰めた顔をしていたからこうして公爵家へやってきた訳だが……。こうもすんなり認めてしまうなど手紙の摺り替えが本人にバレても構わないという事なんだろう。
「君のおかげで彼女の亡命も防げそうだからね。礼を兼ねて旅行がてらこちらへ来てもらったんだ。旅費はもちろん私が持つよ」
「チッ……。要らん世話だ」
ニヤニヤ嬉しそうに話す男の顔に無性に苛立った。学生の頃から人の神経を逆撫でする事を言うのが常だった。涼しい顔をして吐き出される毒にあてられ、再起不能にさせられたヤツが何人犠牲になった事か。
「まぁまぁ、そう言わず。ついでに彼女の事に関する君の愛しい人の動向を定期的に教えてくれると嬉しいな? もしくはオーランティア嬢の行動制限とかね。下手に動かれると彼女の逃走を手助けするから困るんだよねぇ」
「誰が貴様なんかに……」
「もちろんタダで、とは言わないよ。君の欲しがっていた例の件を融通しても構わないと殿下から許可を貰ったんだ。はい、コレ。殿下から預かった書面」
「……よこせ」
「交渉成立だね。よろしくお願いしますよ。公家嫡男殿?」
何がついでだと思いながらも目の前をチラつく書類を受け取った。これがあれば暫くは日照り続きの我が領地も少しは落ち着くだろうと安堵した。
……欲しい物を手に入れるためならば痛い所を容赦なく抉るその見事な手腕に、本当に苛立たしいと毒づいた。
えーと。こんなはずじゃなかったのです←
セリシアさまもイグナさまも愛する人に一直線って事だね☆(逃走)
ここまでお読みくださりありがとうございます♪
次回こそは二人の絡み?があるかと!……たぶん。




