9.ばけもの
「これがたからものだよ!」
村についたエミーたちは、さっそく子どもたちが集まる広場へ向かいました。キラキラとしてとてもきれいな、魔法の羽をエミーはいじめっこたちに見せつけます。
村の子どもたちは、その美しさに我先にと魔法の羽を間近で見ようとしています。
エミーは、みんなの真ん中で注目を浴びてとてもいい気分です。
しかし、サーとリウウは人間の村に来るのは初めて。広場の端っこで目立たないようにひっそりとエミーを待ちます。
「おい、あれはなんだ……?」
しかし、魔法の羽に夢中になっていた子どもたちのひとりが、サーとリウウを指さして問いかけます。
サーとリユウはぎくりと身をこわばらせ、エミーはパッと表情を明るくします。
「あのね、2人はね!わたしの……
「ばけものだ!」
誰が言ったのかは、わかりませんがその一言がきっかけでサーとリウウはさらに居心地が悪くなりました。
「おい!エミーがバケモノを連れてきたぞ!」
「バケモノに私たちを食べさせる気なんだ!」
「待って!ちがう!ちがうわよ!!」
ズキリ。
サーは胸の奥が痛くなるのを感じました
「リウウ、森へ帰ろう。」
「いいのかい?このままじゃ、寂しくなってしまうよ」
「いいんだ、ここにいたらエミーの邪魔になる。寂しくなんてない、オレはもともとひとりぼっちの小鬼だったんだから。」
ああ、サーは......傷付いたんだね......。
サーの諦めたような表情を見て、リウウはその感情の名前を教えることが出来ませんでした。
「私の友だちをバカにしないで!」
サーとリウウが去った後。
泣いてばかりだったエミーが、初めていじめっ子たちに向かって声を荒らげて怒りました。いじめっ子たちに掴みかかって、殴るや蹴るやの大乱闘です。
そして、エミーはっとします。
いままで、森の中で私が宝物をバカにしてきた怪獣たちも同じ気持ちだったんだわ……。
ひとの大切なものをバカにするなんて、ひとと違うものを違うからという理由だけで傷付けるなんて、なんてバカなことをしていたんだろう。
そしてエミーは、サーとリウウがとっくに自分の宝物になっていることに気付きました。
しかし、エミーがほかの子どもたちに必死に2人のことを説明しようとしている間に、サーとリウウはそっと村から姿を消していました。
サーとリウウは、あまり言葉も交わさずに森の中でそれぞれの家に帰ります。
エミーを無事に村まで送り届けたいま、2人が一緒にいる理由はありませんでした。