4.ありがとう
「森の奥に、なんでも知っている物知りがいるらしい」
森に長く暮らすサー。
風のうわさで、森の奥にとても物知りな生き物がいると聞いたことがあるそうです。2人はその物知りを訪ねることにしました。
暗い森の中で大きな木の根っこを越えて、道とも言えない道を葉っぱをかき分けかき分け進んでいきます。
しかし、しばらくするとエミーがしくしくと泣き始めてしまいました。歩きにくい森の中を進んできたエミーの足は、靴を履いていてもボロボロです。かかとは靴擦れ。疲れが溜まっているのか、膝はガクガクと震えています。
「人間はよわい生き物だな」
エミーを見たサーは、ふん。と鼻で笑います。
人間といえば、ひとりでは何も出来ないから集まって暮らしている弱い生き物だと、風のうわさで聞いたことがあります。
「そんなことじゃ宝物は見つけられない」
サーは全く先へ進めないことにイライラとしてエミーに冷たく言います。
エミーはそれを聞いてぽろぽろと涙を流しました。頑張りたい気持ちはあるけれど、体はいうことを聞いてくれません。
「……だって、こんな森の中なんて歩いたことないもの!」
エミーが声を荒らげて、大きな声で泣き始めるとサーは「ほかの怪獣に襲われるぞ!」と注意しました。
ここはサーの縄張りから離れた森の奥。どんな怪獣が出てくるかわかりません。サーやエミーを一口で食べてしまえる大きな怪獣だって森の中にはいるのです。
「仕方ない」
サーはエミーをひょいと背負うと、ずんずんと森の中を進みました。こうした方が早く森の中を進めると思ったからです。
「ありがとう、サー」
エミーの言葉になんだか背中がムズムズするような気持ちになりましたが、サーにはこの気持ちがなんなのか分かりませんでした。