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11 空を越えて

 シルヴィオ教会では、壮年の真面目そうな司教が応接室で歓待してくれた。

 俺たちのことは法術を活用した教会ネットワークで伝わっており、積極的な支援を申し出ていただいたが、とりあえず必要なものもなかったので、昼食だけを頂くことになった。



 「いやあ、いっぱい頂いたね♪」

 スゴイご馳走をたんまりいただいて、駄女神様(シルビア)は非常に満足そうだ。

 女神の司徒と勇者ということで、お昼から俺も食べたことのないようなご馳走がどんどん出てきたし…。


 司教さんからは残念ながらあまり新しい情報は入手できなかったが、俺たちが早く到着したことを王都の教会へ伝えてくれた。今のペースだと明日の夕方には着けそうなので、向こうで今までに得た魔王軍の情報を整理してくれるらしい。



 俺たちは再び『足こぎ白鳥さん号』に乗って空の旅を再開した。

 気候もいい時期なので、空を飛ぶサイクリング気分に浸りそうになる。


 調子よくペダルを漕いでいると、突然、警告音が鳴った。

 『大変です!!前方から未確認の中型の飛行物体が多数接近しています!』


 ナビの音声と共にレーダー画面がせり出してきて、前方に多数の飛行物体が近づいてくるのを示している。


 「卓也!変身して!!変身後の方が対応能力が上がってくるよ!!」

 「わかった!!変身!仮面勇者(ブレイブ)!!!」

 掛け声とともに俺は通常の仮面勇者(ブレイブ)に変身する。

 幸いなことに途中で別形態の仮面勇者(ブレイブ)に変身し直すこともできるとナビゲーターが教えてくれたのだ。


 『では、勇者(ブレイブ)アイを使って、敵の状況を把握してください。』

 「了解!勇者(ブレイブ)アイ!!」

 仮面の目の部分が光り、前方の光景が拡大されていく。


 俺の目に前半身が鷲、後ろ半身がライオンの怪物グリフォン…を擬人化したような怪物が編隊を組んで飛んできている。

 最後尾には一際大きなグリフォンぽい怪人…おそらく全長は五メートルを超えるのではなかろうか?

 彼らのオーラから判断して、『魔王軍の怪人と戦闘員』というところだろう。

 どう見ても足こぎ白鳥さん号より彼らの動きの方が圧倒的に速い。

 これは相当ヤバイ事態なのでは?!


 『白鳥さん号バルカン砲を照射してください!』

 白鳥さん号のフロント部が開いて、機関砲がせり上がってきたのだけど…。

 さらに、いつの間にか俺の目の前にバルカン砲照射用と思われるトリガーが照準セットと共にせり上がってきた。


 うん、迷っている暇はない!

 俺は機銃照射用トリガーを握ると、グリフォン編隊に向けてバルカン砲を撃ちまくった。

 ガガガガガガ!!!!

 重低音と共にバルカン砲は火を噴き、次々とグリフォンが墜落していく。

 それを見て、グリフォン編隊は大きく広がって、こちらの砲撃を躱そうとする。


 『スワン砲を発射してください!!』

 ナビの音声と共に白鳥さん号についてる白鳥の頭の口が大きく開き、中から『光線砲』と思しきものがせり出してきた。

 …移動手段のチープさと、武器のチートさがバランスが取れていないんだけど…。


 『スワン砲発射!!』

 迷っていたら『負け』だと感じ、俺は再びせり上がってきた『スワン砲発射トリガー』を引き、グリフォン編隊に向けて光線砲を次々と発射する。

 グリフォン戦闘員たちは次々と炎に包まれて墜落するが、二回り大きなグリフォン怪人だけは光線砲の直撃を受けても全くダメージがないようだ。


 「おのれ!よくも我が戦闘員たちを!!

 グリフォンキック!!!!」

 グリフォン怪人のきりもみキックの直撃を受け、白鳥さん号は翼が大破し、あっという間に飛び続けられなくなる。


 「やばい!墜落する!!」

 「卓也、女神バリアーを張るよ!!」

 バリアーを張ってくれたシルビアを抱えると、俺は墜落中の白鳥さん号から飛び降りる。


 グシャーン!!

 墜落の衝撃で白鳥さん号はぺしゃんこにつぶれてしまう。

 大型トラックとの正面衝突で原型をとどめなくなった軽自動車を彷彿とさせ、短い時間であったがともに空の旅をした白鳥さん号を……おいおい!!白鳥さん号の中からうねうねと触手のようなものがたくさん出てきて…少しずつ変形して元に戻りつつあるんだけど?!!

 白鳥さん号て生物だったの?!!



 「驚いたな!!ヒーローも乗り物も無事というわけか?!!

 だが、私はお前さん方を倒して、戦闘員たちの敵を討たねばならん!行くぞ!!」

 グリフォン怪人は俺たちの方に飛んできた後、大きく翼をはためかす。

 同時に大量の羽根が棒手裏剣のようにこちらに飛んでくる。

 俺はシルビアの元から離れると、勇者(ブレイブ)オーラロケットパンチを発射する。


 羽手裏剣はシルビアの『女神バリアー』で防げたようだが、俺のロケットパンチもグリフォン怪人に躱されてしまう。

 グリフォン怪人は空中を自由自在に飛び回っているのだ。


 『そんな卓也さんに朗報です♪

 まもなく足こぎ白鳥さん号が完全復活しますが、白鳥さん号が提供する飛行パーツを身に付けることで仮面勇者(ブレイブ)も空を飛べるようになるのです!!』

 なんだと?!!…と思って白鳥さん号の方に目をやると、めきめきばきばきとすごい音をさせながら間もなく元の形に戻ろうとしている。

 …ずいぶんグロいけど、一生懸命俺たちを運んでくれたことを思い出し、なんとか我慢することにする。


 『さあ、【ウィングスクランダー!!】と力いっぱい叫んでください!』

 あい変わらず恥ずかしいことをさせてくれるようだけど、そこはちょっと我慢して、『ウィングスクランダー!!』と思い切り叫ぶ。


 するとほぼ元の形に戻りつつあった白鳥さん号から翼が外れると、謎の光線(笑)が俺の体に伸びてきて、俺の背中に翼が適性サイズになるとくっついてしまう。

 「飛行(スカイ)仮面勇者(ブレイブ)参上!!!」

 心の奥底から勝手にセリフを叫んでしまう。


 飛行(スカイ)仮面勇者(ブレイブ)になった途端にどうやって飛べばいいのかが『感覚的に』わかるようになる。

 俺の意志を受けて、魔法力を行使し、翼から魔法の推進力を出して空を自在に飛び回ることができるようだ。

 なお、ドラゴンや目の前のグリフォンのような飛行型の魔法生物も同じような方法で飛ぶらしい。


 俺とグリフォン怪人はしばし、空中を飛び回りながらパンチやキックの応酬をする。

 しかし、高速で空中を飛びながら突きや蹴りを相手に叩き込むのはかなり難しい。


 しばしやりあった後、俺の頭の中にナビの声が聞こえてくる。

 『仮面勇者剣(ブレイブソード)を召喚してください。残りの変身時間が短くなりますが、その威力と命中率は絶大です。』

 「わかった!仮面勇者剣(ブレイブソード)招来!!」

 俺が叫ぶと同時に空から稲妻が走り、俺の手の中に大きな光が現れた。

 まもなくそれは両手持ちの剣へと姿を変え、俺はそれを正眼に構えた。


 「ではこちらも行くぞ、デビルクロー!!」

 グリフォン怪人が叫ぶと両手のかぎ爪が一メートルくらいに伸び、刃のようにきらめいた。

 俺が飛びかかりながら剣で斬りつけるのを、グリフォン怪人は長く伸びた爪で弾き返す。

 しばしお互いの剣と爪で斬りあいをした後、俺の頭の中に再びナビの声が響く。


 『卓也さん、必殺技を使ってください!』

 「了解!行くぞ!」


 俺が気合いを入れると、俺の全身の闘気が大きく膨れ上がり、そのエネルギーが剣に集中すると大きく輝きを増した。


 「必殺!!勇者剣(ブレイブソード)ロケットパンチ!!」

 俺が叫ぶと剣を握りしめたまま、俺の両手は猛スピードでグリフォン怪人に向かって放たれて……そのままグリフォン男を真っ二つにした。


 ……ええと、勝つには勝ったんですが…。

 呆然としているうちに俺の両手は剣を握りしめたまま戻ってきた。




 俺は変身を解くと、元に戻った…いや、気のせいか白鳥の顔がちょっとだけ前より凛々しくなっているような気がするが…一応もとに戻った白鳥さん号のペダルを踏んで空に舞い上がった。

 ちなみにグリフォン軍団の魔石はいつの間にかシルビアが全部回収してくれていた。


 『おめでとうございます!!』

 再びレベルアップ音とともにナビゲーターの声が聞こえてきた。


 『卓也さんと仮面はさらにレベルアップしました。

 詳しい機能はまた『気が向いたら』お伝えしますね♪』

 その突っこみどころ満載の説明はなに?!


 『また、ご覧いただいてからお察しのように足こぎ白鳥さん号もレベルアップしました。

 基本性能が当社比約1.25倍になっておりますので、スピードも速くなったのを体感していただいていることと思います。』

 うん、気持ち速くなったような気がしたんだよね…。

 ということは王都まで予定より若干早く着きそうだね。


 『また、乗り物を『あらかじめ準備』しておいて、ピンチになったら駆けつけてくれるよう『待機』させておくことができるようになりました。』

 一見便利なようで『フラグを立てている』ように聞こえるんだけど…。


 『どうしましょうか?『にゃんバス号』を待機させましょうか?『潜るんです号』を待機させましょうか?それとも『トンダ―バード1号』を…。』

 「ユニコーン号を待機させておいてくれる?」 

 『…了解しました。仕方ないので、ユニコーン号を待機させておきますね。』


 いつも通りわがままなナビさんだ…。

 とは言え、万が一の時はユニコーン号が助けに来てくれる?というのはありがたいことだ。


 そして、再びのんびりした空の旅は再開されたのであった。


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