1/8
プロローグ
マリアの遺体を見つけた時も、悲しいとは感じなかった。
弾痕は三発、彼女の胸に赤黒い孔を空けていた。手にはショットガンを握りしめている。戦おうとしたのだろうか? そうに決まっている。マリアはそういう女だ。そういう女だから伴侶に選び、この一年夫婦として生きてきた。
川底をさらったが娘の遺体は見つからなかった。せめて遺品の一つでもあれば、一緒に埋めてやることも出来たのだが。
風の強い冬の朝、マリアを埋葬した。彼女の体は軽かった。うろ覚えの祈りの言葉を捧げながら、エルウッドは真面目に教会に通わなかったことを悔やんだ。
木材を十字に結び合わせただけの簡素な墓に花を手向け、エルウッドは荒野に出た。
必ず復讐する。殺された妻と娘の仇を討つ。
その時になって初めて、彼は自分が泣いていることに気が付いた。