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ガタタタタンー・・・・
「っ!?」
何だ今の音は・・・?
何かが破壊されるような音。
音がしたのは上だ。
疑似精霊と誰かが戦ってるだけならいいのだが・・・。
・・・・万が一ということもある、2階に上がるか。
階段の踊り場に辿り着くと女が駆け下りてきた。
「お前はさっきの・・・・」
「あ!あんた!早く逃げるわよ!」
「は?」
上を見てみると・・・。
黒い精霊?
「いや、試験なんだから倒さないと・・・・ん?」
「あれは疑似精霊じゃないわよ!!サキュバスよ!」
サキュバスっていうと上級の下位か
そんな精霊がいるとなるとあれが今回の元凶だろう。
構えようとしたが、さっき言われたことを思い出した。
攻撃してはいけない・・・しかもナイフも回収されてしまった。
だがさっきの失格者が一撃と言っていたので、防衛もろくにできないだろう。
逃げるしかないのか?
・・・気にくわないな、奴をそのままにするのは。
「とりあえずお前は逃げろ。」
「何言ってのよ、やられたら失格・・・」
「俺は既に合格している。だから引け。」
「それでもあんた一人じゃ・・・」
「さっさと疑似精霊を倒して戻ってこい。・・・・急げ。」
女は一瞬躊躇したが、すぐに精霊を探しに行った。
これでいい。被害は少ない方がいい。
「あら?よかったの?一人でも」
「いいさ。勝てる気はしないが。」
精霊相手に素手で倒す、なんて聞いたこともない。
多分勝てないだろう。
だが、あの女だけじゃなくて学園全体としても被害は少ない方がいい。
ここで何分足止めできるかの勝負だ。
できれば3分は欲しいところだが・・・。
とりあえず目標は1分にしとくか。
拳法とかやったことないんだが・・・。
構えを作る。
先手必勝だ、先にいかせてもらおう!!
距離を素早く詰めて殴りかかる。
一瞬消えたような感覚を覚えるが、ただ屈んだだけだ。
そのままの体制から右足を蹴りあげる。
サキュバスは大きく飛んでかわした。
「へぇー珍しいわね。先に攻めてくる人間なんて。」
「そうか?」
「そうよ、普通はまず様子を見るもの。」
まあ、虚を突いたというのは自分の中で高評価だな。
攻撃は最大の防御、このまま攻め続ける。
いや、無理だ。
前後に黒い魔球が瞬時にいくつも現れる。
さすが上位。
精霊術の展開が早い。
前と後ろから挟まれたらどうしようもない。
まだ10秒ちょっとしかたってないのに。
「これで終わりね。この大技で葬ってあげるわ。」
こんなときに大技を使わなくてもいいのに。
でもどうする?この数はキツイ、いや無理だ。
俺が契約者なら何とかなるかもしれないが、生憎契約者ではない。
さて・・・