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私は焦っていた。
さっきから合格者が何人も出てる。
その中にはさっきのあいつも入っているだろう・・・多分。
さっきはこちらから襲ったのに、あいつはダメージ無しで解放してくれたので感謝しなければならない。
他の奴ならあの時に失格にされていただろう。
この礼は、入学してから再戦での勝利で返してやろう。
だから今は、精霊を見つけることに集中しよう。
始めてから1時間たって放出された精霊は北校舎、南校舎合わせて60体。
そのうち、討伐済みなのは北21、南17。
南にいる方が有利だろう。
それにしても、不合格者は多い。
既に521人が不合格となっている。
例年の受験をしらないから、1時間で521人が多いかは知らないけど。
討伐されている精霊も少ないような気もするが、まあ知らないからなー。
まあ今は自分よければ全てよしって気持ちで行こう。
誰かとパーティ組んでるわけじゃないし、合格さえできれば何でもいい。
ガタッ、ガタタン
「え!?」
いきなり私の隣のクラスから大きな物音がしたので驚いてしまった。
何よ、全く・・・。
少しだけドアを開けて中を覗く。
「ぐっ・・・・」
「ふふふ、ただの人間風情が私に勝てるわけないわ。」
男と精霊が戦ってる。
男が崩れた机の真ん中にいることから、さっきの音はあの精霊に殴るなり蹴るなりされて吹き飛ばされた音だろう
で、あの疑似精霊のモデルは・・・サキュバス・・・かな
・・・ってことは上位下級LVね。
でも、試験に使う疑似精霊は下位中級固定って決まってたような・・・・?
まあ、何らかの原因で間違ったのかな?
上級となると・・・いや中級でもかなりの装備を備えなければ難しい。
今は、制服にナイフ。
討伐できるのは万に一つの確率もない
さすがにこれは教師に言って強制転移で送還してもらわないと、無理ゲーだわ
「まあ、一撃耐えれたのはあなたが初めてだわ。」
「くそぉ・・・こんなのありかよ・・・」
受験生がサキュバスの攻撃を受けて強制転移された。
ダメージ限界量を超えたのだ。
あんなのに狙われたら即失格だわ
携帯を取り出す。
教師の電話番号は・・・知ってるわけないよね
学校の電話でもいいか
プルルルルル、ガチャ
1コールで出てくれるとはありがたいな
『はい、国立対精霊討伐者養成高校グリモワールですが・・・』
「もしもし、受験生番号271ですが、疑似精霊の中に上級下位のサキュバスが紛れ込んでいるのですが!」
『え、そんなはずはないと思いますが。教師が1日かけてじっくりと点検しましたから。』
「でも現にいるんです!もう一度確認を!!」
『おそらく、外見変異の能力持ちじゃないんですか?攻撃力はそれほどでも・・・』
「今、男子生徒がたったの2撃でダメージ限界を超えたんですよ!?」
『おそらく蓄積ダメー・・・・・』
携帯が弾け飛んだ。
いや、実際は上半分が削り取られた、と言った方が正しいかな。
「おやおや、また人間が・・・」
「気づかれたか・・」
やっぱりこんな上半分だけ削り、そして私の耳に傷一つ付けないような繊細な攻撃を繰り出せる奴が下級中位な訳がない。
絶対サキュバスだ。
「あんた・・・サキュバスよね」
「ええ、そうよ」
学校側が知らないってことは外から侵入したか契約者が近くにいるか。
とりあえずあんな1,2撃でアウトみたいな状態で戦いたくない。
LV,1でラスボスに挑むようなもんだ。
とりあえず近くの階段の踊り場に逃げ込む。
一回体育館に逃げ込んで教師を連れて来よう。
携帯は壊れたし。
「って、きゃっ!」
すぐ背中を黒い小さな魔球が通過した
「惜しかったわねー。もう少しだったのに。」
サキュバスの属性は闇。
つまり破壊。
つまりさっきの小さな玉でもかなりのダメージを負うはず。
シャレにならない状況だ。