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追走の秋 ②

ご覧いただきありがとうございます。

本作は、実話をもとに再構成した「叩き上げ公務員」の半生を描くサクセスストーリーです。

学歴もコネもなく、定時制高校からスタートした主人公。

決して順風満帆ではなかった彼が、どのような葛藤や壁を乗り越え、霞ヶ関の本省、そして幹部へと駆け上がっていったのか。

実際の官僚機構や他省庁でのリアルな泥臭さ、そして人生後半での新たな挑戦までを丁寧に描いていきます。

働くすべての人、そして逆境から這い上がりたい人に届く作品になれば幸いです。

ぜひ最後までお付き合いください!

『敦っちゃんが通う女子短大の学園祭に行こう』と決めたものの、さすがに男ひとりだけで乗り込む勇気はなく、結局、芝田、桐通、瓜生の3人を誘うことにした。


目的の女子短大は、神戸の中心地・国鉄(現JR)三ノ宮駅から歩いてすぐの場所にあった。

華やかな学園祭の横断幕をくぐり、僕たち4人は緊張しながら足を踏み入れた。


あたりをキョロキョロと見回しながら、浩一が呟く。

「……女子ばっかりやなぁ」

「女子短大なんやから当たり前やろ」

芝田が呆れ顔で返すと、瓜生がやたらとテンション高く声を弾ませた。

「学園祭に来てるお客さんも女子ばっかりやで! なんかウキウキしてくるなぁ!」

「瓜がいちばん楽しそうにしとるやんけ」

桐通がすかさずツッコミを入れる。

「アホか、そんなことあるかい!」

照れ隠しに威張る瓜生を見て、浩一も思わずクスッと笑ってしまった。

「ええやん。せっかく来たんやから楽しもうや。……敦っちゃん、どこかにおるかな」

「……会わんほうがええんちゃうか」

芝田が静かに、そして冷静に言った。

「そうやなぁ……。会いたいけど、もし会えてしもたら、電話の件を問いただしたり、ワガママ言ったりしてしまうと思う。そしたら綺麗な思い出にならへんし……敦っちゃんたちとも、二度と会えんくなってまうから。やっぱり会わんほうがええんや」

「川野。無理すんなよ。素直に、自然体でおったらええねん。俺らはいつでもお前の味方やから、安心せえ」

「芝田……ありがとう。あ、あの教室でお茶飲めるみたいやし、入ってみようか」


4人はどこか緊張した面持ちで、模擬店の喫茶店になっている教室のドアを開けた。

教室内には僕たちのほかに客はおらず、手持ち無沙汰にしていた短大生6人の視線が一斉にこちらを向いた。

「いらっしゃいませ!」

「あら、可愛い男の子が4人も! どうぞ、こちらの席へ!」

奥のテーブルへ案内され、すっかり気圧される僕たち。

「みんな、高校生?」

4人で「誰が答える?」と顔を見合わせていると、瓜生が元気よく手を挙げた。

「はい! 高校1年です!」

「ふふ、明るくて元気ね。何にする? お飲み物決まったら教えてね」

4人ともアイスコーヒーを注文すると、短大生のお姉さんたちが物珍しそうにテーブルを囲んできた。

『誰か知り合いがいて来たの?』『どこから来たの?』『彼女はいるの?』と、矢継ぎ早の質問攻めにあう。

すっかり雰囲気が和んだところで、浩一は思い切って尋ねてみた。

「あの……笹本敦子さんという方をご存知ですか?」

「笹本さん? んー、学部は分かる?」

「たぶん、初等教育科だと思います」

「あぁ、私たちは家政科だから……ごめんね、ちょっと分からないわ」

「いえ! 聞いてくださってありがとうございます」

「笹本さんのお知り合いなの?」

「はい。バイト先で一緒だったんです」

「そうなんだぁ」

その後も短大生のお姉さんたちとの会話を楽しみ、僕たちは喫茶店をあとにした。

改めてキャンパス内を散策する。

神戸の中心街でありながら、広い敷地には綺麗な芝生が青々と敷き詰められていた。

この場所を、このキャンパスを、敦っちゃんは毎日歩いているんだ——。


今、自分が同じ場所に立っていることがどこか不思議で、ほんの少しだけ同じ時間を共有できたような気がして、胸の奥が温かくなった。


これでいい。

ずっと言えなかった「さよなら」を、浩一は心の中でそっと呟いた。

言えたと同時に、急に視界が歪み、涙で霞んでいく。


——15歳のひと夏。8月だけの切ない思い出。

これ以上傷つくことも、色褪せることもないように。大切な宝物として、心の奥の綺麗な箱にそっと鍵をかけよう。


秋の澄んだ空の下、静かに佇む浩一の背中を、芝田、桐通、瓜生の3人は何も言わず、ただ温かく見守っていた。

ご覧いただきありがとうございました!

音信不通という悲しい終わりのあとに、自分自身の足で「区切り」をつけに行った浩一。

「会いたいけれど、会わないほうがいい」と自分の感情を抑え、あの夏の思い出を綺麗なまま胸に鍵をかけた浩一の姿に、15歳なりの大きな成長を感じます。

涙を流す浩一に言葉をかけず、黙って寄り添う3人の親友たちの存在が本当に温かいですね。

ひとつの恋に決着をつけ、秋の風とともにまた一歩大人へと歩み出す浩一。

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