もはや女神としては
何なんだコイツは。いや、コイツとか言っちゃダメなんだろうけども。もうコイツはコイツでいいや。敬う気になれないよね。
俺は、改めて透明かつゼリーみたいな質感の椅子に深く腰掛けた。女神との小競り合いに精を出しすぎるあまり、かなり前のめりになって、ほとんど立ち上がりそうになっていたことに今さら気づいた。
ここは何処なのか、とかこの状況の説明をくれ、とか色々と聞きたいことはあった。しかし、一向に進まない話を進行させなくてはならないので、ここで俺から仕掛ける。
ふう、と息を吐いたあと、一秒の間を置いて切り出す。
「そ、それで本題って何なんですか」
「カエデくんには、世界を救ってもらいます」
「ふぁ?」
「ですから、カエデくんには、せっ......さ、酒井を救ってもらいます」
「え? 酒井誰? ねえ酒井誰なの?」
「......はぁ? いや噛んだだけですけど。噛んだだけですけど!」
「ごめん!ごめんって」
「噛んだだけなんですけどー!」
噛んだだけ噛んだだけ、と駄々をこねるように地面を転げ回る女神。ああもうこれダメだ。女神じゃないよコレ。
女神ってさ。多分もっと外面だけじゃなくて内面も美しくてさ。『カエデくん。貴方は勇者になるのです』とか作品によっては相棒になったりしてさ。物語の中枢を担う存在だと思うんだよね。
それがさ。
「噛んだだけなんですけどぉ」
「もういいから!分かったから!」
こちらをじとっとした目で見てくるヤバい人。
もはや女神としてすら見れないよ。




