まあまあ、カエデくん!一度『単位』のことは忘れましょう!
「ほ、本題?」
本題も何も、なぜこの摩訶不思議な空間にいるのかどうかも俺は理解できていない。そもそも、これは何だ? 女神って何だ? 何かのドッキリか?
まさか、本題っていうのはもしかすると、これは全部番組の企画か何かで、何処からともなく『はーい!講義中に居眠りしてたら、目の前に女神がいたドッキリ〜!』というカンペを持ったスタッフとタレントが出てくるとかなのか。
「残念ながら、カエデくんの言うドッキリ? とかではないですよ」
「また心読まれてるよ俺」
「読めますよ。女神なので」
「じゃ、じゃあ、俺が思い浮かべたモノを当てていってみてください」
「いいでしょう」
手始めに、俺は大学への通学に使用していた原付を思い浮かべてみた。
「むむむ......これは原チャですね」
「女神でも原チャとか言うんですね」
ファンタジックな見た目からそんなワードが飛び出すとは到底思えなかったので、なんかレアな体験をしたような気がした。
「じゃあ、コレは?」
「む、むむむ......あっこれは単位ですね。しかも昨日、カエデくんが落とした単位ですね」
「よく分かりましたね。さすが女神」
「当たり前です」
まさか俺が落とした『言語とコミュニケーション概論』の単位まで分かるとは。
「ちなみに、何の単位か分かりますか?」
「余裕です。『英語基礎』ですね」
「え?違いますよ。俺が落としたのは『言語とコミュニケーション概論』だけ......」
「あ。あと『日本文化』も落としてますね」
「え?え?」
あれ? 落としたのは『言語とコミュニケーション概論』だけだよな。『日本文化』はまだしも『英語基礎』を落としたら留年なんだが。え?え?
「まあまあ、カエデくん。一旦単位のことは忘れましょう」
「忘れられませんよ!卒業かかってるんですよ!」
「確かにカエデくんは、既に留年必至です。しかし気に病むことはありません」
「他人事だと思って適当に流さないで!いや病むでしょ! 何かの間違いだよな? だって講義も全部出たし......テストもちゃんと受けたぞ......そうだシラバスをチェックしようーーーあ、あれ? スマホがない......」
「ちなみに言コミュ担当の教授は『カエデくんは受講態度は真面目なんだけどね、受講態度は。受講態度はすごく良かった。受講の姿勢は』と言っていましたから、まだ可能性はありますよ! 元気出して!」
「テスト死んでんじゃねーか! 一番取り返しつかないヤツだコレ!」
「おい元気出せよカエデ! ほら、駅前のラーメン行こうぜ笑」
「なんでフラれた男を元気付けるときの大学生みたいな感じだ! しかも 笑 ってなんだよ!」
「単位は......また来年取ればいいだろ」
「なんで『両思いの女子幼馴染が風邪ひいちゃって楽しみにしてた花火大会行けないとき』みたいなシチュエーションだ!」
「それって『花火は......また来年見にいけばいいだろ......俺と一緒に』みたいな感じで女の子の胸をときめかせ『来年の夏も一緒にいよう』というセリフをロマンチックに伝えるための浅すぎる目論見のシチュですか?」
「全部言わなくていい!」
「でも、今年用意したんですよ浴衣を!カエデくんのためにっ......! 女の子の夏は、貴重なのにっ......!」
「いや何言ってんだ!」
「女の子にとってッ......浴衣は......浴衣は!」
「いや分かるけど! 女の子は彼氏に見せるために浴衣を新調してくれるんだよな! 着るのも大変だし! 分かるけど!」
「カエデくんはありがちなシチュ設定が好き、と笑」
「いやメモするなよ! しかも最後の 笑 なんだよ!」
「いい加減にしてくれますかカエデくん。本題に入りたいんですがね」
「ふざけんなよ!」




