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《アカウント》適合者!?

「どうかお願いします。海野楓。貴方にしか《アカウント》は適合しないのです」

「ふぁ?」


俺は現在、面接室のような狭くも広くもない正方形の空間にいる。

就活などで使用されるような面接室と違うのは、殺風景な事務用デスクの向こう側に威風堂々としたーーーあるいは気だるそうな定年間近のーーーオジさんがいるとか、そのオジさんがこちらを見つめている、とかのありきたりな情報がこの部屋には存在しない、ということだ。

ーーー代わりに、いや代わりと言っては代替品のレベルが高すぎるわけだが、絶世の美女と言って遜色ない美しい女性が透明のゼリーみたいな浮かぶ椅子に腰掛け、こちらを見下ろしている。

部屋自体の広さは......一般的な家庭のリビングルーム程度だろうか。かなり至近距離にその女性がおり、こちらを見つめている。そのため、狭めの部屋には似つかわしくないシャンデリアの放つ光が、彼女の白銀の長髪をちらちらと照らしている。


「おや? まだ女神と出会って間もないので、何が起きているのか、いまひとつ掴めていないのかしら」

「ふぁ?」


俺が発した二度の『ふぁ?』という言葉は、何も音階テストをしていて『うーむ、この音はファの音ではあるまいか』という意図で発したモノではない。

単純に、今、俺の眼前にいらっしゃるーーー純白の布をまとった、シルバーの髪を腰ほどまで伸ばした女神のようなーーー女性の発した言葉の数々を、19年の間連れ添った脳みそのスペックでは処理しきれなかったがゆえに発されたモノであった。


「ですから、貴方にしか高位の《アカウント》は......」

「い、いや分かんないから! もう一回言われても分かんないから! っていうかここドコ!?」


俺が日頃の癖でツッコむと『あら、そうかしら』という歯切れの悪い返事が返ってきた。なるほど、俺が大学でボケをかました友人に対し、キツすぎず弱すぎない上手い具合でツッコむことができていたのは、ボケ役の友人の立ち回りが上手かったからなのか。お笑いの真髄に、こんなところで気づくことになろうとは......

そんなことを考えていると、自称女神が心地の良い声で俺に語りかけてくる。声質が良すぎて、長く聞いていると眠ってしまいそうだ。


「申し遅れました。私は第三百六十一宇宙の西側の治安維持、サーバー運営に日夜取り組んでいる、女神の《デルブィード・ミルスサンタス》という者よ」

「ああ、よろしく! デルブィードさん。ってなるか!この状況全てが謎すぎるわ!」

「はふぅッ!!!」

「え?」

「ああ失礼。女神たる私に対して、キレ味高めのツッコミを入れてくる人間なんて初めてだったから、興奮しちゃったの。も、もっと頂戴」

「尊敬には値しないタイプの女神かぁ」


突如として知ることとなった、初詣とか一夜漬けしたテストの前日とかにあられもなく天を仰ぎ、願った神の正体。それが、敬虔で豪放磊落な男性とかではなく、大陸発祥の神話にでも登場しそうな、あな美しき女性、または脳のネジちょっと外れてる女神だったとは。

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