第8話
明日はいよいよ大阪参戦、ライブは夜からだし、クミちゃんにネイルをお願いした。
だって、色々あるけどさ、クミちゃんの腕は確かだし……。
「マユさん、もう来てくれないかと思いましたよー。」
「だってクミちゃんのネイル好きだし……。」
ちょっと拗ねたように言ってみた。
「マユさーん!」
クミちゃんはなんかいつも通り。ホッとしたのはこっちの方だよ。きっと言えない事情があるんだよね。
……って思ってたのに、クミちゃんは語りだした。
「この髑髏のネイル、皆にやってた訳じゃないんです。いつもネイルが終わったら、写真撮らせてもらうじゃないですか?宣伝用に……。」
「……あ、そうだね……。」
クミちゃんのネイルサロンを選んだきっかけも確かSNSの写真がきっかけだった。
「私、ルカにも時々出張でネイルしてて……、そしたら、この髑髏のネイルがしたい!って言われて……私も躊躇したんですよ……でも……あの……ごめんなさい。」
そっか。そうだったんだ。
「良いって。それより、今日のクミちゃんのネイルも最高!」
お互いニッコリ笑いあった。そして、クミちゃんは続けて言った。
「ルカ。今は女優に転向してるし、元バンドのイメージも髑髏のイメージもないのに、突然で……。」
クミちゃんも困惑していたんだ。私のモヤモヤはもう晴れた。もういいんだ。
「話してくれて、ありがとう。またねー。」
髑髏ネイルをフリフリしながら、夜風が気持ちよかった。
ーーー
昼に同担ライブ友のあかりちゃんと合流。
大阪は入り待ちと出待ちOK!
(そりゃするよね?私らもさ!)
ライブは夜からだけど。関係ない!入り待ちこそ、召喚の儀エピソードゼロ。
「で、マユ、どうなの?眠れた?」
「気絶するくらいには。」
「あはは~。マユいつも入り待ちはそうだよねw」
だってっさ、HYEI様の日常にお邪魔するんだよ。そりゃあそうなるでしょ?あかりちゃんが鋼なだけ……。
「で?あっちは?」
入り待ちしながらのあかりちゃんの事情聴取。とりあえず、知ってることは全て自白した。
「黒!」
「え?」
「綿月ルカ(わたつき るか)は黒やな。」
(あかりちゃん、エセ関西弁出てるよ)
まぁ、私もそう思ったけどさ……。
つづく。
※この作品は「カクヨム」にも掲載しています。




