第10話
あー、だるい。満員電車に揺られる毎日。でも、頑張るよ!遠征費嵩むしさ……。現実怖っ。
私は経理でバリバリ残業もこなしていた。5年前までの私と同一人物とは思えない程w
だって少しでも推しに近づきたいし……あ、物理的にじゃなくて、その……推しグッズは躊躇なく買いたいってことだよ。
そうそう、あかりちゃんも実はバリキャリw
あかりちゃん、平日は残業上等の鬼カレンダーこなしてるからね。
なのにライブで一番跳んでるの、ほんと尊敬してる。普段から、ジム通いしてるのも、そのためらしいよw
(私も推しに恥じぬよう、出世する!!)
今日も私は燃えていた……いや萌えていた。
あ……仕訳間違えたw
ーーー
『咲夜、マユちゃん、“あれ”以来、来なくなっちゃったよ』
あ、ばあちゃんからLINEだ。
俺は“あの”子供食堂の炎上?したSNSを見ていた。
(こっちには、結構来てるんだけど……w)
『元気そうだよ』
って返しておいた。
「なぁ、咲夜、今度の福岡講演は出待ちあるんだっけ?」
「HYEI、いつも聞くけどさ、大阪以外は入り待ちも出待ち禁止だから……。」
「ふーん。」
(ふーん。じゃねぇよ。……やっぱ、俺がマネージャーで良かったなお前……。)
3年前の“あの時”俺はマネージャーになる決心をした……。
『NoeLのVo.HYEI(年齢29歳 他非公表)元マネージャーに暴力事件』
あれは半分事実で半分は違う……。
マネージャーは俺のギターの実力の無さを見抜いて、他のメンバーを探していた。本人は隠していたけど、メンバーは全員知っていた。俺以外……。
HYEIに新しいメンバーが見つかったからと話が行った時、コイツはマネージャーに殴りかかった。幸い、他のメンバーが止めて、マネージャーは無傷だった。
あの時、俺は、コイツを認めた。敵わないって認めた。そして、ギターを置いて、マネージャーになった。
つづく。
※この作品は「カクヨム」にも掲載しています。