100個目の願い—最終話—
部屋の中は静かで、時計の針の音だけが聞こえている。ベッドの上、並んで座る私たち。いつもの距離なのに、今夜は心臓の音がやけに大きく感じる。
「……100個目の願い、どうする?」
智希が私の頬にかかる髪を優しく払う。視線が絡むと、熱が頬にじわっと広がる。
「うーん……」
私は願いのノートを開きながら、考えるふりをする。でも、本当はもう決まってる。ずっと前から、最後の願いは特別なものにしたかった。
「じゃあ……」
意を決して顔を上げると、智希の瞳がまっすぐ私を見つめていた。
「……ずっと、一緒にいて?」
恥ずかしくて、声が小さくなってしまう。でも、それでも智希はちゃんと聞き取ってくれて、ゆっくり微笑んだ。
「そんなの、当たり前だろ」
さらりと言うから、余計に胸が熱くなる。
「……もう、違うの……そういうことじゃなくて……」
言葉に詰まる私の手を、智希がそっと握る。温かくて、大きくて、優しい手。
「永遠に、俺にそばにいてほしいってこと?」
ずるい。そんな風に、さらっと言わないで。
顔が熱くて、まともに智希の顔を見られない。
「……うん」
やっとの思いで頷くと、智希が微笑みながら言った。
「それ、俺の願いでもいい?」
耳元で囁かれて、心臓が跳ねる。
「っ……ダメ……ずるい……」
本当はダメなんかじゃない。むしろ、こんなに嬉しいことはないのに。
智希の手が私の頬に触れる。すごく優しくて、心まで溶けそうになる。
「100個目の願い——永遠に、愛し合う」
智希の言葉に、胸の奥が甘くしびれるような感覚に包まれる。
「有紗も、言って……」
「……うん……えっと……」
言葉にならなくて、ぎゅっと智希のシャツを握りしめる。
「照れすぎて、言えない?」
智希が楽しそうに笑うから、意地になって顔を上げる。
「言えるもん……!」
そして、思い切って——
「……永遠に、愛し合う」
私がそう囁くと、智希の目が一瞬、揺れる。でもすぐに、優しくて甘い光を帯びた。
「……うん、約束」
そして、智希の腕が私を抱き寄せた。
ぎゅっと抱きしめられて、心臓の音が重なる。
「大好き」
耳元で囁かれて、胸がきゅうっとなる。
「……大好き」
私も同じように囁くと、智希が嬉しそうに微笑んで、髪を優しく撫でてくれた。
「これからも、ずっとずっと……一緒だよな」
「……うん、絶対に」
――たとえ、誰に何を言われたとしても。
私たちは、ずっと恋人同士。
そして、永遠に愛し合い続ける。
「……じゃあ、誓いの言葉でも言っとく?」
「誓いの言葉?」
「俺は有紗を、一生甘やかすし、離さない。だから、有紗も俺だけを見てろ」
「……うん」
「ちゃんと言葉にして」
智希の目を見つめると、胸がいっぱいになった。
「……私も、一生お兄ちゃんだけのもの……」
「よし」
智希の顔が近づく。唇に、柔らかい温もりを感じた。
智希と私の唇が重なって、心から繋がり合う――
「……お兄ちゃん……」
「……有紗……」
甘く、激しく、深く、優しく——
二人はこの先、何度も求め合う。だって約束だから。永遠に、愛し合う——
100個目の願い。
これは、二人だけの秘密の約束。
そして、永遠に続く愛の誓い。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。新作も準備中ですので、よかったらまた読んでもらえると嬉しいです♪