表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/25

聖夜、くちびるの温もり

街はすっかりクリスマスムードに包まれ、キラキラと輝くイルミネーションが、まるで魔法の世界に迷い込んだようだった。


「すごく綺麗……!」


私は智希の腕にそっとしがみつきながら、光のトンネルの中を歩く。


「お兄ちゃん、見て! あのツリー、めちゃくちゃ大きい!」


「ほんとだな。あんなの家に置いたら、有紗の部屋、全部埋まりそう」


「そんなこと言わなくていいの!」


「はは、ごめん」


智希は私の頭をぽんぽんと優しく撫でた。


「でも、有紗が喜んでるの、見てるだけで楽しい」


「……っ!」


そんなこと言われたら……胸が、ぎゅってなる。


ずるい……


ふいに手を繋ぎたくなって、そっと智希の袖を引っ張る。


「……ん?」


「……寒いから、手……」


恥ずかしくて最後まで言えなかったけど、智希はすぐに察してくれた。


「ほら」


すっと伸ばされた手を、ぎゅっと握る。


指と指を絡める、恋人つなぎ。


「……あったかい」


「有紗の手、冷たすぎ」


「寒かったんだもん……」


「これからは、ずっとこうしてればいいな」


「……え?」


「俺があっためてやるから」


「~~っ!!」


恥ずかしくて顔が熱くなる。


クリスマスにそんなこと言うの、反則だよ……!


智希は、私の反応を楽しむようにくすっと笑った。



クリスマスマーケットに着くと、あちこちから甘い香りが漂ってきた。


「お兄ちゃん、これ見て! 焼きたてのチュロスだって!」


「あぁ、いいね」


一緒に買ったチュロスを、二人で食べながら歩く。


「お兄ちゃん、チュロス半分こしよ?」


「ん……ほら」


智希が持っていたチョコレートたっぷりのチュロスを、そっと差し出してくれる。


私は遠慮なく一口かじる。


「ん~……おいしい!」


「そりゃよかった」


ほんの少し、私の頬にチョコレートがついてしまったらしい。


智希、くすっと笑いながら親指でそっと拭ってくれた。


「……っ!」


その仕草に、心臓が跳ねる。


「……可愛い」


「えっ……」


不意に零れた智希の言葉に、顔が一気に熱くなった。


「も、もう……!」


「照れるなよ」


「お兄ちゃんのせいだもん……」


口を尖らせながらも、幸せすぎて、胸の奥がいっぱいになる。


この時間が、ずっと続けばいいのに……



二人でイルミネーションの下を歩き続ける。


「有紗」


ふいに、智希が立ち止まった。


「え?」


「プレゼント、渡す」


「……!」


智希はポケットから、小さな箱を取り出した。


「……開けてみろ」


緊張しながら、そっと箱を開く。


「……っ!」


そこに入っていたのは――


指輪だった。


シンプルだけど、どこか温かみのあるデザイン。


小さな宝石がひとつ、優しく輝いている。


「お、お兄ちゃん……これ……」


「有紗のために選んだ」


智希は、私の手をそっと取ると――


「え……っ!?」


片膝をついた。


まるで、プロポーズみたいに。


「……俺は、有紗を愛している」


優しく、指輪をはめてくれる。


指先が震える。


「私も、愛してる……」


「……ああ」


涙が、溢れそうになる。


「お兄ちゃん……」


「有紗」


お兄ちゃんは、私の頬にそっと手を添えると――


「……目、閉じて」


「えっ……」


心臓が、早鐘を打つみたいに鳴る。


私はそっと、瞼を閉じた。


――そして。


ふわりと、優しい温もりが触れた。


お兄ちゃんの唇が、私の唇に重なる。


初めてのキス。


柔らかくて、あたたかくて、涙が出そうになるくらい――幸せな時間だった。


「……大好きだよ」


智希の言葉が、冬の夜に溶けていく。


「……私も、大好き」


雪が静かに降り始める。


まるで、この瞬間を祝福するかのように。


こんなに幸せなクリスマス……もう、忘れられないよ……


私たちは、恋人以上の絆で繋がっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ