100回の大好き
私とお兄ちゃんの関係は、学校のみんなには絶対に秘密。
お互いに異性として恋していること、気持ちだけは恋人同士であること。
秘密にしている罪悪感。でも、お兄ちゃんのことが大好きすぎて、この想いを口にしたくて、もう止められないの。
自分の部屋を出てリビングに行くと、智希がソファーに座ってくつろいでいた。
外はもう薄暗く、柔らかなオレンジ色の光がカーテン越しに差し込んでいた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「ん?」
「今、リストの願い事ひとつ叶えたいんだけど……いい?」
「どれ?」
私は智希の横に座って、願いのノートを広げた
「……『お互いに100回大好きと言う』ってやつ」
智希は少し驚いた顔をして、すぐに照れくさそうに笑った。
「一番最初に考えたやつじゃん」
「うん、そうだよ」
「やりたいの?」
「うん。……ダメ?」
「いいよ、やろう」
「あのさ……今だけ、お兄ちゃんのこと、智希って呼んでいい?」
「……あぁ、いいよ」
「じゃあ、私から言うね」
私は軽く深呼吸をして、すぐ隣に座る智希の目を見つめた。
智希も真剣なまなざしで、私を見ていた。
「大好き」
智希の目が一瞬揺れた。
「……俺も、大好き」
胸がぎゅうっと締め付けられる。
「……大好き」
「……大好き」
言葉にするたびに、心がどんどん熱くなる。
「……ねぇ、もっと」
「……うん」
「……大好き」
「……大好き」
「……本当に、大好き」
「俺も、マジで……大好き」
目が合うたび、涙が出そうになる。
「……智希の全部が、大好き」
「俺も、有紗の全部が、大好きだよ」
どうしよう……。
想いが溢れすぎて、もう止まらない。
「……大好き、大好き、大好き……」
「俺も……大好き、大好き、めちゃくちゃ好き……」
「もう……どうしようもないくらい、大好き……」
「俺も、どうしようもないくらい、有紗が好き……」
言葉にするだけじゃ足りなくて、私はそっと智希の袖を掴んだ。
「……もっと言わせて」
「……うん」
「……大好き」
「……俺も、大好き」
胸が苦しいくらい、好きな気持ちが溢れてくる。
「……智希のこと、ほんとに好き」
「俺も……めちゃくちゃ好き」
「……もっと好きになっちゃう」
「……俺も」
言葉を交わすたびに、心が深く繋がっていくのがわかる。
「……大好き」
「……大好き」
気づけば、お互いの手をぎゅっと握り合っていた。
「……こんなに好きになっちゃったね」
「……あぁ」
涙が溢れそうになる。
「……どうしてこんなに好きなんだろう……」
「俺も、同じこと思ってた……」
「……大好き」
「……大好き」
何度も、何度も。
それでも足りなくて、涙が止まらなくて――
「……智希のこと、どうしようもなく好き」
「……俺も、有紗のこと……どうしようもなく好き」
気づけば私は、智希にしがみつくように抱きついていた。
「……離れたくない……」
「……俺もだよ……」
「ずっと一緒にいたい……」
「……ずっと一緒にいよう……」
涙が頬を伝うのも気にせず、何度も何度も想いを言葉にする。
「大好き」
「大好き」
そして――
「……これで、最後だね」
「……うん」
100回目。見つめ合う二人。
涙が溢れて止まらない。
「智希……大好き……」
「有紗……大好き……」
言い終わった瞬間。
静寂。
部屋に流れるのは、二人の震える呼吸だけ。
胸がぎゅうっと苦しいほどいっぱいになって、私は耐えきれず智希の胸に顔をうずめた。
「……も、もうやだ……っ」
「……え……?」
「……好きすぎて、苦しいの……っ」
涙が止まらなかった。
「……私、どうしてこんなに……智希が好きなの……?」
「……俺もだよ」
智希が、優しく頭を撫でてくれる。
「……もう、これ以上好きになれないって思うのに……毎日、もっと好きになっちゃう……っ」
「あぁ……俺もどんどん好きになるよ……」
涙を流しながら、ただ抱きしめ合った。
「……ずっと一緒にいたい」
「……俺も、絶対離れない」
この瞬間――
私たちはもう、恋人以上の絆で繋がっていた。