たっぷり甘えさせて
遊園地デートから帰った夜。
私は自分の部屋のベッドの上で、ぼんやりと天井を見つめていた。
今日、お兄ちゃんに告白した。
でも、返ってきた答えは「異性として好きなのかわからない」というものだった。
もちろん、ショックじゃないって言ったら嘘になる。でも、お兄ちゃんは私のことを「大好き」だって言ってくれた。
今は、それだけで十分だと思いたい。
お兄ちゃんが私のことを異性として好きになるかどうかはわからない。
でも――
今は、兄妹としてでもいいから、お兄ちゃんにいっぱい甘えたい。
私はベッドから起き上がり、そっと部屋のドアを開けた。
リビングに行くと、智希がソファに座ってテレビを見ていた。
私は、そっとその隣に座る。
「どうした?」
智希が私の方を見る。
私は何も言わずに、ゆっくりと智希の肩にもたれかかった。
「……ん?」
智希は少し驚いたようだったけど、特に拒否することもなく、そのままテレビに視線を戻した。
なんか、安心する。
智希の体温がすぐそばにあって、鼓動が伝わってくる。
私は、もっと甘えたくなって、智希の腕にそっと手を回した。
「お、おい……?」
さすがに戸惑ったのか、智希が私を見る。
「んー、なんか、こうしてると落ち着く……」
甘えるように言うと、智希は少し困ったように苦笑した。
「有紗、たまにやたら甘えたがるよな」
「お兄ちゃんだから、いいでしょ?」
私が顔を上げて見つめると、智希はふっと笑った。
「まあ、別にいいけど……」
そう言いながら、智希は私の頭をぽんぽんと優しく撫でた。
――大好き。
こうして撫でられるだけで、胸がいっぱいになる。
私はそのまま智希のひざの上に頭を乗せた。
「……おい、さすがにくつろぎすぎじゃね?」
「いいでしょ、ちょっとくらい……」
ひざ枕みたいな体勢になりながら、私は目を閉じる。
「お兄ちゃんのひざ、意外といい感じ……」
「なんだそれ」
智希は呆れたように笑いながら、また私の頭を優しく撫でてくれた。
私はこの時間がずっと続けばいいのに、と思った。
――今は、兄妹としてでもいい。
お兄ちゃんに甘えられるこの瞬間が、すごく幸せだから。
私は、智希のぬくもりを感じていた。
しばらくそうしていると、なんとなく言葉がこぼれた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「ん?」
智希のひざの上で、私はそっと見上げる。
「私のこと、大好きでいてね」
智希は少し驚いたように目を瞬かせた。でも、すぐに優しい顔になって、私の髪をふわりと撫でる。
「……当たり前だろ。俺はずっと、有紗のこと大好きだよ」
「ほんとに?」
「ほんとに」
智希の声はあたたかくて、優しくて、安心できる。
私は嬉しくなって、もっと甘えたくなった。
「そっか……なら、もっとぎゅってして」
「甘えすぎじゃね?」
そう言いつつも、智希は笑って、私の頭をそっと抱き寄せた。
――やっぱり、大好き。
私はそのぬくもりに包まれながら、幸せを感じていた。
いつか、本当の恋人みたいになりたい。
それが本音だった。