第三十二色 負け。お前達はそれに勝てない。
「『白球』」
その言葉とともに周囲に『球』が現れる。数はもはや数え切れない。
避けないと…
何処に?
避けようと考えた時、既に逃げ場所は無くなっていた。
「は?」
右腕、右太腿、左目『消失』。
痛みは無い。そこにあるのは残酷なほど自分が無力だという証明のみ。
そしてコンマ数秒遅れて血が流れ、激痛が走る。
どうすればいい。
そんなことを考えている場合ではないというのに。
この期に及んでまだ、自分は生き残れると思ってしまっている。
「ワ、ワイド…」
〈王〉やそれ以前の戦いでこれまでと見違えるほど強くなった友人、いや相棒のいた方向を見る。
ただそれでも。
「ワイ、ド?」
現実は、ただただ己の無力さのみを伝えてくる。
「は?」
ワイド・ラフレ。
上半身、消失。
「『青氷槍』…!」
今、『白英雄』の興味は、ジュークのみに向けられている。
あの場からは消えたルミアが不意の一撃を放つ。
ルミアもこの時代においてかなりの異能。『色』の多数同時使用に〈色具〉のコントロール。
そして圧倒的なまでの瞬間出力。
ただそのどれもが、『白英雄』には届かない。
「…邪魔。『白槍』」
ルミアが出した『氷槍』は質より量を重視している。
この一瞬で既に五本。飛ばした直後に更に二本飛ばした。
それに対し『白英雄』は量より質。圧倒的なまでの質。
『白英雄』の『白』に対するイメージは『消滅』。だが『白球』では質より量を重視しており、『消滅』のタイミングは『球』を消すタイミングなので少し(とはいえ1秒ほどだが。)タイムラグが発生する。
しかし『質』を重視した『白槍』は別。
この『白槍』は触れた場所から即座に『消滅』する。
そしてその『槍』は『氷槍』に触れること無く通過する。
それを認識するまでもなくルミアの頭が『消』える。
「『白球』」
そして残りの『氷槍』を全て『消』し去る。
「ぐ、うぅっ、『赤血・手』っ!」
そしてその隙とも言えない隙にレブの『赤血』が飛ぶ。
だが負傷しているレブでは、少しの脅威にもならない。
まるで何処から来るかわかっていたかのように『赤血』を最小の動きで回避。
「『白槍』」
既に負傷しているレブには回避などできるはずもない。
レブ、全身『消滅』。
「ひ、ひいいいいいい!!!」
ここまでに十秒あまり。突然の殺戮に呆然としていた民に一気に悲鳴と困惑が伝播し、一目散に逃げ始める。
『白』は英雄ではなかったのか。
そんなことを考える間もなく。
「『白球』」
ただうるさいという理由で『消』される。
「ああああああああああああああああああ!!!!!!!」
痛み、悲しみ、怒り。全て出し切れ。この剣に乗せろ!
「『赤血・腕』『血染』『白斬』『赤血・燃』!!!」
失った右腕を生やし、その腕で〈白剣〉を持つ。
そして現状の最高火力である『赤炎・飛斬』。
だが相手は『白』のみを極めた存在。『白』の完成形。
『赤』などを使っているような奴が届くような存在ではない。
ただ、無表情に、無感情に。
冷徹な裁きを下す神のように。
「『白球』」
『炎飛斬』、〈白剣〉、そしてジュークの四肢を『消滅』させる。
そして、審判は下る。
「『白夜』」
『白英雄』、南の都市サーシュ到着から三十秒。
南の都市、サーシュ全住民、
〈王〉、『白』ジューク・アイル、『緑』ワイド・ラフレ、『赤青』レブ、〈長〉
消滅。
『白英雄』は既に別の場所へと飛び去った。
『白夜』によって『白壁』の一部が『消滅』した。
そこから入ってくる者が一人。
背中に棺を背負い、手にはスナイパーライフルを持った女。
少し『消滅』した都市を歩く。
そしてサーシュがあった場所の真ん中まで歩くと、たった一言。
「『タイム・リバース』」
ここからが、二周目だ。




