第十六色 翠の軌跡
もっと文をうまく書きたいですね。
『色』は複数混ぜることで、新たな色と効果になる。ただし、どのような効果になるかは誰にも分からないし、その後使用した人にどのような副作用が出るのかも分からない。
他人の物と自分の物を無理矢理合体させているのだから。
これは何の本に書かれていたのだったか。他の内容は覚えていないのに、ここだけは印象に残っていたな。
…どのくらい気絶していた?奴が動いていないのを見るに数秒か。
奴の動きにずっと警戒していたはずだったが、フッと視界の左の方から飛び込んできた触手の刃。
咄嗟に残った片方の剣で受け止めようとしたが間に合わず、それでもなんとか後ろに引いたので致命傷は防いだものの弾き飛ばされた。あんなにしなやかな見た目なのに弾き飛ばされたのは直撃の瞬間だけ硬化させているのだろうか。
そして立ち上がろうとした時、違和感。
攻撃を食らった左腕が動かない。そこを見ると血が固まっている。それどころか僕の血を使ってどんどん範囲を広げている。
僕は即座に血に対して『白洗』を使って血を溶かす。奴の血も結局は『色』。血に流れる『赤』をなくしてしまえばもう固まることもない。
そしてワイドの下に駆け寄る。ワイドが食らった場所は首筋。もうすぐ固まった血が首を一週するところだ。
「『白洗』!」
血を溶かす。すると息がしづらくなっていたワイドが大きく呼吸を繰り返す。
「悪い、助かった。」
「ああ、ただどうやってあいつを倒す?」
攻撃をモロに受けた左腕はほぼ使い物にならない。
あの速度の攻撃だと『白鎧』も使い物にならない。
『白斬』も当てられれば効果はあるかもしれないがまぁ無理だろう。そう考えていると。
「ガ、グ、アァァァァァァァ!!!!」
突如胸に刺さった真っ黒の剣を抑えて苦しみ始める。そしてその剣から『黒』が広がる。すると、ワイドが話す。
「あいつ、暴走させられてる?」
「暴走?」
「ああ。俺たちと戦ってる時、あいつは人の言葉を話していない。なんなら、今も何かに苦しんでる。それの原因はあの剣じゃないか?」
確かに。思い返してみれば僕の〈中〉にいた奴も『黒脳』とか言っていた。なら、あの剣を媒体にして何かしている可能性は高い。
「ただ、だからと言ってどうする?暴走してるとはいえあの剣が刺さっている場所は心臓付近だぞ?抜けばほぼ確実に死ぬ。」
「分かってる。そこで何だがジューク、お前あの剣に『白洗』は出来るか?」
なるほど。暴走の原因はあの剣自体というより剣にかかった『黒』。ならその『黒』を僕の『白洗』で無かったことにすれば暴走も止まるということか。
「あぁ。出来る。やってやる。」
「よし。なら意地でもお前をあそこまで連れて行ってやる。その先は任せるぞ。」
「あぁ、任された。」
そう言って僕達は奴に向かって走る。近づき始めると苦しんでいたのは止まり、体をこちらに向ける。そして死角から血の触手が現れる。
だが、どこから現れるかは分かっている。
さっきの負傷で『白粉』の大部分は解除されたが、残りと合わせて話している間ずっと新しく作り続けておいた。これによって血の触手が現れたところの『白粉』が消える。それでどこに出たか分かる。だがどこを向いているかは勘。大体ここを狙ってくるだろうという読みで避けていく。
ワイドは自分の周りの風だけをコントロールすることで僕と同じようにどこからくるのかだけは把握している。
何発か体に食らう。だがそれに構わず奴の元へ進む。
「『白斬』」
あと一歩進めば血の腕のゾーン。
少しでも被弾を減らす為に血の触手に対して1番効果的だと思われる『白斬』を使っておく。
そして、ゾーンに入る。その瞬間、血が迫るーーー
が、それが僕に当たることはない。
僕が踏み込んだ瞬間、ワイドが『緑突』で血の腕の軌道を乱す。そして入る時に横に振った『白斬』が腕の血を掻き消す。それによって一気に奴に近づく。
そして、奴の剣に手を伸ばす。
だが、一つ忘れていた。それを思い出した時には、もう空中にいた。
『青』による瞬間移動。
それをワイドが風でダメージを軽減する。
その時、あらゆる偶然が重なった。
・奴の剣に手を伸ばし、そのまま『白洗』を使ってしまっていたこと。
・そしてその手がワイドに触れたこと。
・ワイドが奴への牽制で『緑突』を使っていたこと。
・互いの思考が、〈道を切り開く〉ということで一致していたこと
この3つが重なった結果、ワイドの『緑』と僕の『白』が混ざる。
そして、思考が混ざり合う。
互いに考えていることがタイムラグ無しで通じ合っている。いわば常時テレパシーを送り合っている。
そしてこの原因がかつて本で見た〈『色』の融合〉だと分かる。その思考はワイドにも共有されており、互いにその融合の〈副作用〉だと理解する。
そして、心のままに、技の名前を叫ぶ。
「「『翠開・道』!!!」」
奴の剣までの直線上に追い風が吹く。その風には『白』も混ざっているようで、その道には奴の血はない。
「おおおおおおおおお!!!!!」
その道を突き進む。進むたびにワイドと離れたからか道が狭まる。ただ、それを気にせず走る。
「ッがァァッ!!」
あと一歩で届くというところで、素手で奴に左腕を捉えられ、無理矢理『翠開・道』の外に出される。だがここで出るわけにはいかない。無理矢理右手で奴の黒剣を掴む。だが左腕が外に出て、その瞬間肩から先が木っ端微塵に切り刻まれ、左腕がなくなる。だが、今やろうとしている事に関係はないと考えて無視する。そして掴んだ黒剣に対して使う。
「『白洗』!!」
その瞬間、奴の記憶が逆流してくる。
幸いだったのはワイドとの思考の混ざり合いが解除されていたせいでワイドにはこの記憶が共有されていないという事だろうか。
奴の記憶の大半は人体実験だった。人体に『色』を2つ入れて使用できるようにする。その実験体だったようだ。そしてそれが成功してからも『黒脳』での意識改変、実験で生み出された失敗作と思われる化け物との戦闘。
そのどの記憶でも、反抗しようとしてはこの黒剣に込められた異常なまでの『黒』にその気持ちを無かった事にされる。
そんな記憶を忘れたいと願っている。
そう言われた。先程のワイドと似た現象。思考がタイムラグなしで伝わるほどのものではない。ただこれでも十分思考は伝わる。
そして、忘れたいと言われれば、それに答えるしか無い。
「わかった。僕が忘れさせる。」
そして、過去一番くらい気合を入れて、この記憶を洗い流すようにして僕は叫ぶ。
「『白洗』!!!!!」
だが、いままでとは違い『黒』が抵抗してくる。正直、このままでは押し返される。だがここで引いてしまえばおそらく死ぬ。
『白洗』のイメージを変えなければならない。『白洗』は『色』を洗い流すイメージで作った。
だがこれは流しても流しても湧いてくる。なら、湧き出る『黒』を根本から僕の『白』に〈染めてしまう〉。
「『白染』」
奴の胸から剣が吐き出される。ただ刺さっていたところの傷口は全く無く、最初から何も刺さっていなかったかのようだった。
そして服もどす黒かったものがハッキリとした鮮やかな『赤』と『青』に変わっている。
そして当の本人はというと。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
そういって僕に礼を言えるくらい、普通の子供に戻っていた。
「ジューク!大丈夫か!」
そういってワイドが近づいてくる。そういえば、左腕がなくなっていた。血が大量に流れている。
「ちょっとやばいかも…」
意識が少しづつ遠のいていく感じがする。まぁ頑張ったし、ちょっとくらいなら寝ても…
「大丈夫だよ!僕止められるし!」
そう言うと、血の触手を左腕に伸ばす。すると、一瞬で血が止まった。
「あ、ありがとう…」
「あと、二人にこれあげるね!」
そう言って差し出してきたのは赤と青の指輪が2つづつ。
僕たちは一つづつ手に取る。
「「これは…?」」
「これをつけると僕の『色』が使える様になるんだって!ちなみに僕がそれをつけるとすっごく強くなるんだよ!」
舞の時にこれを使用していたのか…?そういうことにしておく。そして指につける。すると、この指輪、『赤』と『青』の使い方が頭に流れ込んでくる。そしてすぐに使い方を理解する。
「これは…ここでは使わないほうが良さそうだね。」
「そうだな。なにより、ここの先生を信用していいのかわからなくなってきたしな。」
それはそうだ。いくら深夜だからとはいえ侵入者とこんなにも激しい戦闘をしておいて誰も来ないのはおかしいだろう。あの手紙をくれた人の意味が、少しづつわかってきたかもしれない。
「なぁ、その『赤』で左腕って作れないのか?」
「!」
確かに。それができれば手袋とかつけてればバレないんじゃないか?
血で手を作るイメージ。これの元は『赤血』だから…
「『赤血・腕』」
傷口からたれていた血が腕を形作る。そしてすぐに溶ける。
「溶けた…」
「なら、俺のも使うか?」
「それだとワイドの分が…」
「いい。俺は『青』だけで十分だ。」
そう言って指輪を差し出してくる。少し迷ってから受け取ることにした僕は再度はつどうさせる。
「『赤血・腕』」
さっきよりも血の動きが格段にスムーズだ。そして腕を作っても溶けることはなかった。
「おお!成功だよ!!」
「やったな。」
僕らはハイタッチする。
「じゃあ、僕もこれ上げるよ。」
そういって『青』の指輪を差し出す。
「じゃあ、もらっておこうか。」
そういってワイドも受け取る。
「ところで、お前はどうするんだ?」
そこだ。バレたら何をされるかわからないしこの子をどうするか。というか
「それより、名前は?」
「あそこではレッドブルーとか言われてた。本名は…思い出せないや」
「じゃあレブは?」
ワイドが即答する。そんな雑に決めていいのか…?
「うん!じゃあ僕はレブね!」
いいんだ…
「あとどうするかだっけ…お兄ちゃんたちの家って行けるの?」
寮。
「いいんじゃないか?バレなきゃ問題ないだろ」
……
「もういいよそれで…」
そんなうるうるした顔で見ないでくれよ…断りづらい…
「決まりだな。じゃあ、バレないように帰るか!」
「そういえば夜だったね…」
「よーし!おんみつこうどうかいしー!」
そう言って、僕たちは帰路についた。
「面白そうだとは思っていたけど、アイツを懐柔するか。ククッ。」
ジュークとワイドとレブの戦場を、遠くの屋根から見るものがいた。
教員しかつけることの出来ないその名札には、こう書かれていた。
〈ライラ・シューツ〉
その女は、長方形の物体を取り出すと、何かを操作する。
「私は、お前ら側についてやる。他がどう動くかは知らねえけどな。」
そう言うと、その物体が震える。
そしてそのまま耳につけてこう言った。
「異常なしです。生徒じゃありません。どうやら過去に廃棄した〈色具〉の暴発ですね。野鳥かなんかにでも反応したんでしょう。はい。すでに処理しました。はい。では。」
「さーて。面白くしてくれよ?ジューク・アイル。ワイド・ラフレ。」
そう言って彼女は夜の闇に消えた。
第一章終了です。
いくつか閑話を挟んで二章かな〜と思っています。




