イーリスタのプロポーズ
《解呪は出来たが……》
《呪の融合が進み過ぎじゃのぅ……》
器から離れた初代四獣神が、眠る双子猫を囲んだ。
【他に方法は!?】
器達も囲みに加わり、イーリスタが叫んだ。
《術としては無い》
《奴より強い人神にしか解けないんだよねぇ》
《じゃが……》
【何かあるんでしょっ!?】
《何故そうまでも喰い下がる?》
【僕が進ませちゃったから!
それに僕の弟子だから!!】
《方法は、再誕だよ。
でもね、今のドラグーナじゃ無理だよ。
そう言いたかったんだよねぇ、玄武?》
《その通りじゃよ》
【僕が再誕させるからっ!】
《この場合はのぅ、元となった神が再誕させねばならぬのじゃよ。
ドラグーナと……猫の女神じゃのぅ》
【猫!?
だからこんなにも融合が早かったの!?】
《然うであろうな》【何があったのです!?】
【エーデリリィ姉様……】
《選りにも選って、って顔しないでねぇ》
【あ……はい】ラピスリは視線を逸らした。
【その猫達って……ミルキィとチェリーでは?
私が猫にしてしまったのです!
まさか……すっかり猫になってしまったのですか?】
【エーデ、落ち着いて。
僕達、胸騒ぎがして早く来てしまったんです。
ミルキィとチェリーに何が起こったんですか?
僕達にできる事はありませんか?】
【マディア、少し離れよう。
四獣神様、私から説明します。
お続けください】
《それじゃあシアンスタ、お願いねぇ》
遠巻きに見ていた弟子達の中からシアンスタが飛んで来た。
【はい!】
青龍はシアンスタに入り、ラピスリはエーデリリィとマディアを連れて神殿の裏手に行った。
【猫の女神って誰!?
もしかしてバステート!?】
《カツェリスと出たが?》
【そのコだよ!
そっか。
みんなから小さな欠片もらってたのって、こういう使い方する為だったんだ。
いくらドラグーナでも、千もの子を生むのって大変だろうとは思ってたんだよ。
バステートを捜します!
ドラグーナも連れて来ます!】
《ならば、これ以上は進まぬよう仮死状態を保っておく。
が、猶予は一刻だ》
【はい!】
朱雀はイーリスタから出ると神殿からルロザムールを引き寄せ、猫達を保つ為に入った。
《此奴では不足も甚だしいが、身体が無いよりは遥かにマシだ。仕方なかろう》
マディア達が戻った。
【イーリスタ様!】【行きましょう!】
【バステート様でしたら存じております。
オフォクス様、此処から動けないからと黙らないでください】
【否……策を講じておっただけだ……】
【何をお隠しなさっているのかは存じませんが、古神様方にはお話しなさってください。
私にとりましても掛け替えの無い妹達ですので】
【急いで行くよ!】【【【はい!】】】
―・―*―・―
《何を騒いでおるのかと思えば……愚かな》
〈頼ってくれさえすれば解いてやるものを、ですか?〉
《何をっ!?
儂が獣に手を貸すなんぞ有り得ぬ!》
〈寂しいのでしょう?
仲間に入りたいのでしょう?〉
《黙れっ!!》
ダグラナタンの内から禍を放った。
〈禍にも呪にも動じませんよ〉
蓄えているエーデラークの破邪が打ち消した。
《儂に逆らうな!!》封じた。
《今に見ておれ。
お前だけを此処に残し、儂は神世に戻る!
獣神なんぞ全て滅してやろうぞ!!》
―・―*―・―
動物病院の仮眠室に駆け込んだ瑠璃は、青生と彩桜に事情を話し、金錦を除く兄弟を集めてもらった。
その間に東京から金錦を連れて戻った時、ちょうどイーリスタ達もバステートを連れて来た。
【それじゃあ分けて乗せて!
僕に掴まって! 行くよ!】
職神達には気付く隙も与えない程にガンガン大瞬移して空を突っ切り、神力射エリアに突入した。
【此処だけは みんな僕の羽毛に隠れて!
龍達は輝竜くん達を覆って!】
神力射エリアの中心部、ズラリと並ぶ神力射が見える場所まで来た。
7神分のドラグーナ全てを隠す事は流石に不可能で、豪速で飛ぶ獣神の塊に向かって一斉に矢が放たれる!
全神力を振り絞って飛ぶイーリスタは、追尾して迫り来る無数の矢を振り切って、このエリアでは封じられている通常の瞬移ではなく、狐だけが使える筈の術移で切り抜けた。
現世の門を抜けた。
【もうこのまま行くよ!】
そこからは皆、話す余裕も無く、ただイーリスタの背に しがみついているだけで精一杯だった。
そして月の神殿前に。【四獣神様!!】
《おっ♪ 早かったな♪》
《では急ごう。ドラグーナ――》
イーリスタの肩越しに兄弟が顔を出す。
《バッチリ同じ顔だなっ♪》
《各々を見た時も思ったけど、並ぶと圧巻だよねぇ》
スタッと黒猫が降りた。
【バステートことカツェリスと申します】
兄弟も降りて、眠らせている2人を下ろしている。
その横でマディアが人魂を取り出すと、人魂は人型を成した。
【バステート様と一緒に居たから連れて来てみたんだ。
ラピスリ姉様に取り込み方を聞いといて良かったよ】
眠っている2人に他の兄弟が並んで横たわると、その上にドラグーナが現れた。
《ドラグーナ、仮だけど身体を与えるからねぇ》
青龍がドラグーナの子供達を青光で包むと、青光は上に抜け、白っぽい金色の龍体になった。
《子供達の神力を使わせてもらったよ。
でも、そう長くは保てないからねぇ》
頷いたドラグーナが重なる。
【ありがとうございます、ご先祖様】深く礼。
【モグラ、来てくれたんだね】
スッと寄って抱き締める。
【マディア、連れて来てくれて ありがとう】
【ドラグーナ! 急いで!】
立ち止まったドラグーナに向かって飛んで来た。
【娘達の為に、ありがとうございますイーリスタ様】
【様とかナシ! 友達でしょっ!
それよりもっ! 早く再誕!!】
《落ち着けイーリスタ》朱雀が宥める。
【この娘達を生み出す時には、マリュースにも手伝ってもらったんだよ。
モグラはマリュースの神力の写しを持っている。
だから手伝ってね】
【畏まりました】
【君が加わってくれるのなら大丈夫。
この娘達を救えるよ】
モグラを連れたドラグーナとバステートが魔法円に入り、猫達を掬い上げた。
すぐにドラグーナの囁くような詠唱が始まり、魔法円の中心部が輝きで満ちる。
《其処で見ているのならば神力を注げ》
頷き合った龍と狐達は等間隔にぐるりと囲み、浄化光を注いだ。
【四獣神様、皆。
娘達の再誕は成功しました。
ありがとうございます】
輝きが収束し、ドラグーナ達の姿が露になった。
ドラグーナの掌では生まれたての桜色の龍の子達が丸くなって眠っていた。
【あ……小っちゃくなっちゃった……】
【再誕ですので】
【そ~だよね……ね、ドラグーナ。
その子達、僕が育ててもいい?】
【はい。お願い致します】
朱雀が離れ、兎になったイーリスタの両腕に娘達を抱かせた。
【それと……も一度ちゃんと育って、それでもまた僕を望んでくれたら……結婚も、、お許しください、お父様】
ドラグーナに真剣な眼差しを向けた。
【いいですけど、どちらと?】
【どっちもはムリだからぁ、片方は虹紲?】
【ああそうですね。そうなりますよね】
《ドラグーナよ、娘っ子らの記憶は消しておらぬのじゃろ?》
オフォクスから出た玄武が寄って来た。
【はい。私の力不足もありますが、
消す必要もないと思いましたので】
《ならば想いは変わらぬじゃろ。
再誕したての今ならば、一時的に『ひとり』に出来るじゃろ。のぅ?》
《可能だな》《起こしてみたらど~だぁ?》
《そうだねぇ。ちゃんと確かめないとねぇ》
【そうですね】娘達を光で包んだ。
【【ぁ……】】見上げた瞳が笑った。
【無事で良かった~♪】すりすり♪
【【イーリスタ様♡】】ぴとっ♡
皆、無言で見守る。
意を決したイーリスタが、ひとつ頷いた。
【ミルキィ】【はい♡】
【チェリー】【はい♡】
【僕と……結婚してください】
【【ぇ…………】】大きく見開いた瞳が潤む。
【えっと……僕、間違っちゃった?】
【【ふたりとも?】】
【うん。ふたりともは……ダメ?】
【【ダメなんかじゃないのっ!!】】
イーリスタの胸元に しがみついた。
【弟子じゃなくて!】【お嫁さんに!】
【なりたかったの!】【私達一緒に!】
【よかったぁ~♪
それじゃ四獣神様♪ ドラグーナ♪
僕達の絆、おっ願いしま~す♪】ぴょん♪
《待てイーリスタ》《その前に、じゃ》
【【【え……?】】】
ドラグーナの子供達には、ドラグーナ自身の命の欠片だけでなく月や滝の四獣神や その妻達、親神達から小さな欠片を貰って込めていたようです。
ドラグーナが特別な子を生む時は月や滝の四獣神の欠片を集めて込めたとイーリスタも知っていたのですが、ほぼ全てだったとは知らなかったんです。
命の欠片は神力そのものですから他の術などにも使えますので、そういう使い方だろうくらいに
思っていたんです。
ですが前にも書きましたが、ドラグーナ自身は子の中の誰かを『特別な子』だなんて思っていませんので、ほぼ全てに込めているのは当然と言えば当然なんですけどね。




