表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/870

ラピスラズリと同代



 月の神殿の窓から外の様子を見ていた玄武を宿したオフォクスは、小さく微笑むと封珠の前に戻った。


その笑みが消える。


 また(ろく)でもないものを膨らませおって……。


別の封珠を乗せて術を唱え、ザブダクルが増やしている負の感情や神力を吸い上げさせ、とどめとばかりに強い破邪を当てた。


〈ふむ。(しか)と伝わった。

 応じてくれた事、感謝する。

 エーデラーク達に頼んでやろう〉


封珠から伝わった意志に対しオフォクスは、内に籠るザブダクルには伝わらないよう、外に意識を向けているダグラナタンだけにそう伝えた。



《ダグラナタンは すっかり反省したようじゃな。

 これならばマリュースの『支配』が分離 叶わぬとも大事なかろうよ。

 ダグラナタンが抱え込んでくれておれば、ザブダクルが見つけようとも使えるのは極々一部じゃからのぅ》


【はい。

 しかもマディアとエーデリリィが承諾してくれれば、最早ザブダクルにはダグラナタンを操る(すべ)は無いと存じます。

 では、ラピスリに伝言役を頼みます】



―◦―



 神殿の外では――


【ウィスタリア、話したいのは山々だが、人世で堕神とされた同朋達を護ってもらいたい。

 ゆっくり話すのは全てが終わってからになるだろうが、僕を包んでいたハムスターとリスを分離できたら人世に返しに行く。

 その時にまた会おう】

シアンスタが祝福の言葉に続けて言った。


【はい、兄様♪

 分離の方法、教えてくださいね。

 私も犬を持ったままなのです】


【必ず、人神の術を獣神の術で解く方法を探し出す。

 では、幸せにな】


【はい♪】



 滝で仲良くなっていた姉達と話していたナスタチウムの前にカーマインとゴルシャインが浮かんだ。


【人世に行け】


【もうっ、カーマインは言葉少な過ぎよ!

 それじゃ追い出してるとしか思えないでしょっ!】

睨んでいるとしか思えないカーマインをプレリーフが突き飛ばし、ナスタチウムの前に行って抱き締めた。

【ナスタチウム、人世で幸せをシッカリ掴んで放しちゃダメよ♪】


【え……と、いいの?】ゴルシャインに。


【滝には大勢 居るのでな。

 カーマイン兄様も月に留まったのだから文句は言えぬ、だそうだ】


【ありがとう、ゴルシャイン。

 あら? そういえばラピスリは?】


プレリーフとネモフィラが顔を見合わせた。

【【もしかして気づいてない?】】


【え?】


【ゴルシャインは気づいてそうね】【うん】


【ゴルシャイン……?】

ナスタチウムが不安気に揺れる瞳を向けた。


ゴルシャインは答えず、ナスタチウムから視線を逸らした――のではなく、その視線の先ではシルバスノーとラピスラズリが話していた。


【ラピスラズリ、シルバスノー。此方に】


 兄弟が顔を向け、(シルバスノー)(ラピスラズリ)の手を引いて飛んで来た。


【自分で説明したくなかったら話すけど?】

姉達が優しく微笑む。


〖いえ、話します。

 色々ありましたが……簡単に言うと、禍の呪で命を落とし、再誕したのです。

 ラピスリと私は大部分 重なっていますが、ごく一部だけ各々な箇所が在るのです〗


【えっ、命を……】【マジかよ……】


【ラピスラズリ程の者が命を落とすとは、余程の事があったのだろう。

 だから これ以上は聞かぬ。

 シルバスノー、ナスタチウム、いいな?】


【うん……】【ああ。解ったよ】


【同代としては思うところだらけでしょうけど、ラピスラズリは生きているの。

 それだけで良しとしてね】


【ラピスラズリとラピスリは別。

 そこだけは覚えておいてね】


【【【【はい】】】】

ウィスタリアも加わっていた。


〖姉様、ありがとうございます。

 ではラピスリ、後を頼む〗


【おいっ! 話が途中だ!】


〖長くは保てぬ。……すまぬ〗

偽装を解いたラピスリが深々と頭を下げた。

【オフォクス様に呼ばれておりますので、ごゆっくりなさってください】

神殿へと飛んで行った。



【カワイイ妹かと思ったらイカツイ兄貴かよ。

 どーりでビシバシ瞬移すると思ったよぉ】


【各々だと聞いたばかりだ。

 それに彼女は既に結婚している】


シルバスノーはガックリ地に伏せた。【チッ】


【滝には女性も多かったように思いましたが?

 まさかシルバスノーは全てにフラれたのですか?】


【コクる以前の問題があるんだよぉ】

【私と同じなの。

 私はウィスタリアに逃がしてもらったわ。

 そんな女性か、夫や彼と一緒に逃げて来た女性ばかりなの】

ナスタチウムが(シルバスノー)の肩をぽんぽんとして宥めた。


【そうなのですか……】

ウィスタリアも反対側の肩をぽんぽん。



【ゴルシャインが同代長子よね?】

【あとは?】


【次子がラピスラズリ、三子がウィスタリア。

 七子がナスタチウム、末子がシルバスノーです。

 同代十子、他は行方知れずです】


【末っ子くんだったのね~】

【なんか納得ね~】

【兄貴も結婚したがってただろ!】


【ぅ……】


【私もそうだけど、盾になって逃がしてくれたのに忘れるなんて出来ないわよ。

 なにがなんでも捜して助け出す! って、なんだか強くなっちゃうのよね……】


【ネモフィラ……】

シアンスタが申し訳なさ気に肩を抱いた。


【だからお願い。

 ウィスタリア、ナスタチウム。

 堕神にされてしまった仲間や兄弟を見つけて神に戻してあげて】


【勿論です!】【はい!】



―◦―



【オフォクス様、如何なさいましたか?】


【ふむ……】


《私が見ていよう》

現れた朱雀がルロザムールに入った。


【お願い致します】

玄武が出たので裏口から外へ。




【マディアに伝えてほしいのだ】

額からラピスリの胸元へと闇球を放った。


【畏まりました】


【人世の様子は?】


【大きな変化は御座いません】


【ふむ。引き続き頼む】


【はい】【ラピスリ~♪】バッサバッサ――


【如何なさいましたか、イーリスタ様】


【も~っと ゆる~くていいんだよ?】


【いえ、そうは――】【参りますから~♪】


【お話しを進めてください】


【ん~~~、ねっ♪

 僕に何か言いたくなかった?

 そんな気がしたんだっ♪】


【何か……ああ、妹達が弟子入りしたいと話しておりました】


【ラピスリの妹? 達?】


【双子で、今は猫にされております】


【解いたげるから連れて来て♪

 それから話を聞くよ♪】

《解くのは儂らではないか》【あはっ♪】


【しかし今はウンディを見張っていなければならないのですが……】


【その為にも龍に戻れた方がいいでしょ♪】


【確かに……では後程】


【ん♪】上昇――【あ♪ 僕も行こ♪】


【【イーリスタ様……】】呆れ顔×2。



―◦―



 結局イーリスタは一緒に来て――


【マディア~♪】ハグ♪


――ルロザムールの姿でエーデラーク(マディア)に抱きついた。


【イーリスタ様! どうしてっ!?】


【会いたかったから~♪】


【ラピスリ姉様っ! 何があったの!?】


【廊下で騒いでないで入ったら?】

エーデリリィの呆れ声が聞こえた。


【……そうだね。来て】

ルロザムール(イーリスタ)をくっつけたまま執務室へ。


ディルム(ラピスリ)は苦笑しつつ後を追った。




【それで?】


【マディア、喜んでくれないのぉ?】

【返事に困るような事を仰らないでください。

 マディア、オフォクス様からだ】

預かった闇球を渡した。



【うん。解ったよ。

 エーデ、明日は一緒に月にね】


【わかったわ】

ナターダグラル(エーデリリィ)が頷いた。


【では人世に参りますよ?】

ルロザムール(イーリスタ)を引っ張る。


【ん♪ マディア♪ エーデ♪

 今度は歓迎してねっ♪】


 どうにかルロザムール(イーリスタ)を引き剥がしたディルム(ラピスリ)は、申し訳なさ気な苦笑を浮かべて瞬移した。



 永遠の樹の枝で待たせていたウィスタリアとナスタチウムを連れて現世の門へ。


【ここからは魂扱いで連れてくんでしょ?

 1対1じゃないとムリでしょ?

 僕が来て正解でしょ♪】

ショウの『ふさふさ』の紐を指に掛けてクルクル回す。


【二度 降りれば済むのですが……】


【そんなコト言わないでぇ】


ウィスタリアとナスタチウムが笑う。


【ま、楽しく降りよ~ねっ♪】

行きで要領を得ているウィスタリアを連れて降下♪


【姉様、神力射を無効とする為に――】


【待つ間にウィスタリアから聞いたわ♪】


【では参りましょう】【ええ♪】







月に行きたがっていたミルキィとチェリーでしたが、愛しのイーリスタ様の方からお迎えに行くようです。


すんなり、めでたしめでたしなのか?


ですよね~。



マディアはエーデラークしていたので困り顔でしたが、本当はイーリスタ大好きなんですよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ