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古の神世



「ただの犬であった私を青生様が拾ってくださったからこそ、私は龍に戻れたのです。

 お庭の皆様も、いずれ神に戻ります」


「庭の……皆、神様だったんですね……」


「輝竜家に残してくださっている動物は皆様、獣神なのです」


「俺の神様が見つけているのかな?

 また増えますけど、お願いしていいですか?」


「もちろんです」


「先月の事故で飼い主を失った動物達が回復したから引き取るんですよ。

 里親を探す気にもならないから、きっとまた神様なんでしょうね」


「そうでしょうね」ふふっ♪


「あ、もしかして黒瑯と仲良しな(オニキス)は、あの黒い龍神様かな?」


「青生兄♪ 当ったり~♪」「はい♪」

「オニキス師匠はウィスタリア師匠の弟♪」


「そうなんだ。だから来てくれているんだね」


「でねっ♪ 俺達の神様の子供なんだって♪」


「瑠璃の神様も、そうなんだよね?」


「うんうん♪ そぉ言ってた~♪」


「俺達兄弟の神様の事、動物にされてしまった神様の事……神様の世界で何があったのか気にはなりますが……。

 とにかく、連れて帰りたいと思った動物は、どんどん拾いますので、お願いしますね」


「はい♪」


「俺、ハムスターなってた神様 拾ったよ♪

 だから一緒に、お稲荷様に月に連れてってもらったの♪

 でねっ、俺の神様も目覚めさせるって――あれれ? ソレどぉなっちゃったんだろ?」


「俺も、なんだよね。

 唱えているのを心地よく聞いていたら眠ってしまったらしくて……」


「俺も~」


《ちゃんと目覚めたよ》

《これからは君達を支えるからね》


「あ……」「聞こえたよねっ♪」「うん」


「父様……」「父様の声したよなっ!?」


「あ♪ オニキス師匠おはよ~ございます♪」


「したよなっ!」


「うんっ♪」「はい♪」「ええ♪」



―・―*―・―



 月ではマディアが『賽子(サイコロ)』を見つけて戻って来たところだった。


《その賽子はオフォクスに渡してくれるかの?

 オフォクス、使い方を流しておくぞぃ》


玄武が入っている大きな蛇亀が闇を纏った。


【お任せください】《うむうむ。頼んだぞ》


玄武が離れ、オフォクスが狐に戻る。


【オフォクス様、お願いします】

小さな箱はマディアからオフォクスへ。


《其処に暫く入れた後、月に連れて来い》

《ユーレイのままでもいいからなっ♪》

《今度こそ、ちゃんと開くからねぇ》


《強い神力は封じておるがの、ほんの ちぃとばかり使えるようにしておるからの。

 慣れておくのも一手じゃからのぅ》


【ありがとうございました。

 では、人としての彼を家に戻さねばなりませんので】

ラピスリは深く礼をして留まり、感謝の大きさを伝えた後、利幸を抱えた。


【儂も戻る。急がねば夜が明ける。掴まれ】


【はい。ありがとうございます】

オフォクスに触れると、揃って礼をして消えた。



【もう少し話したかったな……】【そうね】

マディアとエーデリリィは門の方角を見詰めていた。



《シアンスタとネモフィラは落ち着いた?

 鍛えようかぁ?》


【【はい!】】


《マディアとエーデリリィは?

 すぐに帰るのかなぁ?》


【いえ! お願いします!】【私も!】


【青くなくても宜しいのですか?】

カーマインが静かに尋ねた。


《ヤル気のある子なら誰でも歓迎だよ。

 双子君はヤル気とかの問題じゃなく鍛えるけどねぇ》


【では、お願い致します】

プレリーフも並んで礼。


《では始める!》【はい!】一斉!



《ならば狐達は後にせねばのぅ》

《俺のディルムは眠らせたぞ♪》

《私は見張りに戻る》神殿へ。


《狐達? ペン太だけじゃなく?》


《テトラクスが様子を見に来てのぅ、加えてほしいと言うから望み通りにしたんじゃよ。

 そうしたら次は兄弟揃うて来てのぅ。

 じゃから龍と交替に鍛えると決めたんじゃよ》


《で、兄弟効果でペンペンからペン太に昇格かぁ?》


《その通りじゃよ。

 して、弟子は此処で眠らせたのかの?》


《おう♪ 俺も寝るからなっ♪》くるん♪


《よぅ似た大きな毛玉が二つ……。

 こうなると猫じゃのぅ》ふぉっほっほ♪



―・―*―・―



「瑠璃姉お帰り~♪」


 社の扉が少しだけ開き、瑠璃が覗き込んだ。

それを見たウィスタリアとオニキスは笑顔で瞬移した。


「もう起きたのか? 寝言か?」


「瑠璃姉もソレ言うのぉ?

 青生兄にも言われたのぉ」


「何度 騙されたか知れぬのでな。

 青生、気分は? 大丈夫か?」


「うん、大丈夫だよ。

 眠ってしまって、ごめんね。

 それで、俺の龍神(ドラグーナ)様は?」


「お目覚めになられ、青生を支えると仰った。彩桜も同じだ。

 治癒と浄化を出してみれば分かる筈だ」


「さっきの声、寝言じゃなかったんだ~♪」


「声?」


「聞こえたの♪ ねっ、青生兄♪

 支えるって言ってたよね♪

 目覚めて言ったんだから寝言じゃないよ♪」


「そうだね」くすっ♪

「そういう事か」フ♪


「一緒に家 帰ろ♪ 浄化♪

 わあっ♪ ホントに強くなってる~♪」



―・―*―・―



 瑠璃はキツネの社に行く前に、利幸の家に寄っていた。

しかし眠りを解いても利幸は目覚めず、仕方無しにオフォクスが残ったのだった。


「そろそろ起きよ。遅刻するぞ」


「んぁあ? ん? 狐!? デカっ!!」


「時計を見よ」浄化光で包む。


「うわぁあっ!?」

一気に目が覚めたらしい利幸は、喋る大きな狐にツッコむどころではなくドッタンバタバタッと支度を始めた。


 オフォクスはフンッと鼻を鳴らすと、もう二度寝はないだろうと社に戻った。



―・―*―・―



 月の龍達は休憩となり、エーデリリィがネモフィラ プレリーフと話し始めたので、マディアは神殿前で眺めている玄武に寄った。


【玄武様、神世の最果ての向こう側のお話を伺いたいのですが】


《ふむ。

 かつて神世には二つの大陸と広大な雲の海が在ったんじゃよ。

 彼の地は、人神の国じゃった。

 今の神世は全て獣神の住処(すみか)じゃった。

 分厚い岩壁となったは雲海(うみ)じゃった場所じゃよ。


 ザブダクルを封じて戻ったら灼熱と化しておったのじゃから、原因なんぞ知らぬよ。

 彼方の地より不穏な気を感じて、岸際の山脈の向こうに行くと、雲海は消滅。

 干からびとったんじゃ。

 対岸は真っ赤じゃった。

 煙なのやら禍なのやら……ま、両方じゃろ。

 黒く禍々しいものに覆われておったんじゃ。


 儂等は瞬移も交えて飛んで行き、逃げ惑う人神達を助けたんじゃ。

 燃え盛る地を凍らせ、火山と化した山々を鎮めながらのぅ。

 月の門も、その時造ったんじゃよ。

 岸が遠いからのぅ》


【それじゃあ人神も月を知ってたんですね?

 こっちに逃げて来たんですよね?】


《そうじゃよ。

 しかしまぁ、な~んも無い所じゃからの、落ち着いたとたん、神世に戻りたいと言い始めたんじゃよ。

 獣神としても月は あまりに可哀想じゃと、族長達が話し合うて、生き残りの数から考えて1/3程くれてやると決めたんじゃ。


 禍やら彼奴やらを封じておる地は、双方共に入ってはならぬ禁地。

 それと人神の地、獣神の地で1:2:3とのぅ。


 最初は人神も喜んでおった。

 しかし、じわりじわりと不満が湧き、禍が現れ始めたんじゃ。

 禁地を増やさざるを得なくなったんじゃよ。

 じゃから均等割りにしたんじゃ。


 人神の地は減しておらなんだが不満は減らず、そうこうしとるうちに獣神を端へ端へと追いやり始め、中央部分を占拠し、終いには地の大半に拡がりおったんじゃ。

 そうして彼奴を封じた禁地に都を造り、神世を1国として、その王を立て……と、ここからは知っておるな?》


【はい。歴史として習っただけですけど】


《儂も途中からは此処から眺めておっただけじゃがの、人神とは我が儘で欲深く、自然を尊ばぬ愚かな者なんじゃよ。

 理性とやらで抑制できる者も居るが少ない。

 ザブダクルやダグラナタンは何も特別ではのうて、ただ欲に素直なんじゃろうのぅ》


【特別じゃなくて素直……】神殿を見た。


《分離の方法は考えるが……ダグラナタンがザブダクルに取り込まれぬよう、宥めて励ましてやってくれぬかのぅ?》


【あ……そうですね。

 マリュース様の御力を悪用されないようにエーデラークします。

 なんだか……ダグラナタンは以前に比べると格段に穏やかになってたから、僕の憎しみも浄化されたみたいな気持ちだったんです。

 その気持ちを込めて話します】


《毎日毎日、破邪を浴びておったからでは?

 此処でも頼むぞぃ♪》


【はい♪】


《ふむふむ♪ 続きじゃがのぅ。

 彼の地は何度も凍結させたが、すぐに噴火し、灼熱に戻る。

 じゃから干からびた雲海を山脈から続く壁とし、永久風雪の術で閉ざしたんじゃよ。

 それでも噴火するんじゃがのぅ。


 しかし全てを封じれば、燃え盛ろうとする強大な力は行き場を失う。

 神世に如何なる災厄を齎すか知れぬからの、噴火したければすればよいと、此処で吹雪との均衡は保っておるんじゃよ》


【永久風雪……凄い……】


《儂等も特別じゃあない。

 修行次第じゃよ》


【はいっ!】







かつて神世は大きな2つの大陸と、その間を占める雲の海で出来ていました。


今は、雲の海は高い高い台地『岩壁』に、2大陸は岩壁に囲まれた『神世』と、人神に忘れ去られてしまった灼熱と風雪の荒地となりました。



人にとっては数千年で古ですが、地星の神にとっての古は億年単位です。


初代四獣神や悪神ザブダクルが生きていた遠い遠い古の世。

そんな昔々に何があったのか?

その頃、人世は?


というのも気になるところでしょうが、今の神世と人世の絡み合うお話に、古の神世のお話も複雑に絡み付いて、とにかく進んでいきます。

m(_ _)m


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