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クジラからの依頼



 動物病院の休診時間に入るとすぐに青生はラピスリに、彩桜はランマーヤに乗って神王殿に行った。


 結果、ナターダグラル第1伯爵も出席者な上級伯爵家の上品で華やいだ食事風景を眺めながら演奏するだけになってしまったが、悪神の子であるザブダクルにしか共鳴しないとカイダクルとカーリザウラが断言したので、終わるとすぐに王都の西の小さな森に向かった。


探り探りなので ゆっくり飛んでいると、

〖うん。確かにオーロを感じるよ〗

〖犠牲者達は皆すっかり萎んで球魂になっているようだな〗

真上に着くまでもなく感じ取った。


【カイさん カーリ、生きてるんだよね?】


〖生きている〗〖ギリギリだけどね〗


【だったら助かる~♪ 元気なるなる~♪】

【そうだね。大勢だけど復輝降臨するよ】


【地下に空洞が在る。このまま入るぞ】

青生を背に乗せたまま突入した。

彩桜を乗せているランマーヤも続く。


木々も土地(つち)も何のその。

青生は静かに苦笑しているが彩桜は大笑いだ。


【着いた~♪ ホントい~っぱい居る~♪】

自分の羽で飛んで行った。ランマーヤが追う。


【瑠璃、壁にも隠しているから出してあげよう】

【ふむ。想像以上に多いな】



 掌握で取り出しては保護珠へ、を繰り返していると

【青生兄 瑠璃姉! コッチ来て!】

何処に居るのやらな彩桜が声を上げた。


【遠いな】【彩桜へ瞬移でいいんじゃない?】



――【コッチなのっ!】近いが壁の向こうから。


【別の空洞らしいね】【明らかに神造穴だな】

今 居る空洞も森の下のとは別だとは感じたが、騒ぐ彩桜に向かって壁を抜けた。

【此処にもか……】


【ドラキュラ悪神、吸い尽くしたら此処に押し込んでたみたいなのっ!】


【確かに、あまりにあまりな光景だな。

 全て社に運ぶぞ!】【うんっ!】


 ダグラナタンは貴族神達を地下牢に閉じ込めただけだったので、動けなくなった人神達が倒れているのが死屍累々に見えたが、此方はボロボロに風化したミイラか白骨を積み上げているかのようだった。

それでも神は生きている。風前の灯火ではあるのだが。



 最高司補達とルロザムールとエィムも呼んで回収と保護を加速して、リグーリとチャムに運び役を頼んだ。

そうして夜明け前には、他の穴も含めて隈無く調べ、全てを運び終えた。


【彩桜、まだ何か気になるのか?】


【えっとねぇ……】天井を探っている。


【青生、彩桜は何をしている?】


青生は壁を探っていた。

【うん……この上には森が無いよね?

 吸い尽くしたとは言っても、こんなにも集めればSOSの森くらいは成せるよね。

 だからたぶん神力が漏れないように結界を成していると思うんだ】


【向こうの森は? 結界は無かったのか?】


【こっちの穴の方が森より後なんだよ。

 既に出来上がった森を消すのも不自然だし、あれ以上には拡がらなかったから、そのままに。

 新たに増えると調べられてしまうと考えたんだ。

 だから向こうの森とも隔絶、拒絶かな? 神力が合わさって拡がってこないように強い結界を成しているんだよ】


【また獣神には見えぬ結界か?】


【うん。今の人神様に感知される心配はないと思うけど、獣神様なら気づいて探るかもしれないからね。

 でも、その強い結界を保つ神力なんて悪神が持っているとは思えない。

 だから誰かに保たせていると考えて探しているんだよ】


【納得した。

 ランマーヤ。社に行った仲間に、少し遅くなるが心配せぬよう伝えてくれ】


【はい♪ 伝えたら戻りますね♪】術移。




 陽は とうに昇っているだろう頃。

既に犬の散歩は終わっていて、彩桜なら3度目の朝食を食べている時間だ。

【彩桜、そろそろ戻らねば――】【居た~!♪】


彩桜に集まる。


【このヒト……リュニロゥ様?】青生に渡した。


【そうだね。リュニロゥ様の真核かな?】


【急ぎ戻るぞ!】纏めて術移!



――キツネの隠し社。

リュニロゥを囲んでいた皆が向く。


【リュニロゥ様の真核です!】【込めます!】

青生が差し出した真核を瑠璃がリュニロゥの身体の上に浮かせ、詠唱を始めた。


囲んでいた皆からの神力が後押しして、最速で真核は本来の位置に収まった。


【光った~♪】【彩桜は学校に行け!】【ほえ?】

リュニロゥに抱き着こうとした彩桜が止まる。

【遅刻するぞ!】【そんな時間なのっ!?】

セルフ浄化と瞬着替えを同時にして瞬移した。


【お目覚めは早くても昼。

 治癒を維持し、お待ちしましょう】

青生が言って微笑む。そして兄弟に

【説明も後で。出勤しましょう】

言って瞬移しようと――

【待て青生。身体に戻す】

――呆れ声の瑠璃が止めた。


【あれ? 彩桜は?】


【問題無いらしい】ふふっ♪



―◦―



【彩桜、どうしてユーレイ状態?】

解答欄を埋めてから尋ねた。


【サーロン分身 貸してね~♪】

瞬移したら入ってしまった彩桜も既に埋めている。


【いいけど……】


【神世から戻って そのまま来ちゃった~♪】


【彩桜ってホント器用だよね♪】あははっ♪


【入っちゃっただけなの~♪

 入ってビックリで気がついたの~♪

 サーロンだから居心地いいの~♪】


【そうなの? でも嬉しいよ♪】


社でリュニロゥに浄治癒を当てている狐儀も分身狐松を通じて聞いており、笑っていた。

【彩桜様、終わりましたら社にいらしてくださいね。お預かりしておりますので】


【うんっ♪】



―◦―



 筆記の期末テストが終わり、終礼学活を経ても午前中な放課後。

生活(技術家庭)科の実技テストは調理室からスタートした。

メニューは早く作れるからと焼き飯。

材料と器具はリーロンが配達してくれた。


「作り方はプリントの通りよ。

 輝竜君は手伝わないでね?」

家庭科の母坪(もつぼ)が産休に入ったので代理をしている国語教師で茶道部と書道部の顧問の福良(ふくら)は彩桜とサーロンをよく知っている。


「俺、食べるヒト~♪」るんるんっ♪

自分の身体に戻った途端、空腹の極致だった。


「笑わさないで、です」既に刻んでいる。


「あら……大きな中華包丁?

 何をしても見事なのね……」


「兄さん、シェフですから♪」余裕綽々♪


「でも多くない?」


「彩桜が食べるです♪」

これまた大きな中華鍋を出した。


「それを振るの?」


「はい♪」

中華鍋を軽々と振るのは片手で、もう片手はお玉をリズミカルに操って、ジャッカジャカと完成させた。


「食~べる~♪」「待って! 味の評価!」

慌ててスプーンで掬って口へ。

「文句無しに満点よ。片付けたら被服室ね」


「「はい♪」」



―◦―



 被服室では1年生の時の担任だった古嶧(こせき)が待っていた。

家庭科は国語教師2人が代理をしているのだった。


「なんだか久しぶりね」

今年度は2年2組の担任で、1組の国語は福良先生なので暫く会っていなかった。

「ミシンの扱い方を見ます。準備からね。

 この布で巾着袋を作ってもらえる?

 輝竜君は座っていてね?」


「はい♪」「俺も縫う~♪」

各々がミシンを運んで来た。


「輝竜君、布は?」


「持ってま~す♪」ヒラヒラ~♪


「もうっ。まるで手品師ね♪」


糸通し作業は素早くて見えなかった。

古嶧が困惑している間にミシンは動いている。

「えっと……何をしているの?」刺繍?


「出来上がってのお楽しみ~♪」「です♪」



 そんなに速くミシンが動くのかと驚いて見ていると、出来上がりを後ろに隠すように持ってニコニコ来た。

「先生にあげる~♪」「ボクも、です♪」


「輝竜大明神? お守り?

 でも確かに巾着袋ね……」

匠かというくらい見事に出来上がっている。


「中身も入れてま~す♪」

「本当に御守り袋です♪」


「こんな刺繍モード、どこにあるのよ?

 でも満点以外にないわよね♪」

不覚にもテストなのに笑ってしまった。



―◦―



 技術科は工作室。美術の彫刻などの工作も此処なので、後ろの棚には様々な作品が並んでいる。


匠ん(たくみん)先生、椅子?」

2年生は1学期中かかって椅子を作ったので。


「まさかまさか。そこの端材を(のこぎり)で切って、釘を打ち込んだら終わりだよ」

定年間近な匠屋(しょうや)先生は穏やかな笑顔で端材箱を指した。


「でもボク、弟に椅子を作りたいです♪」

「材料ある~♪」端材箱を運んで来た。

「すぐ作れますから♪」「俺も飛鳥に作る~♪」


材料は吟味して選んでいたが、作り始めると早い速い。


「お~い、手が見えないんだが?」


笑顔は向けたがスピードは落とさずに、お揃いの小さめ椅子を完成させた。

「匠ん先生「はい♪」」

頭の上に乗せて駆け寄った。


「これはこれは……満点以上だね。

 弟君は小さいのかな?」


「ユーロン5歳です♪」「飛鳥も5歳なの~♪」


「輝竜君は末っ子じゃなかったかな?」


「飛鳥クン、彩桜の彼女の弟クンです♪」

サーロン、彩桜の口を塞いでニコニコ♪

「ユーロンと飛鳥クンとっても仲良しです♪」


「そうかそうか」にこにこ。



―◦―



 そうして全ての実技テストも満点ゲットでニコニコ弾みながら帰っていると――

【あっ、居た! ソラさん!】

――見るからに祓い屋なユーレイが降下して来た。


【クジラさん珍しいですね。

 サイオンジは留守でしたか?】

周りを確かめて姿を戻した。


【会いましたけどね、この件はソラさんだと仰るから探してたんですよ。

 ソラさんは黒蛇(くろだ)ってユーレイをご存知で?】


【黒蛇 蛟喜(こうき)さんでしたら】

【ウチ住んでるよ♪ 今はレストランかにゃ?】


常陸(ひたち)の出ですか?】


【うんうん♪ 連れてってあげる~♪】



――ノワールドラコの事務室。

【黒瑯兄♪ 黒蛇さん借りていい?】


【この昼前に!?】


【急ぎみたいなの~】


【行けよ黒蛇!】【はいっ!】事務室へ。



【このヒト?】

【ええっと、握手させてもらえますか?】


【あ、はい】握手。


【確かに この黒蛇さんだな】

【確認だけ?】【だったら黒蛇は戻れ!】


【はいっ!】消えた。



【忙しいみたい~】【すみません】


【確かに昼時のレストランじゃあ無理ですよね】


【ボク達が代わりに動きましょうか?】


【それなら……お願いします!】







災厄に備える活動と学校での日常に加えて新たに事が起こったようです。

でも相棒(ソラ/サーロン)と一緒なら休む暇なしでも平気。楽しく動ける彩桜なんです。

さて、東京のクジラは何をしに来たんでしょうね?



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