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協神力



 オーロザウラの半分を眠らせて拾知し終えたのと、まだ集まろうと大行進を続けている人神達にマーカーを付け終えたのは、ほぼ同時だった。


【集まるには まだまだ掛かりそうだから見ていてもらえるかな?】

【先に半分オジサン浄滅しに行っていい?】


【そうしてもらいたい】

〖速やかに! 今の世の為、どうか速やかに!〗


【リュニヴェ様、任せてねっ♪】【行くぞ】

最速術移する為に龍狐姿になったラピスリとランマーヤが青生と彩桜を連れ去った。



〖あの美しく気高い御姿は、もしや……〗


【今ピュアリラ様です】〖ああっ!〗

【こう、で御座いますか?】宙で跪拝。


〖ありがとうございます……ありがとう……〗

リュニヴェもシッカリガッツリ敬虔なピュアリラ信奉者だったようだ。



〖今ピュアリラ様と?〗


【もしかしなくてもフレブラン様もですかぁ?】


〖当然だ。人神の大神は全てピュアリラ様の教えに従っておる。

 だからこそ大神と成れたと言えよう。

 愚かな王族や貴族は己こそが頂とばかりに教えを無視し、結果、滅びるに至ったのだ。

 黒き女王と、先程の悪王が如しだ〗


【つまり、ピュアリラ様の教えに従ってた真面目な人神様達にとっては、獣神様は仲良くしたい相手だったんですね?】


〖その通りだ。

 ピュアリラ様ご自身は太古の混沌神様であり、龍であり狐であられた。

 混沌神とは人神と獣神に分かれる以前の神。

 全ての神の祖先であり、両神力を持つ強き神。

 分けたのは強過ぎる為と言われておる。

 神としての心が未成熟な者が持つには危険過ぎる神力であるが故な。

 分けて以降の神は、獣神と人神、両神(りょうしん)協神力(きょうりょく)にて、神としての本領を発揮する者だとピュアリラ様は仰っておられるのだ〗

〖ですから正しき道を守っていらっしゃいます王族や貴族の皆様は、改名の際には獣神の大神様にご協力いただくのですよ〗


【カリカルパ様、改名とは?】

藤慈は以前 聞いたのよりも もっと詳しくという思いを込めて聞いてみた。


〖ローレカリュー様より伺いましたお話では、カリュー王家でしたら、成神(せいじん)祝賀の際または王位継承の際に改名して『カリュー』を名に得るのです。

 改名もまた称号と同じく強化。

 それを獣神様のご協神力(きょうりょく)を得て行うのですから王は強いのです。

 先程の半龍神カーリ王子様でしたら、幼名は『カーリザウラ』様、今は『カーリカリュー』様となられていらっしゃいますね〗


【あ~、だから悪神の術が立ち消えたのかぁ。

 幼名で縛ろうとしてたからなぁ】


〖ええ。

 カリュー王族を根絶やしにしたオーロザウラは その事を知らないのでしょう。

 名に『カリュー』を得、強化する道を自ら絶ったのですから〗


【あれだけ強化してもらおうと躍起になってたってのに皮肉なもんだよなぁ】



―・―*―・―



 彩桜はカイダクルとカーリザウラをアミュラの結界に残してカリーナ火山に行こうとしたが、二神は一緒に行くと言って聞かないので少し時間を費やしてしまっていた。


【じゃあ火口近くまでだよ? 危険だから】

とうとう彩桜が折れて、連れてカリーナ火山に向かった。



【ランちゃん止まって。此処から見よぉね。

 カリーナ火山の火口には、オーロザウラと結婚させられたルサンティーナ様の怒りの神火があるんだ。

 オーロザウラを浄滅できる唯一の神火なの。

 カーリはオーロと双子だし、カイさんはオーロから生まれてるから飛び火しちゃう可能性を考えて此処ね】


〖この地が灼熱と風雪に閉ざされた経緯はアミュラ先生から聞いたよ。

 悲しい怒りだよね。僕にとっても……〗

オーロザウラの悪行は全て己の神力だという言葉は飲み込んだ。


【カーリは悪くないのっ!

 だから悲しくなっちゃダメ!

 全部ルサンティーナ様が担うから言ってる!

 カーリは明るくいなきゃダメなのぉ。

 今のカリューの王様なんだからぁ】


〖ありがとイマチェリー。

 僕は強くならないとね。

 僕の知ってるカリューに戻さないといけないんだから、もっと、ずっとね〗


【うんうん♪】


ラピスリの背の青生がオーロザウラ入りの闇呼玉を投じた。


『ルサンティーナを感じるぞ! 見つけたぞ!

 まだ儂は残っておる!

 最強の欠片を目覚めさせてやったのだからな!

 必ずや迎えに来ようぞ! ルサ――』


もう名を呼ばせはしないと立ち昇る激しい炎が語っていた。


【彩桜、急いで全ての欠片を回収しよう】【ん!】


『お待ちください』


既に反転していたラピスリとランマーヤが止まって振り返ったのと、熱風が吹き抜けたのが同時だった。


『憎きオーロザウラの悪露(おろ)を浄滅しました。

 もう過去は見ず、お進みください』


『『ありがとうございました!』』


吹き抜けたのは確かに熱風だったが優しく包み込むようだったと、感謝を胸に人神達を集めている王都と副都の中間地点に向かった。



―・―*―・―



 キツネの隠し社の奥では、狐儀達も加わってリュニロゥと獣神魂の分離作業を進めていた。


【子神達……随分と消えてないか?】

理俱は狐儀にだけコッソリ聞いてみた。


【そうですね。

 リュニロゥ様は大神様。強き人神様です。

 対して子神達は……多くが鳥神の雛です。

 保護魂から孵化したばかりだったのでしょう。

 あまりに弱い……悲しくなりますね】


【俺、命の欠片を足して育てると決めたんだ。

 兄様の社に部屋を貰えるか?】


【では私も欠片を加えましょう】

【リュニロゥ様には儂とドラグーナが補填する。

 此の様な無茶をせねば人神魂と獣神魂は調和するものなのだからな】


【あっ、【ありがとうございます!】あ……】


【理俱?】【如何した?】


【あの兄弟が無茶苦茶とんでもなく強いのは、強者な人神魂で成されていて獣神の大神(ドラグーナ)様を内に抱えているからですかっ!?】


【其の通りだ】フ。

【無知な人神には最大の誤算であろうがな】


【【確かに調和の極みですね……】】


【調和であり、協神力(きょうりょく)の現れだ】

オフォクスはアフェアンとサマルータから聞いた協神力について話し始めた。



―・―*―・―



 ラピスリ達が再びカリーナ火山に戻ったのは、邦和が すっかり宵闇に包まれた後だった。

カリーナ火山は昼間。しかし風雪の地は常に暗いので『いつも通り』としか感じられなかったのだが。


オーロザウラの半分の時と同様に、彩桜達は離れて見、青生が闇呼玉を次々と投じていった。


耳障りな断末魔の叫びが続く中、

『強き欠片が全てを滅ぼしてくれようぞ!』

という言葉が明瞭に耳に届いた。


それを最後に言葉らしい叫びは聞き取れなかった。



 全ての闇呼玉を投じ終えると、火口から少し離れた青生とラピスリはルサンティーナに感謝を込めて礼をした。

彩桜達も合わせて頭を下げる。


【戻ろう】【急いで最強の探さないと!】

〖僕達が共鳴を確かめるよ〗〖そうだな〗


一片(ひとかけ)であろうが残っていれば、また蔓延させられてしまう。

『最強の』と二度も聞いてしまったのも気になって仕方がない。


【青生兄、ザブさんにも協力してもらう?】


【そうだね。行ってみよう】



 死司最高司の館に行ってみたが、ザブダクルはオーロザウラに睨まれたと震え上がり、ベッドで縮こまって泣いていたので、協力を求めるのは諦めて自分達だけで探そうと、最も人神が多く暮らしている王都に戻った。

最強であれば今は動くべきではないと判断して潜んでいる可能性、別行動を指示された可能性を考えての事だった。


 姿を消して、家々の連なりの上を屋根すれすれに飛ぶ。

青生と彩桜は拾知全開で。

カイダクルとカーリザウラは小さな共鳴も見逃すまいと集中して。



 城壁に囲まれている王都の正門から始めて、再び正門に戻った頃には日付けが変わっていた。

【二手に分かれよう。

 目標は貴族神様でいいのかな?】


【拾知、当たりだって~♪】


【もう都には居ないと考えて、大きな街で、貴族の親族とかの屋敷がある所がいいかな?】


【拾知、震えにゃいねぇ。

 やっぱり都?】


【震えないね。下空なのかな?【震えた♪】ね。

 職神様の中にも貴族神様がいらっしゃるから探してみよう】


【うんうん♪

 カイさん、青生兄とお願いしま~す♪】

カイダクルの保護珠を青生に渡した。

【ランちゃん、死司域から北にね♪】【うん♪】


【なら瑠璃は再生域から北にお願いね】【ふむ】



―・―*―・―



 他の兄弟は先に帰されており、リュニロゥと獣神魂の分離を手伝っていた。


【オフォクス様、私も加わらせてください。

 もう大丈夫ですので】

現れたハーリィは狐儀と理俱にも微笑んだ。


【ナンか……覚醒? 強くなったんじゃないか?】


【そうだな。

 アフェアン様とサマルータ様から命(の欠片)を分けて頂いた。プラムもな。

 プラムも今日から瞑想を始めている。

 間も無く元気に飛び回れるだろう】


【あれ程の強い禍に包まれての回復と考えれば、驚異的な早さですね。

 これも人神様と獣神との調和。

協神力(きょうりょく)』なのですね】


【ダグラナタンのおかげで俺達は人神嫌いになっちまった。

 だが、今こそ心を開く時だよな】


【そうですね】



―・―*―・―



『ほう。この封珠、利用せねばな……』

声の主は含み笑いをしながら遠ざかった。



【あの声……あの声は!】


【どうしたのダグラナタン?】


【先程の声ですよ!

 聞こえませんでしたか!?】


【聞こえたわ。この封珠を利用するとか。

 確かにザブダクルの声ではなかったわね】


【あの声は幼き頃から聞こえていたのです!

 私を(そそのか)して悪く染めたのです!】


【何かに取り憑かれていたのね。

 それが魂ではなくて身体に残っていた……?】


ダグラナタンは声を上げて泣き崩れた。


【お姉様、今度はザブダクルと共謀するのでは?】


【するでしょうね。急ぎましょう。

 利用される前に出なければね!】


【はい! ダグラナタンさんも修行しましょう】


ガバッと勢いよく顔を上げた。

【そうですよね!

 今度こそ負けてはなりませんから!】


【その意気よ。頑張りましょう】


【【はい!】】



―・―*―・―



【彩桜、どうだった?】


【んとねぇ、ザブさん共鳴するの当然でしょ。

 でも他に共鳴なかったんだよねぇ】


【困ったね……】


【もっかいザブさんトコ行ってみる?

 さっきもまだ泣いてたけど】


【そうしたいけど、もう朝だよ。

 彩桜は期末テストなんだから帰らないとね】


【あらら~。朝なっちゃった~】







ダグラナタンもオーロ持ちだったようですね。

後で入り込んだザブダクルは気づかなかったんでしょうか?


それはさておき、オーロの最強の欠片はどこに?

その方が今は重要ですよね。

きっとそれが災厄を起こすんでしょうから。



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