散らばってるなら集めさせるのみ
アミュラの結界に着くとラピスリだけがカリーナ火山に向かった。
〖今度は どうしたんだい?
ああ、その爆睡ドラグーナだね?〗
【そぉなの~。狸寝ドラグーナ様なのぉ】
〖ま~た色恋事かい?〗
【そぉなの~】【また、ですか?】
〖アンタらも同じだろ?
それだけの見目の良さ。
神力の高さ。
モテない理由を探す方が難しいさね〗
【いっぱいイジメられたもん】
〖そりゃあモテない男神が込めた弱禍ってヤツのせいなんだろ?〗
【そぉでした~】
【彩桜、それよりドラグーナ様だよ】
【だったねぇ。
ドラグーナ様、双子の妹いるの。スタリーナ様。
スタリーナ様、ドラグーナ様と結婚したいの。
でもドラグーナ様ムリなの。
どしたらいいのぉ?】
〖そうかい。たとえ災厄とやらの為の備えだとしても受け入れられないんだねぇ。
そのスタリーナを連れて来な〗
【うんっ♪ ありがとございま~す♪】
〖ドラグーナ。もう分かってるからこその恐縮だろうがねぇ、そんなのは気にしなくていいんだよ。
アタシゃ世の為に存在してるんだから、それを全うするだけさね。
それにアタシの弟子達を立派な龍神に仕上げてくれた礼も兼ねてだ。
安心して次の仕事をしな〗
【……はい。ありがとうございます】【起きた~♪】
ちょうどラピスリも戻った。
【行こう瑠璃、彩桜】【うんっ♪】【乗れ】
笑うアミュラに青生 彩桜 ドラグーナは何度も礼を言いながら王都に向かった。
―・―*―・―
〖ガネーシャ! 目を開けろ!
何があったのかを話せ! ガネーシャ!!〗
キャンプーが来て以降はパステルピンクなガネーシャをゆさゆさっ!
〖聞こえてるってば~。後で話すから~〗眠りたい。
〖目を閉じてはならぬ! 起きていろ!〗
〖無茶ばっかり言う~〗
ぐったりなので揺さぶられるがままの首が落ち着かない。
〖治癒と浄化ならば任せよ! だから眠るな!〗
光を纏って抱き締めた。
〖キャンプ~♡ 愛が苦し~♡
あれれ? ツッコミなし?〗もそっ。ぷはっ。
〖泣いてたのっ!?〗
〖悪いか。……親友なのだからな〗
〖ん♪ ボク幸せ~♡〗鼻ちゅ~♡
――を横目に悟達は狐儀から話を聞いていた。
【総じて計画通りなのですよ。
ただ……これ迄の悪神とは少々異なっており、霧状にした禍を不穏霧風に乗せて拡散するのです。
その攻撃に翻弄されてしまいました】
【じゃあ逃げられたのも計画的に?】
【はい。
神力を抜いた状態で外に出れば己が欠片を持つ者を集めると考えたのです。
悪神には獣神の神力は不要な筈です。
人世には人神は稀。神力の大きな人神様には離れて頂いておりましたので】
【そっか。だから吸血鬼みたいな【悪神でも自分集めするしかない】ですよね?】
【集まったところを一網打尽、ですよね?】
【そういう計画を立てたのです。
禍を浴びてしまい多大な迷惑を掛けてしまいましたが、一応 成功だと言えるでしょう。
治癒と浄化をありがとうございました】
【迷惑だなんてナイですよ。
サーロン、呼んでくれて ありがとな】
【少しでも役に立てて嬉しいよ】
【仲間ですから♪ 彩桜も そう言う思うです♪】
【まだまだなのに仲間外れにされなかったのが嬉しいんだ。だから ありがとな】
【そうだね♪ スタリーナ様ので呼ばれたのかと思ったよね】
【それも彩桜は考えてるです♪ 解決します♪】
【聖良さん、シッディ様とブッディ様は?】
【キャンプー様とガネーシャ様を見ていました。
笑っていましたから大丈夫だと思います♪
今は安心して眠り修行中です♪】
【それでしたら良かったですね】【はい♪】
―・―*―・―
青生達が神王殿に戻ったのは食事会が間も無く終わるという頃だった。
なので終わる迄は演奏し、片付けてから王都の上に浮かんだ。
『これが都……我等の都であった地なのですな?』
「はい、リュニヴェ様。
アノーディアとカソーディアが対立していた10億年、アノーディアのみとなって以降の20億年を経たカサドナントの都です」
『アノーディアが勝ったか……それでよい。
簒奪王に乗っ取られたカソーディアなんぞ消えて良いのだ。
良かった……誠に良かった』
『そうか。その声、カソーディアの宰相だな。
我が支配を解きおった生意気な息子は、最早 復活叶うまい。
ケモノを混ぜ、異形と成り下がった魂には、神力は滓ほども残っておらぬ。
身体は儂の好きに使わせてもらったわ。
全ては儂に逆らった報いだ!
嘆くがよい! その不穏も儂の糧だ!』
オーロザウラを封じていた闇呼玉が飛び、弾けた。
「出ても~、オジサンもぉ神力ナイでしょ♪
み~んな抜いちゃったも~ん♪
俺達ケモノ半分な神力なんて使うのムリでしょ♪
今のヒト神力ち~っちゃいし~♪
オジサン、勝ち目ナイよ♪」
闇呼玉に亀裂を入れておいた彩桜が揶揄う。
『喧しい! 子神如きが何を言う!
神力源は儂の半分が増やしてくれておるわ!』
「半分? オジサン自分で半分コしたの?」
『儂ほどに強い大神でなくば出来ぬ事よ。
目にもの見せてくれよう!』
「集めるんだったら都の外のがいいんじゃない?
ヒトだらけ、建物だらけで時間かかっちゃうよ。
集まる前に退治しちゃおかな~♪
あ~♪ 気づいてなかったとか?
オジサンて――」『喧しいわ!!』飛んだ。
【頑張って飛んでる~♪
もしかして瞬移もムリなってる?
神力枯渇させ過ぎたかにゃ?
それにしても~、魂核半分コて魔女みたい~♪】
【流石、母子だよね】【うんうん♪】
【さっきのは全部 彩桜が喋ってたのかぁ?】
【うんっ♪】
【青生が取り憑いたのかと思ったぞ♪】
【青生兄と俺、双子だも~ん♪】
【そろそろ追いませんか?】
【行こ♪ 藤慈兄も大好きなの~♪】ハグ♪
すぐに追い付いた。残念な事に。
【追い越しちゃダメだよねぇ】困ったにゃ~ん。
オーロザウラが飛ぶのも遅いが、引き寄せられている人神達が集まるのは いつの事やらな状態だ。
【ゾンビの大行進~♪】
【コノッ彩桜!】【笑わすなっ!】
もう下の光景はゾンビの大行進以外の何ものにも見えなくなってしまった。
【他の都からも来てるねぇ。
待つしかにゃいよねぇ】あ~あ。
【あれれ? アッチに森あるよ♪ 珍しいね~♪】
【確かにね】他は荒野ばかりな神世を見渡した。
―・―*―・―
狐儀より早く復活したオフォクスはリュニロゥの魂から獣神魂片を分離していた。
理俱と沙織は浄化と治癒を当てながら手伝っている。
【オフォクス様、この獣神魂片はオリュンポス神様のものですか?】
【否。確かめたが共鳴せぬと仰っておられた。
もしもオリュンポス神様のものであれば、その真下なんぞには置けぬであろうよ】
【確かに、そうですね】
【探りは入れておらぬが、何れも幼い子神ではないかと思う。
里から拐ったのではないかとな】
【酷いことを……】
【沙織さん、神の子ですから大丈夫です。
生み直し、私が親となりましょう】
【でしたらワタクシも!
まだワタクシ自身が大人ではありませぬが、理俱様と共に、親となりたく思います】
【ありがとうございます、沙織さん】
オフォクスは微笑ましく思いつつも、邪魔をしてしまっていると苦笑を浮かべた。
【あら、ご無事でしたのね。
では私もお手伝いさせていただきますね】
冷ややかな言葉は照れ隠し。
安堵の微笑みが正直な心を雄弁に語っていた。
【桔梗……すまぬが頼む】【はい♪】
助かったと、桔梗の方に寄った。
―・―*―・―
〖イマチェリー、完全に集まらずともよいのでは?〗
【そっか♪
紅火兄、ゾンビさん達にマーカーお願い♪
兄貴達とも手分けしてね~♪】【む】
〖私が囮となる。
戦い始めれば下の人神達どころではなくなるだろう。
私は奴の言う『儂の半分』から生まれたようだが、十分にターゲットとなれる筈だ〗
【ドラグーナ様のが強くなってるのに?】
〖共鳴を前面に押し出す。
龍神様だらけなのだから誤魔化せる。
出してくれ〗〖僕も!〗
【カーリまで……怖くないの?】
〖乗り越えたいんだよ。
本当は僕の方が強いんだよね?〗
【うん。カーリの方がずっと強いよ。
危険なったら護らせてね】
〖ありがとイマチェリー♪〗〖ありがとう〗
【じゃあ近づくね。ランちゃんお願い】【うん】
また簡単に追い付いた。
今度は追い越して行く手を塞ぐ。
『止まれオーロザウラ』
ゆらりとカイダクルが保護珠から出た。
『共鳴、だと? 何奴!?』
『もう半分、真核側が私を生んだ』
『生み損ないか……つまり我が神力源なのだな!
ならば取り込んでくれよう!』
ズイッと寄って手を伸ばす。しかし寸前の所で光の壁が現れて阻まれてしまった。
『何故だ!? 何故、光を!?』
『それは僕が光だからだよ。
オーロ、僕はもう負けないからね!』
カイダクルと並んで姿を見せた。
『まさかカーリ……再誕したのか?』
『もう半分のオーロから分離してもらったんだ。
キミからも返してもらったよ。
もう僕の神力は使わせない!』
『儂に護られ生き延びたのだ。
今すぐ戻れカーリザウラ!』
『何か唱えてたの気づいてるよ。
効かないよ。僕の方が強いんだから』
『ならば儂の目を――』『見ると思う?』
『もう十分だろう。行くぞ!』『うん!』
瞬移して眼前に。カイダクルは間髪を容れずに具現化剣を突き立てた。
カーリザウラは浄化と反転治癒で包む。
〖〖魂縛!〗〗
『な……ぜ……』
『刺さらないとでも思うたか?
其方も魂のみならば此方も魂のみ。
同じだからこそ攻撃も叶う』
〖〖イマチェリー!〗〗【うん!】
オーロザウラの背後に現れた彩桜が闇呼玉を背に当てた。
オーロザウラが振り返る。その途上で上空に浮かんでいる者を視界に捉え、たった一瞬だが鋭く睨んだ。
【シュポッ♪ カイさん カーリありがと♪】
〖任せてくれて ありがとう〗
〖僕も♪ イマチェリーありがと♪〗
―◦―
「マディア……終わったのだろう?」
「はい。戻りますね」
「頼む」
『あれは誰だ?』『下に集められた者達は何だ?』
聞きたい事は沢山あったが、オーロザウラに睨まれたザブダクルは震え上がり、何も聞けないまま死司最高司の館に逃げ帰った。
神世の人神達に増殖・拡散している微細魂片をオーロザウラ自身に集めさせようという作戦でした。
半龍神になって神力だけでなく心も強くなったカーリザウラとカイダクルは、悪神オーロザウラを倒せたことで更に逞しくなれました。
ザブダクルも同様に乗り越えてくれればいいんですけどね。




