脱走悪神
【キツネ様!】【狐儀師匠も!?】
【無事だ。追ってくれ】 【行こ!】【はい!】
彩桜とサーロンは瞬移を交えつつ飛び、不穏禍塊を撒き散らすキメラ魂を追った。
もう相手はオーロザウラだと確信しているので、禍呪防護の為にも支配返しの為にもと忍装束になっている。
「その人神様を離せオーロザウラ!」
【浄破邪、封神力、魂縛! コミコミ封乱悪牢!】
鋭く飛んだ光矢がキメラ魂男神の背に消えた。
【彩桜?】【破弾!!】 『ぐおぉう!』
【青生兄の真似っこ~♪ 中に留めたの~♪
入ってられなくなるからフツーのお願い♪】
【うん。術光矢封乱悪牢!】放つ!
光矢が届く頃には黒霧の塊のような人神がキメラ魂を蹴落としていた。
【ボクが行くから!】
【昇華闇障暗黒、激天特大闇呼吸着!】
闇呼玉を突き出した。
神力は封じられているし、悪足掻きしようが魂縛されているし、光矢にも押されている。それでもオーロザウラは逃れようと必死だった。
【んもぉ、素直に入ってなの~。
仕方にゃいにゃ~ん。浄禍万華掌!】
蕾を発射。
【パクッ♪ 捕まえた~♪】
再び蕾になると真っ直ぐ闇呼玉へ。
【堅固】【紅火兄ありがと~♪】
『この共鳴……我が神力に戻してやる!』
封じられても騒がしい。
【させにゃいも~ん♪ 相殺消音♪】
そもそも術を省略や短縮できる程の神力を持っていないオーロザウラには消音だけで十分だったようだ。
八方塞がりになったらしく怒りだけを膨らませている。
【ソレも不穏だよねぇ。夢幻爆眠!
でも後で利用するから永久はダメだよねぇ】
その間に紅火はサーロンの方に行っており、キメラ魂を保護して戻った。
【何をしている?】
【神力状態 見てるの~♪
そのヒトからも吸い取ったみたい~。
禍神じゃにゃくて蚊神だったみたいなの~】
【彩桜ってば♪】【ふむ……】
【彩桜? 戦っているの?】
【青生兄だ~♪ 終わったトコ~♪
悪神オジサン脱走したの~♪】
慌てた様子のラピスリが現れた。背には青生。
【捕まえたよ~ん♪ あ……】迫って来てる?
【うん。人世に残っていた分を呼び集めたみたいだね】
【残ってたの、犬と猫ばっかり?】
【そうみたいだね。アフターケアは動物病院でやるよ】
【あ~、人に近づき易い動物さん選んだって~。
魂材の中、移動できるみたい~】
【人に近づいて魂片を込めて拡散。拡大化ね。
でも最近は増やせていない……阻止された?
忌々しい音楽って、もしかして俺達が阻止していたのかな?
それならこれで人に入っていたのや込められたのは回収しきったという事だろうね】
【うんうん♪ 来たから集める~♪
封神力闇呼万華掌連射!】
【術光矢【封乱悪牢!!】】
【重圧縮激天大闇呼吸着!】
動物達に意識は無く、オーロザウラの魂片が強引に動かしているので四肢の動きと移動速度が合っていない。
随分と怪我をしているので、これ以上はと急いで闇呼玉に回収した。
【万華掌、不穏禍呪強吸着!
闇呼吸着クレッシェンド!
【圧縮激天魂護闇吸着!】
あ♪ ランちゃん来てくれた~♪】【うん♪】
悪神魂片は蓮華に捕まえてもらったまま闇呼玉に残して、動物達だけを虹光を纏う白っぽい闇呼玉に移した。
両闇呼玉をジッと確かめる。
【瑠璃姉コッチお願い。
青生兄 紅火兄、コレとキメラ魂様お願い。
サーロン ランちゃん、お稲荷様トコ行こ】
ラピスリには悪神魂片入り闇呼玉を、青生には白闇呼玉を渡して、彩桜はサーロンと紗を連れて瞬移した。
瑠璃は細かな魂片が沢山入っている闇呼玉を手に、神世へと術移した。
【青生、神王殿は?】
浮空の術を維持している紅火が寄った。
【黒瑯が分身も使って準備中だよ。
行かないといけないけど……兄さん達を呼ぼうかな?】
青生は当然ながら翼で飛んでいる。
【藤慈も呼ぶべきだ】紅火は行く気満々。
【そうだね】
―◦―
彩桜達はオフォクスとフェネギを連れて社に戻り、ガネーシャと飛鳥とユーロンも一緒に浄化と治癒で包んだ。
【狐儀師匠が悪神 追って、お稲荷様は悪神に引っ張られたキメラ魂様 追ったの。
ガネーちゃ師匠、悪神から抜いた神力に込められてた罠で禍浴びちゃってぇ。
飛鳥とユーロン、悪神の落としっ屁になの。
ぜ~んぶ滅禍しなきゃなのぉ】
【彩桜、そんなに拾知してて大丈夫?】
【お腹空いた~】【ほらよ。デザートだ】
【リーロンありがと~♪ レストランは?】
【ウケモチ様にお願いした。
神王殿の、始まってるんじゃねぇか?】
【でもねぇ――】【後で来いよな♪】【白久兄?】
【兄貴と藤慈と行って演奏しててやるからなっ♪】
【ありがと~♪ 金錦兄と藤慈兄もありがと~♪】
【お稲荷様と狐儀を頼んだぞ】【うん!】
紅火が戻った。
【あれれ? 行かなかったの?】
【俺は彩桜と共に行く。
それまではリュニロゥ様に集中する】
【その古い神様、誰か分かったの!?】
【金錦兄の魂材神様の御子息だ】隠し社へ。
【……術学者さんだ……紅火兄 頑張って!】
【無論だ】
彩桜の前に龍狐女神の姿をした水晶が浮かんだ。
【ほえ?】
【青生から預かった。
アミュラ様からドラグーナ様への手紙だ。
魂核を持つ彩桜へと】
【ん。ドラグーナ様、起っきて~!】
―・―*―・―
この日、神王殿に集められたのは中級伯爵家の第11~20位までだった。
上位になればなる程、財産や領地に比例して一族が多くなるので、前日よりも大広間は貴族神だらけになっていた。
兄弟が奏でる美の極みな弦楽に包まれての食事が優雅に進む中、姿を消して天井近くで待機していたマディアが降下した。
〈共鳴は弱く、少ない。が……〉
〈視線で示して頂ければ十分です〉
〈ならば……〉通過しつつ視線を留める。
〈どうやら学校で伝染されたようですね。
欠片は眠っています。
家族やらに伝染すのは未だみたいですね。
続けてくださいね〉
より上位の貴族に近付くのは子供であっても難しいようだ。
これなら上級伯爵家は もっと少ないだろうと、青生は少しだけ安堵できた。
【彩桜。予想通り上位の貴族神様には少ないよ。
だから摘出も早く終わる。
予定通り連れて来てね】【ん】
―・―*―・―
思念アミュラからの手紙にはカイダクルとカーリザウラを半龍神として強化し、協力させるよう書かれていた。
保護珠は彩桜の魂内にあるので、彩桜は外に向けての浄化や治癒に専念し、ドラグーナは内に向けての強化に専念した。
【意外と別行動が容易になっているね。
あとは離れられたらいいんだけど……】
【今は肉眼で見える範囲だもんねぇ】
〖それでしたら私と結婚の絆を結べば可能です♪〗
【【スタリーナ】様だぁ】うわわわわ~。
近くなのかと探したが、アトリエで竜騎が夕香と腕を組んで瞬移を阻止していた。
〖双子なのですから♪〗
【まだ神力が不十分だし、俺の妻はアルボネーアだよ。
他の妻なんて考えられないから、その方法は却下ね】
〖押し付けられたと聞きましたのに……〗
【確かに最初は そうだったよ。
でも今は本当に夫婦だからね】
〖ですが分岐しています!
強化の為、それのみでもよいのです!
お兄様のお役に立ちたいのです!〗
【この先、本当に好きになる相手が――】
【現れません!】
(ねぇねぇドラグーナ様ぁ、ナンか限界突破?)
(したみたいだね)
(ホントに大好きみたいだよ?)
(それでも俺は……)
(それに時間的にも~)
(だろうけどね。でも妻には……無理だよ)
(ソレは……うんうん。だよねぇ)盗み聞きしてるねぇ。
【ね、スタリーナ様♪】【【聞こえていたの!?】】
【ぶつぶつ聞こえてたよ。
俺達のも聞いてたでしょ。双方向だよ。
あのね、先に称号調整してもらうの、どぉ?】
【称号? どうして?】
【静寂の女神様なのに~騒がしいもん。
ドラグーナ様に鬱陶しい思われちゃうよ?】
【!? ……どうすればいいの?】
【後でアミュラ様トコ行こ♪】【アミュラ様!?】
【うん、アミュラ様。
先にお願いしに行きたいから、お社で治癒と浄化お願いしま~す。
竜騎も一緒ね。悟も聖良さんと来て~】
返事があり、4人が用があると勉強会から抜けて瞬移して来た。
彩桜とサーロンを見て忍装束になる。
【浄化、滅禍、治癒どれも必要なの。
お願いなのぉ】
【おう。どれも得意だからな、任せろ】
【キャンプー様は?】
【呼んで一緒にお願いね♪】【ん? 兄様!?】
【理俱師匠も来た~♪】【何があったんだ!?】
【サジョール様も治癒とか得意だから沙織さんも連れて来て~】
説明は後なのだろうと解して理俱は瞬移した。
【サーロン、みんなに説明お願~い】【うん】
【紅火兄、行ける?】【行こう】【ん】
彩桜は紗と手を繋いで隠し社経由で神世へ。
理俱と沙織の到着を待って、サーロンは話し始めた。
―・―*―・―
神王殿に着いた彩桜達は楽団の後ろで待機し、曲が変わるタイミングで青生と瑠璃が抜け、紅火と紗が加わって演奏を続けた。
青生 瑠璃 彩桜は姿を消して椅子下から魂片摘出と吸着を始めた。
【彩桜、悪神は?】
【爆眠維持してるよ。
カイさんとカーリが押さえつけてる】
【かなり龍神様が強くなったね】
【うん。龍神様なれるよ♪
ちゃんと獣神様なの~♪】
【リュニロゥ様は?】
【まだまだだけど、コッチ終わったら集中するから早い思うの~♪】
【今夜も当番じゃないから兄弟揃って集中しよう】
【うんっ♪ リュニヴェ様も一緒~♪】
【そうだね。これからに関して大きなヒントが貰えるかもしれないね】
【うんうん♪ 術学者さんだし~♪】
【そうなんだ。頑張ろうね】
【うんっ♪ コッチ側 終わったよ♪】
【うん、俺も終わったよ】【私もだ】
【じゃあアミュラ様トコ行こ♪】
悪神が脱走してしまいましたが、彩桜達は転んでもただでは起きないタイプなので、前に話していたように脱走悪神に呼び集めてもらって人世の悪神魂片を全て回収しました。
もちろん悪神が他の神様を持っていないかはシッカリ確かめています。




