表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/870

シアンスタ



 瑠璃鱗の龍は彩桜の前に寄り、微笑んだ。


〖彩桜。私の父の欠片を持つ、人の子よ。

 私は瑠璃の内に在る龍、ラピスラズリ。

 男神でも女神でもあるが故に、女神の時はラピスリと呼ばれている。

 声も似ているので驚かせたな〗


「そっか~♪

 瑠璃姉の神様カッコイイ~♪」


〖ありがとう。

 彩桜の神様は、とても美しく強い。

 お目覚め頂く為に此処に来たのでは?〗


「そぉなの? お稲荷様?」


「其の通りだ。

 だが、彩桜の前にハムスターにされてしまった龍神を解放しようとしておったのだ」


「そっか~♪

 龍神様このままじゃ困るもんねぇ」


「理解してくれたか」「うんっ♪」



〖古の四獣神様。

 そのハムスターは私の兄、シアンスタ。

 どうやら力と記憶を抜かれた上、分割されている様子。

 尾を見つけるが先に為すべき事と存じますが、如何でしょうか?〗


《よくぞ其処まで。

 流石、ドラグーナが大切にしておったラピスラズリだな》


《入った時に、よ~く分かったよ。

 と~っても強いよねぇ。

 ずっと此処に居てもらいたいねぇ》


《さておきじゃ、シアンスタの尾は何処じゃろうのぅ?

 オフォクス、見てくれぬか?》


《もう目ぇ瞑ってるよ、亀爺さん♪

 月からなら直ぐ見つかるだろ~よ♪》


《では待つ間に。

 ラピスラズリ、月でならば保てるのだな?》


〖はい。万全では御座いませんが、神世、人世よりは遥かに楽で御座います。

 大半 重なっている瑠璃も助け支えてくれますので〗


《ふむ。

 では、シアンスタの状態、如何に見る?》


〖私は幼い頃、この兄の同代の家に預けられておりました。

 ですので力量は よく存じております。


 封じ留めておくには強過ぎる。

 堕神とするにも強過ぎる。

 故に父と同様に分割し、その魂の内に封じられる限りを封じ、余剰は記憶と共に別の場所へ。

 分割は2または3。

 父の場合は、総力を挙げて7分割を成し得たのでしょうが、そこまでは力を注げなかったのではないでしょうか。


 小動物であれば回収は早い。

 ハムスターの魂の内で眠っている間に浄化し得ると考えたのではないでしょうか。

 しかし、その考えは甘かったようで、兄は目覚め、己が何者であるのかは分からずとも助けを求め、ひた走ったのではないでしょうか。

 ……全て、証拠も何も無い、ただの憶測でしか御座いませんが……〗


《その通りだろ~よ♪

 野生のカンが、そうだと言ってるよ♪》


《白虎の勘は当たるからのぅ》《だよねぇ》


【玄武様、御力をお願い叶いますか?】


《らしきものを見つけたのじゃな?》

オフォクスに寄った。


「お稲荷様が亀!?」


玄武は笑って入った。

《ふむふむ。オフォクスも凄いのぅ。

 尾は保魂域じゃ。

 胴も目覚め、走っておるわぃ。

 力と記憶は儂にも見えぬ場所らしいのぅ》


〖では、胴を早く保護せねばなりませんね。

 彩桜を先に。如何でしょう?〗



―・―*―・―



 シアンスタの胴は――


〈ホウジョウ、そっち行ったぞ♪〉


――夜の港町を北に向かって疾走していた。


〈話し掛けてみたのか?〉


〈い~や、飛翔じゃなさそうだからなっ。

 妙チキリンなリスだが害も無さそうだし、追跡だけでいいんじゃないかぁ?〉


〈リスが乗っていた船は?〉


〈漢中国からの貨物船だな〉


〈だから話していないのだな?〉


〈ん?〉


〈漢語〉


〈いやカンケーないだろ。

 魂で話せば何語だろーがよぉ〉


〈ふむ。見えた。話してみよう〉



 ホウジョウは、疾走するリスの前で姿を見せた。

〈止まれ〉


〈えっ――〉止まり、後退(あとずさ)る。


〈止まれ。何者だ?〉


〈それが知りたいのです。

 船が着いた港から真っ直ぐ北の山にいらっしゃる孤狐(ココ)様ならお教えくださると、(タォ)様と名乗られたユーレイから伺ったのです〉


〈ふむ。キツネ様の事だろう。

 漢中国では、そう呼ばれているのだな?

 稲荷山にいらっしゃるとも限らぬらしい。

 キツネ様の御友人に会わせてやろう〉


〈ありがとうございます!〉


己が手を睨み――〈具現化〉

そして差し出した。〈乗れ〉




 港町と街を繋ぐ霊道を通り、サイオンジ公園へ。

サイオンジとナンジョウが話していた。


〈お♪ リス捕まえたのか♪〉


〈誠実そうな若者だ。

 乗ってもらっただけだ〉


〈キツネ殿に用事かぁよ?〉〈はいっ!〉


〈遠路遥々なぁ。頑張ったなぁよ。

 ついさっきまで留守だったが……今なら山の社に居るようだなぁよ。

 狐儀殿、来てくれるかなぁよ?〉


〈畏まりました〉


――と、返事は狐儀の声だったが、人姿のキツネが現れた。

〈サイ、有り難う〉


〈見つけたのは弟子達だぁよ〉


〈然うか。有り難う〉

ナンジョウ ホウジョウに礼。


〈いやいや何もっ〉

〈お願い致します〉リスを渡した。


〈キツネ殿よぉ、そのリスは?〉


〈龍神の子だ。

 元に戻さねばならぬ〉


〈これからは小動物にも気をつけるだぁよ。

 皆も頼むなぁ〉

〈すまぬが頼む〉


〈〈はい。お師匠様、キツネ様〉〉



―・―*―・―



 その頃、キツネの社では――


【オニキス、青生様と彩桜様は何故?】


――サイオンジに声を掛けられた狐儀がキツネを呼びに来たまま居た。


【オフォクス様から見ててくれって頼まれただけで訳も何も知らねぇよ。

 眠ってるだけだとよ】


【私には何も……】


【オレの父様だからなっ♪】


【確かに、そうですね】


【力丸は? 放ったらかしでいいのか?】


【ぐっすり眠っていますよ】


【そっか。

 ナンかなぁ、父様が目覚めたんじゃねぇかって感じたんだよな。

 今もコッチ眺めてるような気がするんだ。

 分けられてっから完全には、まだまだ先なんだろーが、一歩前進なんじゃねぇかってな♪


 オフォクス様、父様の為に奔走してくれてるんじゃねぇかなぁ……】


【そうですね。

 心の友だと仰っておられましたからね】


【オレ達でも、同代が封じられちまったら力合わせて奔走するだろ?】


【しますね】ふふっ。


【ここんとこウンディが飲んだくれてたの知ってるか?】


【いいえ。戻ったばかりですので……】


【だったな♪】リグーリとは話してねぇな。


【其方も何かあったのですか?】


【原因はショウが死んだコトだ。

 だから酔ったまま車に乗って死のうとしたらしい】


【えっ?】神なのに?


【アイツ、ガッツリ無自覚だからな。

 で、とうとうラピスリが連れて神世に行ったらしい】


【神力射は!?】


【ミルキィとチェリーが空見てっけど、落ちてこねぇらしいから無事に着いたんじゃねぇか?

 マヌルヌヌ様トコじゃねぇかなぁ。


 ラピスリにとっちゃあ、すぐ下の弟だ。

 フェネギにとってのリグーリと同じだ。

 命懸けだろーが行ってトーゼンだろ?】


【そうですね……】


【ラピスリなら心配しなくていいと思うぞ】


【ですが――】


【ナンかなぁ……アーマル兄様より上?

 つーか、姉貴じゃなくて兄貴? みたいな?

 ナンだかオレ達とは違う気がするんだよな。

 確かに父様の子だとは思うんだがな】


【また、勘なのですよね?】


【カンだけどな……コレもカンでしかねぇけどな、ラピスリは何か隠してる。

 独りで背負ってるんだよ。

 オレはソレだけは確かだと思うんだ】


【それは……私も感じます】


【だろ? けど、いつ背負った?

 ずっと同代と一緒に居たろ?

 離れたのはマディアだけだったろ?】


【欠片持ちが如く、神様を内包している?】


【神が神を!? ナンでっ!?】


【あくまで可能性です。

 もしくは再誕】


【サイタン?】


【生まれ直す事です】


【そーゆーコト出来るのか?

 詳しく教えろよな】



―・―*―・―



 オフォクスは月に戻っていた。


「行ったり来たり平気なんだ~♪」ぴょん♪


「今は已むを得ぬだけで――」


「ガンガン行き来してねっ♪

 シアンスタくん感動の再会だよね~♪」


カーマインとプレリーフの掌に乗ったハムスターとリスが抱き合って泣き笑いしていた。


「ラピスリは?」


「マディアに会うって行っちゃった~♪」


「ふむ……」


「今ならイッチバン安全でしょ♪」


「確かに……」


「オフォクスって~、そんなに心配性だった?

 それとも~、娘?

 ソックリに育ったよね~♪」


「……否、娘とは……」


 確かに儂の欠片も入っておるが、

 然う言う意味ではイーリスタ様も――


「あ♪ もしかして――」「違う!!」


「何がぁ?♪ 僕まだ何も言ってないよ?

 ねぇねぇ何が違うの~?♪」


「人世に戻ります」


「答えてよぉ~♪」


「帰る!」消えた。


【もっかい来てね~♪】【限界ですので!】

【シアンスタど~するのぉ?】【うっ……】







輝竜兄弟はキツネと狐儀が人姿でも狐姿でも平気です。

見慣れていますので。


世界中を飛び回る両親に代わって兄弟を育てたのは、人姿のキツネ・稲荷(いなり) 厳狐(げんこ)と、その甥で弟子の稲荷 狐儀なんです。


キツネは、キリュウ夫妻を支援し、兄弟を育てるには人世の金も必要だと、それと人世に来た本来の目的である堕神や欠片持ちを集める為にも店を開きました。


今は紅火が居る店の座敷でキツネが祓い屋道具を作り、狐儀が売る。

そうして生計を立てていたんです。


稲荷さんなので兄弟は感謝と敬意を込めて『お稲荷様』と呼んでいるんです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ