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地下牢の伯爵達



【ねぇねぇ瑠璃姉、貴神殿の前王様トコ行きたいのぉ】

神王殿を出た所で彩桜が申し訳なさ気に言った。


【何か拾ったのか?】


【違うよ。前王様にも災厄の伝えたいの。

 地下で我慢してて言いたいの。

 ちょっとでもラクしてあげたいのぉ】


【ふむ。行こう】【うん♪】



―◦―



 そして深い深い地下牢に入り、前王の真上。

向かい合って座った青生と彩桜は床に両掌を当て、瑠璃と紗は支えようと夫の両肩に手を添えた。

【まずは治癒と浄化ね】【ん】強く注ぐ。



【次は解呪だよ】


【でもコレ……】


【うん古の呪をダグラナタンがアレンジしているよね。

 前は解ききれなかったけど、それでも周りから崩していけると思うよ】


【ん。頑張るの~。あ、また神力封じある~。

 奥から浮かび上がったのかにゃ?】


【先に解いてもらえる?】


【すっごく絡んでて……弱禍? 弱禍ある!

 昇華光明煌輝、滅禍浄破邪、全解還封神力!

 光撃闇障闇化、白闇呼吸着クレッシェンド!】


光も闇もな彩桜だからこその虹光を纏う闇呼玉を前王の真上に浮かせ、解還で破砕した呪と神力封じの残滓と、滅禍浄破邪で絡まりが緩んだ弱禍と不穏禍やらを、強さを加減しながら吸着していった。


【ありがとう彩桜。

 浄破邪と吸着の維持をお願いね。

 昇華光明煌輝、浄回復治癒、軽復輝降臨】

先ずは体力的なものも含めての神力を回復させ、続けて瑠璃と声を合わせて解呪を唱え始めた。



 拾知と相談しつつ術を決め、3つ唱え終えた。

次を決めようとしていた時――


〖ありがとう。随分と楽になったよ〗


――まだ反響する感じは残っているが以前に比べれば遥かに明瞭な前王の声が聞こえた。


【あのね、まだ出してあげられなくて、ごめんなさいなの】


〖気にしないで。グレイは元気かな?〗


【元気だよ♪ 昨日も今日も会ったの~♪】


〖それならいい。私はまだまだ待てるからね。

 元気にしてもらえたし話せるようにしてもらえたからね。

 私は十分だから他の4神をお願いするよ〗


【はい♪

 あのね、もぉ少ししたら すっごく揺れると思うの。

 此処、頑丈だから崩れないの。安全なの。

 その後で外に出られるの。

 あと1ヶ月もない思うの。

 だから我慢してなのぉ】


〖ありがとう。それを伝えに来てくれたのだね。

 確かに頑丈そうだね。

 待てるから心配しないでね〗


【うん♪ じゃあまた来る~♪】闇呼玉回収♪



 他の4神にも同様に回復をして解呪を進め、揺れるけれど安全だから待ってくれと話すと、見張り兵から離れようと飛び始めた。

【ん? ん~~~~~】ふよふよふよよ~。


【何処へ行く?】【サクラお兄ちゃん?】

【青生まで……何を見つけた?】


【うん……とても微かな……神力かな? 生命感?】

【うんうん。誰か居る? でも……もっと上?】

【天井から探ってみようよ】【うん♪】

そこそこ高い天井に寄って両掌を当てた。



【うん。やっぱり誰か居るよ】

【そうだね。消えそうな灯火みたいに弱々しいけど、確かにね】


【どの層だ?】


【たぶん~、1つ上。その真ん中くらいの階。

 その層、コッチより弱いから崩れちゃう】


【行くしか無かろう。乗れ】


【うん♪】【ありがとう瑠璃】各々、妻の背に。



 階段と転送口(ワープホール)しか利用していない層なので、詳しく調べようと術移は使わずに飛んで行く。

【上下の層や、この層の他の階も探すのだな?】

貴神殿の地下牢は三層構造。今は真ん中の層。


【【そうしたいんだけど……】】


【ん?】


【たぶん~、このヒト見つけたら戻らないと助けられないのぉ】

【貴神殿の地下として在る層は新しいから崩れずに、下に押し込まれるのかな?

 その分、脆くて押し込まれるのにも耐えられない この層は潰されてしまう。

 前王様の層は古い神様が造っただけはあって頑丈だから残るんだよ。

 だから見つけてもらえる。そんな感じかな?】


【ふむ。貴神殿の最下層として発見されるのだな?】


【そんな感じ~】


【ならば この層の他の箇所は出直すしか無かろう?】


【ありがとう瑠璃】

【ん? 黒瑯兄と紅火兄は?

 瑠璃姉、連れて帰ってないよねぇ】


【それこそ兄弟なのだから探してくれ】


【うん!】

【見つけたよ。神王殿の地下牢。

 心話は無理みたいだけど……】拾知。


【アッチも行かにゃいとなの~】拾知していた。


【向こうでも誰か見つけているみたいだね】

【うんうん。あ! この上!】

通路なので各々が違う斜め上を見ている。

どうやら向かい合う2室に収監されているようだ。


【ランマーヤ!】【はい!】手繋ぎ術移。



 真上の通路に出、これだけ離れれば神力を使っても最下層の見張り兵達に気付かれる事は無いと、扉を消して入る。


【こんなにも……】


【瑠璃】【ランちゃん【お社に運んで!】】



―・―*―・―



【お~い紅火。

 無言は いつもの事だがなぁ、今くらいはナンか言ってから離れろよなぁ】

天井近くの壁を蹴りながら飛んで来た。


【此処に誰か居る。複数だ】掌握で探り中。


【ったく神眼妨害ハナハダシイったって!

 そのドア壊してやる!】八つ当たり甚だしい。


【ふむ】離れた。


【壊していいのか?】


【牢として使っている場所ならば見張りが居る筈だ】


【そっか♪ そんなら――】遠慮無用だっ!♪

具現化した牛刀でブッタ斬った。

【切れるなっ♪ 微塵切りだ♪】両手に牛刀♪


楽しそうな黒瑯が切り刻み、破片は落ちて音を出す前に紅火が消していく。



 そして中へ。紅火がランタンを具現化した。

【うわ……】【む……】

一瞬だけフリーズしたが浮かんだまま入った。


【けど……】死屍累々ではなく【生きてるぞ!】


【うんうんコッチもだねぇ】

【同じ一族の方々かな? とにかく貴族様だね】


【彩桜♪】【青生……】


【副都の地下にも大勢いらっしゃったんだ】

【お稲荷様トコ運んだの。コッチもなの~】

【呑気に話している場合か! 運ぶぞ!】



―◦―



 兄弟がラピスリとランマーヤに乗せる。

即、取り込んで術移。

それを繰り返して、最速で全てを社に運び終えた。



 治癒と浄化で生きている神らしく戻った頃、

【今度は誰だ?】

見るからに人神の貴族なので、怪訝顔のオフォクスが彩桜を捕まえた。


【そんなに古くない貴族様~。

 あ、そっか】

〈オーラタム様~、オーノさ~ん!〉


 別方向から急いで来た。「前宰相様!?」

オーノマイトナールが老神に駆け寄った。


「かなり新しい方々ですが、存じております。

 私は ほぼ眠らされておりましたが、時折 神世を眺めておりましたので。

 それと妻の記憶も見ましたのでね。


 あちらは宰相をなさっておられた第3伯爵家のマルトナタン様です。

 ああ、あの向こうには前の第3伯爵、ダルクナタン様もいらっしゃいますね」


「今は?」


「ダルクナタン様のご子息、ダミスナタン様が継いでおられますよ」


「ナタンナタンナタンてダグラナタンの?」


「神世を乱した男神(おとこ)ですね?

 そうですね。彼は第3伯爵家の者でしたね」

『第1伯爵様まで!?』

「確かに。

 今はナターダグラルですが、それは第1伯爵様が行方不知(ゆくえしれず)となられた為。

 その地位を欲して――」

『第4伯爵様までもが!?』

「――そうですか。

 死司最高司の座も同じく得たようですね」


【彩桜、真相を拾知しねぇのか?】

【んとねぇ、ダグラナタン、改心してたから……】

【けどなぁ。この事はダンマリだったんだろ?】

【そぉにゃんだけどぉ】【彩桜、雲地に】【行く!】

黒瑯から逃げてランマーヤの背に。

ラピスリとランマーヤは術移した。



「ったく~。

 お~いオーノさん、誰が誰なんだよ?」


「あっ、はい! 以前の第1伯爵家と第4伯爵家の皆様。

 第3伯爵家の先代、分家を含め主だった方々です!

 皆様のお名前が必要でしょうか?」


「アタマだけでいいよ。

 全部なんか聞いてたら朝になっちまう」


「はいっ!

 第1伯爵様は浄化最高司をなさっておられましたチャコーリスト様です。

 第3伯爵様はダルクナタン様。

 その弟様はダルクナタン様から継いで宰相をなさっておられました。

 第4伯爵様は死司最高司をなさっておられましたアークハーマル様ですっ」


「ふ~ん。で、消えたのは いつ頃だ?」


「50……60年くらい前でしょうか……あっ! ティングレイス王の即位直後です!

 最初は第3伯爵様と前宰相様で、第1伯爵様、第4伯爵様と続きました!

 次々とでしたので、他の伯爵家は、次は自分の家かと恐れて閉じ籠っておりました。

 その間に王とナターダグラル様が話し合われて、ナターダグラル様が第1伯爵に、第5伯爵家以下は繰り上がりましたのです。

 私も第10から第9に上がりました」


「そっか。またナンか思い出したら話してくれ」

【紅火、どう思う?】


【ふむ……治癒と浄化は大神様方にお願いした。

 帰って話そう】


【だな】

「ありがとな。戻って休んでくれ」


「私も治癒に加わります!」「では共に」「はい!」

オーラタムとオーノマイトナールは治癒に加わった。



―◦―



 帰宅した黒瑯と紅火は兄弟を集め、神王殿での食事会と地下牢に監禁されていた貴族神達の話をした。

「青生も彩桜も、ダグラナタンが改心してるからって拾知してくれなかったんだ」


「拾知は、していたのかも知れん。

 話せなかったのか、先に雲地に行くべきと判断したのかだろう」


「紅火ぁ、ソレ向こうで言ってくれよなぁ」


「む……」

「黒瑯は、焦ってた俺に さっきの紅火と同じよ~に言わなかったかぁ?」


「あ~~~、だな。スマン紅火。

 で、金錦兄 白久兄、どう思う?

 どうすりゃいい?」


「ま、俺達に出来るのは救出した神様を回復させるくらいだろ~なぁ。

 災厄はヒタヒタ近付いてやがる。

 神様は多けりゃ多い方がいいだろ~からな。

 今から演奏しに行くかぁ? なぁ兄貴?」


「ふむ。では――」【兄貴達もお願いなのっ!】


考え込んでいた金錦が話そうとした時、兄弟は現れたラピスリに連れ去られた。







青生と彩桜も、黒瑯と紅火もガンガン神力が高まっていますし、前は より強い人神サマルータ様やマルトニル様達の神力に隠れて見つけられなかった瀕死の人神達を助け出すことができました。


誰なのかが分かったところで雲地に行った彩桜達。

兄達も巻き込むようですね。



―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―



ダグラナタンが変える以前

第1伯爵 チャコーリスト浄化最高司

第2伯爵 シャーナルカイト再生最高司

第3伯爵 ダルクナタン(ダグラナタンの父)

第4伯爵 アークハーマル死司最高司

 (中略)

第10伯爵 オーノマイトナール


現在

第1伯爵 ナターダグラル死司最高司

第2伯爵 シャーナルカイト再生最高司

第3伯爵 ダミスナタン(ダグラナタンの弟)

第4伯爵 前の第5伯爵

 (中略)

第9伯爵 オーノマイトナール

※第4伯爵以下は全て繰り上がったが下位の空席は暫く放置。

 その後、悪神憑き第9伯爵が埋めた。



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