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どんどん蔓延る悪神



 翌日は火曜日。期末テストは数学と保体。

彩桜にとっては、どの教科であろうがテスト時間の9割以上が退屈なだけなので、同じく暇を持て余しているサーロンと心話していた。

【彩桜様、今はお喋りの時間ではありませんよ】


【狐儀師匠も考えてよぉ。

 悪神の欠片、すっっごく散らばってるの。

 貴族で第9伯爵の手下してた親からだけじゃなくて友達とかからも伝染(うつ)ってるの。友達じゃなくても学校で伝染るみたいなの。

 お屋敷に出入りしてるヒトもなの。

 お屋敷で働いてるヒトもだと思うの。

 どしたら全部回収できると思う?】

【彩桜は敵神と悪神の親子共鳴を利用して、王様の所に集めた貴族神様から回収したみたいなんです。

 でも追いつかないって……】


【そうですか……本当に伝染病の如くですね】


【悪神魂片ち~っちゃいから近づかないと親子共鳴も弱いのぉ。

 都の上からとか無理なのぉ】


【昨夜は そちらの方で動いていたのですか?

 オリュンポスの大神様の方は?】


【逃げちゃったのぉ。

 追っかけてたら悪神団体さん襲撃だったのぉ】


【大地の女神様がいらっしゃるでしょうに……】


【そぉなんだけどねぇ――あ……】忘れてた!


【彩桜様?】【どうしたの?】


【オリュンポス神様 居る雲間、逃げるから悪神も居るの! 確定なのっ!

 きっと おっき魂片だからソレに微細魂片吸着!

 できるよね狐儀師匠?!】


【確かに……可能だとは思いますが……】

【それって強い悪神が出来上がるんじゃない?】


【あ……闇呼玉、割られちゃうかも~】


【だよね】【そうなりますよね……】


【でもね でもねっ!

 人世にも残ってる思うの!

 人世だったら大神様いっぱいでしょっ!

 雲間ごと連れて来てガッチリ封じてもらって人世のも神世のも集めたらいい思うのっ!】


【その……人世に連れて来た結果が災厄なのですか?】


【ソレ…………ううん、違うみたい~。

 拾知、震えにゃいのぉ】


【では午後にでも、その方向で作戦立て致します。

 彩桜様は神世の欠片を可能な限り減らしてください。

 サーロンは社に来てくださいね】


【うん!】【はい!】



―◦―



 そして午後。

彩桜達は前日同様、神王殿の大広間に居た。


 神世の伯爵位家は上級10家と中級家で構成されており、現在は中級が22家の合計32家となっている。

この日に集められたのは第21伯爵家以下で、かつての悪神憑き第9伯爵に引き上げられた形の第29伯爵家以下は悪神入り確定だと、演奏している青生と彩桜は神眼で監視を続けていた。


 伯爵神と言えども今時の人神なので神力は大したものではなかった。

なので前日と同様に、食事会が始まるとマディアに乗ったザブダクルが姿を消して確かめ始めた。


〈昨日よりも多く、共鳴も強いのだが……〉

既に疲れたと言外に込めてザブダクルがぼやく。


〈うん。下の方、手下だったから~〉


〈知っておったのか?〉もう泣きそうだ。


〈伯爵は入ってる思うの。

 でも家族さん親族さん、どこまでか分からないのぉ。

 眠ってたり隠れてたりだから頑張ってなの~〉


〈ふむ……〉



 貴族は一般神とは違い『食事』を知っているので、前日のような横並び一列でお手本を見る必要は無く、家毎に大テーブルを囲んでいる。

なのでマディアはグル~リとテーブルを一周しては次のテーブルへと動いていた。


第27伯爵家を確かめていると、ザブダクルはハッとした様子で隣接している第25伯爵家の方をサッと向いた。

そして目を見開き、

〈声がっ!!〉

叫んだのでマディアは天井近くに逃げた。


第25伯爵が ゆらりと立ち上がり、椅子が音を立てて倒れた。


即座に今○○達が動く。


『愚かなザブダクルよ――』「そこまでねっ♪」

言い切る前に今ブルーと今チェリーが連れて消えた。

今ピュアリラと今カミュラは次に立とうとしていた第29と第32伯爵を連れて消えた。


騒めきが広がる中、数神が立ち上がる。

と同時に黒く染まる。

しかし目は虚ろで、今にも倒れそうに揺れている。


【まだ完全に目覚めてないよ!

 黒瑯兄 紅火兄お願い!】

【行くぞ紅火!】【む】

コックコート姿の忍者達が駆け抜ける。

その両手には闇呼玉。

立ち上がった者達の悪神魂片は目覚めているが、まだ十分に動ける状態ではないので易々と吸着していった。


調理場所に戻ると、まだ次々と立ち上がろうとしている。

【どんだけ居るんだよ!】ついつい。

既に紅火は走っていた。

【置いてくなっ! ゲ!】


中央に近い位置の若神が上に向けて禍を投げた。

マディアは避けたが次々と若神達が投げている。


【コイツら飛べねぇから外に逃げろ!】

跳んで禍の群を吸着、天井を蹴って調理場所へ。


【はい!】()けて()けて瞬移!


その間に紅火は吸着可能な欠片は抜き、そうでない場合は堅固で動きを封じて回っていた。


【終わっちまったのか?】


【眠っている欠片、今は動くべきではないと判断した欠片は残っている筈だ】

【固まってるヒト達、貰ってくね~♪】

一瞬だけ見えた今チェリーが網を投げて(さら)って消えた。


【攻撃は終わったみたいだな】

敵神(ターゲット)が居なくなったからな】



 王が立ち上がった。

「説明しますのでご静粛にお願いします」



―◦―



 彩桜達の方は闇呼吸着と摘出を並行して進めていた。

【どして男神ばっかり?】


【女神様は魔女にと考えているんじゃないかな?】


【そっか~。絶滅したの知らないんだ~】


【たぶんね。

 男爵・子爵の場合は込められた欠片が小さかったから支配は使えなかったみたいだけど、伯爵の場合は子息が禍を投げるくらいだから使える大きさなんだろうね】

前夜の先鋒は第25伯爵の息子だった。


【じゃあ奥様達って……】


【これも たぶんなんだけどマナライティア様と同じじゃないかな?

 瑠璃、摘出が終わったら俺と彩桜だけで広間に戻るから、後をお願い】

【ふむ。任せろ】


【ランちゃんは器さん達の眠り維持お願いね】

【うん。任せてね♪】



―◦―



「――ですから入り込まれた方に罪はありません。

 地位や財産なども現状のままですので安心してください。

 では悪巧みをしている者が潜んでいないかを調べさせてもらいますね。

 第1伯爵様、お願い致します」


 今度は堂々とナターダグラル入場。

いや、マディアに支えてもらっている。

人神は歩くのをステイタスかのようにしているが、どうにもこうにも震えてしまうのでローブで隠れているのをいいことに浮かんでいて、移動はマディアに任せているのだった。


「第1伯爵ナターダグラル様は死司最高司もなさっておられます。

 全神力(ぜんりょく)で悪者の欠片を探す為に、移動などは補佐である私、死司最高司補エーデラークが務めさせて頂きます」

宴に似つかわしくない黒装束(ローブ)である理由、支えている理由は理解してもらえた。



―◦―



 魂片が眠っていようが隠れていようが親子共鳴は起こってしまうものなので、大広間に残っていた伯爵家の神達からも全てのオーロ魂片が取り出された。




 カリーナ火山で浄滅して戻ると、ザブダクルは疲れたからと帰っていた。


【瑠璃姉。王様の魂、取り込んでもらえる?】


【ふむ】

王の背後へと瞬移し、幻尾に触れて取り込んだ。


【王様にも現状と災厄の、知っといてもらいたいの】


【確かにな】

【それなら僕の部屋にお願いします。

 たぶん大勢の獣神様に伝わると思いますから】


【開かずの間の?

 だったら み~んな出しちゃわない?

 ザブさん知らないんでしょ?】


【確かに そうですよ! 行きましょう♪】


【うんっ♪ あ……】


【また何を拾った?】【どうしたんですか?】


【災厄の後のがいいみたい~。

 神王殿(ここ)、崩れないから……】


【ならば災厄の話が先だな】


【うん。もっとラクなるよぉにだけしとく~】


【ふむ。そうしてくれ】【ん】



―・―*―・―



 今ブルーだけはザブダクルの様子を見に死司最高司の館を訪れていた。

ザブダクルは居室で臥せっていたので治癒を当てて目覚めさせ、そのままでと話し始めた。


「今日 回収したオーロ魂片から得た情報です。

 広範囲に微細魂片を込め、支配もしたと自慢気に話していました。

 事実だと思います。

 ですので、この程度で倒れられては困ります。

 治癒玉を置いていきますので、明日もまたお願いしますね」


「広範囲、とは……?」


「少なくとも全ての都。

 大きめの街も含めるべきでしょうね。

 貴族から出入りの者へ、そこから貴族とは無関係の一般神へと拡大しているでしょう」


目を見開いて涙を流すばかりで言葉にならない。


「オーロザウラは強い人神を欲しています。

 勿論、依代とする為に。

 最高司殿であれば自身と同じです。

 最善の神力源、最善の器です。

 狙われて当然ですので、眠っていたら襲われてしまいますよ?」


「此処に居ては、くれぬのか?」


「こうしている間にもオーロ魂片は増殖しているんですよ?

 では俺はこれで。

 修行なり克服なりに励んでいてくださいね」

ザブダクルの次の言葉は待たずに瞬移した。



――【青生兄お帰り~♪】【敵神は?】


【うん。明日も頑張ってくれると思うよ】


【ふむ。此方は彩桜から災厄について王に見せ終えたところだ。

 敵神が起きているのならば王を身体に戻さねばな】


【そうだね。

 神王様、地星は粉微塵になりませんし、生物も生き続けます。

 必ず元に戻しに参りますので耐えてください】

【神王殿から出ないか、地下に逃げてほしいの】


【地下?】


【古い地下牢とか、ピュアリラ聖堂とか、通路とかあるの。

 一般神様達、聖堂と通路 知ってるの~】


【わかりました。

 宰相殿や大臣の皆さんには外に出ないように。

 他の皆さんには地下にと伝えておきます】


【瑠璃姉。地下牢入口、見せてあげて~】【ふむ】



【庭に……何から何まで ありがとうございます】


青生と彩桜からドラグーナが浮かぶ。

【グレイ。きっと災厄は悪いばかりではないよ。

 この二人みたいな拾知なんて持っていないけど、これだけは確かだと思うんだ。

 復興からはグレイが目指していた王になれると思うよ。

 だから耐えてね。

 助けてあげられなくて ごめんね】


【ドラグーナ様、謝らないでください。

 経緯は何にしろ僕は王です。

 災厄後、必ず神世を良くしますよ】







青生と彩桜でも途方に暮れそうなくらいにオーロ魂片は拡散しているようです。

でも明らかな分は回収したいので神王殿での食事会も続けたいし、次の策も考えないといけません。

オリュンポス獣神様を動力源にしている雲間の悪神も捕まえないといけないし……ん? 収拾、どうする私?



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