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ユーレイ神



 オリュンポス12獣神達の話を静かに聞いていたランマーヤは、治癒を当てていたララナルフも連れてラピスリの気へと瞬移した。

【こちらで治癒してたのね♪】

ラピスリは土台に封じられていた神達の部屋を治癒で満たし、神笛を吹いていた。

なので、まだ思うようには動けないララナルフもベッドに横たえて、ランマーヤも部屋中に治癒を広げて笛を合わせた。


【ランマーヤが継げばよい】フン。


【そうね~♪ サクラお兄ちゃんと一緒にだったらいいかな~♪】


【そうすればよい】ふふ♪


【こちらの皆様からお話を伺うのは?】


【急ぐべき事が有るのならば既にお話しくださっているだろう。

 故に回復を優先する】

【ラピスリ、ランマーヤ。ありがとう。

 神力は随分と回復したのよ。でも……】

ララナルフが起き上がろうとしていたが諦めた。


【失礼致します】青生が来た。

【やはり違和感がありますので確かめさせて頂きます】


【お願いいたしますね、今ブルー様】


【青生、聞くだけでなく拾知していたのか?】


【最初は彩桜がね。

 ランマーヤ様から伝わる情報に乗って違和感が伝わるって。

 それで二人で拾知して、まだ解けていない人神の縛りがありそうだと考えたんだ】

【うんうん。にゃ~んか変なのぉ】来た。


【変、とは?】


【雲間探しトキも変な違和感あったの。

 悪神ぽいけど悪神じゃなくて~、オーラマスクスみたく乗っ取られたのでもなくて~、でも支配された虚ろ感もナイのぉ。

 ソレがチラチラだったのぉ】

話しながらでも拾知は全開。


【何故あの時に言わなかった?】


【気のせい? みたいな~。

 わかんなかったんだもん】

【それに目的の雲間の方を急ぐべきだと思ったからね】

青生も話に加わったが拾知は全開。


【ふむ。ならば今度は その違和感なのだな?】


【そうだね。

 たぶん これも『時流』なんだと思うよ。

 その違和感を探すべき時が来たんだよ】


【ならば今から行くのか?】


【調べ終えたらね】【うんうん――あ……】

【何か見えた?】【えっとねぇ……ユーロン♪】


【え?】【何を言っている?】

【サクラお兄ちゃん?】


【うん♪ 俺、彩桜♪

 ユーロン、雲の中に隠れてたんだよね?

 死神様から隠れてたの?

 他に何か居なかった?】


【くろオニいたよ。まっくろなの。コワイの。

 だから にげたの。

 くろオニ、ひかる くもに入れないもん】


【やっぱり~♪ じゃあ退治するねっ♪】


【くろオニきたの?】


【来そぉだから探して退治するよ♪

 飛鳥と一緒に居てね♪

 外に出ずに待っててね♪】【うんっ!】



【ふむ。其奴が悪神ではないが悪神に似た者なのだな?】


【うん。たぶんね~。

 ね、瑠璃姉。神様のユーレイて居るの?】


【は? 神はユーレイにはならぬ。

 存在の有無のみだ】


【えっとねぇ、ソラ兄もユーロンも身体失っても生きてるでしょ? そゆの】


【身体と魂を切り離そうが神は神。

 ならば……不確かな状態か……?】

【生み損ないなのでは?

 神力不足な人神でしたら有り得ますよ】


【ララナルフ様、もしや封印の人神が?】


【ええ。言われてみれば、なのですが。

 黒い男神が率いている隊の中に、存在自体に違和感のある男神が居たのです。

 私共の攻撃を防ぐでも躱すでもなく、通過させてしまう、まるで雲の如きな……】


【それで逃げるより他に無かったのですね?】


【そうなのです。

 近くまで迫っていた その男神に、石塊に入るなり封じられてしまったのです。

 封印を重ねたのは隊の長でしょうけれど】


【その時の情報を頂けますか?】


【ええ。どうぞ御手を】


【【【【ありがとうございます】】♪】】



―◦―



 ララナルフから得た情報と拾知結果を整理した彩桜達は隊長をしていたオーラタムと話し、もう一度ユーロンとも話して、今、絶滅種保護区域の雲地を下から調べている。


【どしてコッチ側だけ光る雲あるの?】

彩桜はランマーヤに乗っている。


【此方側は上の神火に融かされた箇所が多い。

 ただの雲ではないのだから修復に補強を加えねば保てなかったのだろう。

 その補強に浄破邪が混ざっている】

【たぶん上の神火に悪神の気が混ざっているからだよ。

 ルサンティーナ様は悪神の一部を逃げないように持って隠れているんだからね】

青生はラピスリに乗っている。


【そっか~。だから浄破邪なんだ~♪

 浄破邪が光ってるんだね♪

 じゃあコッチには居ない?】


【そうでもなさそうだよ。

 向こう側には居なかったからね。

 そうだな……壁近くとか?】

【確かに壁近くならば雲海(うみ)の下もあった筈だ。

 其処ならば融かされていないだろう】

方向転換。最も近い壁に向かう。


【ん~~~~何か逃げてる!】【闇神だね】


ラピスリとランマーヤは彩桜が指した方向に豪神速で飛んだ。

【確かに位置を掴んだなら示せ! 術移する!】


【ん……見えた♪】【ふむ】

ランマーヤを連れて術移した。



――雲地の中。

真っ白な中を黒い染みが逃げていた。

【【昇華光明煌輝】封神力!】【強制具現化!】

【昇華闇障暗黒、激天特大闇呼吸着!】

青生は射手ポーズで身構えていたが、不要そうだと手を下ろした。


『何故っ!? うわあっ!!』シュポッ。


「オーロザウラのコドモ?」


『っ……捕らえて連れて来いとでも言われたのか?』


「ううん。

 どして隠れてたの? オニさんなんでしょ?」


『私が鬼だと!? 鬼はオーロザウラだ!

 貴様等も鬼の配下なんぞ辞めろ。

 いずれ喰われるぞ』フン。


「俺達あんなのの配下じゃにゃいも~ん。

 俺、今チェリー♪ キミは?」


『オーロザウラが付けた名なんぞ捨てた』


「じゃあ付けていい?」


『好きにしろ』フン。


「自暴自棄? もぉオシマイとか思ってる?」


『その通りだろう?』


「ちゃんと生まれ直さない?

 今度は半獣神どぉ? 強くなれるよ♪」


『は?』


「ユーレイ神じゃなくて、ちゃんと神ならない?

 一緒にオーロザウラ倒さない?」


『これは……罠なのか……?』ボソッ。


「そんなのじゃにゃいからぁ」

言い終わる前にマディアの咆哮が聞こえた。

【行くぞ!】術移!



――「じゃあ見ててね♪」【闇呼吸着♪】プス♪

ドサッと倒れた男爵を青生が担ぐ。

「たぶんワンパターンだから続くよね~♪

 やっぱり来た~♪」【闇呼吸着♪】またプス♪

青生の両肩に男爵。

「はい♪ 3オーロ♪」またまたプスリと吸着♪

今度は彩桜が担いだ。

「また後で来ま~す♪」

ラピスリが連れて術移した。



――禍の滝経由で雪原。

ラピスリとランマーヤは飛び始めた。


『先程のは? あの鬼を感じたのだが?』


「うん。オーロの欠片。

 男爵さんとか子爵さんとかに細かいのが込められちゃってるの。

 ソレ回収したから浄滅しに行くの」


『浄滅? あの鬼をか?』


「うん。カリーナ火山の神火だけ浄滅できるの。

 他は何してもダメなの」


『確かに何をしても無駄だった。

 奴は私を神力塊として育て、取り込むつもりだった。

 その寸前で私は逃げた』


「それまで忠実な配下してたの?」


『していた。奴は支配を使って王軍幹部となり、私を次官にして常に攻撃の先陣を切らせた。

 多くの獣神を狩り、封じるよう命じられた。

 それが功だと。

 不安定な私が生きる唯一の道なのだと……』


『ふ~ん。親としては?』


『親だとは思うなと――んんっ!?』声が違う!?


『ま、オーロじゃあ そんなもんだろうねぇ。

 で、またアタシが預かりゃいいのかい?』


「私達は浄滅しに参ります」


『そんじゃあ通りな』「ありがとうございます」

青生を乗せたラピスリは火口に向かった。

『で?』


「オーロに付けられたお名前、捨てたんだって。

 アミュラ様が付けたら生きられるよね?」

『アミュラ様!?』


『そうさねぇ。マシにゃなるだろうけど、獣神(ケモノ)の名付けでいいのならね』

『お願い致します!』


『そうかい。

 兄がザブダクルとシャルダクルだから……。

 ああそうだ。ラピスリ、カイダームの欠片を出しな。名を受けるにも神力が必要だからねぇ』


「は?」戻ったばかりで意味不明。


『ラピスリが預かってる欠片だよ。

 ソイツはカイダームだ』


「カイダーム様は堕神にされていたのですか?」

首を傾げつつ欠片を出した。


『いいや。ソイツは堕神にされた痕跡は無いよ。

 おそらくだけどねぇ、戦っていて抜かれちまったんじゃないかねぇ。

 オーロは抜いたり込めたりが得意だからねぇ』

「あ……うんうん。オーロと戦ってて取られて、取り返そぉしてたら飛んじゃって……どっちも見つけらんなくて、すっごく後で農夫さんが畑で見つけたの~♪

 役場? みたいなトコ届けたから保管されてたの~♪」


「そうか」結界壁(アミュラ)に渡した。


『それじゃあアンタはカイダクルだ♪

 神力を足して名付けてやるよ』


『ありがとうございます!』


『カーリも来な』『はいっ!』浮上。

『カイダクル、アンタの叔父だよ。

 不安定な子神なのはオーロの所為だ。

 カーリ、オーロの子だよ。

 状態は見ての通りだ。

 ま、仲間だってこった。仲良くしな』


『『はい!』』



 そうして無事に改名が終わり、闇呼玉からも出してもらえたカイダクルは何度も礼を言って、カーリザウラと降下し始めた。

『待ちな。ドラグーナ、何か言いたいのかい?』


「では1つだけ。

 半獣神になりたいかの答えは?」


『親と成って頂ける方がいらっしゃれば……なりたいと思います!

 出来れば鬼を打ち消すくらい獣神になりたいです!』


「うん。だったら俺の命の欠片をあげよう」

彩桜から出、青生からのドラグーナが合わさった。

「こっちに俺の魂核があるからね」

目を閉じ、光を纏う。


ドラグーナの前に星が生まれた。


「キラッキラ~♪ と~ってもキレイ~♪」

「これが命の欠片だよ。修行して育んでね」

星がスイッと飛んでカイダクルに入った。


『ありがとうございます!』

『僕……僕もお願い致します!』


「うん。それじゃあ今からは兄弟だね」


『はい♪ カイダクル兄様♪

 ドラグーナ父様、よろしくお願い致します♪』

カイダクルを呼んで笑顔を向けた時に星が生まれ、ドラグーナの方に向き直った時にカーリザウラにも星が入った。

『ありがとうございます♪』


「それじゃあ仲良く修行してね」


『『はい♪』』手を繋いで笑い合い、降下した。



「では、獣神力の上げ方のご指導も宜しくお願い致します」

通り抜けたラピスリはランマーヤを連れて飛び去った。




〖オーロも……あんな育てられ方されなきゃあ笑顔になれたのかねぇ……〗


真面目に瞑想を始めたが、初めて感じる爽やかな鈴の音のような共鳴を感じて、どうしても溢れてしまう嬉しさや楽しさに満ちた若神達の気を微笑ましく思いつつ、アミュラの意思は呟いた。



―・―*―・―



【んとねぇ、おっき(オトナ)オーロ浄滅してるけどぉ、ちっちゃ(コドモ)オーロ残ってるでしょ?

 育て直したらいい思うの~♪】


【アミュラ様が、だよね?】


【うんっ♪】

【禍の滝に預けた男爵達を回収するぞ】


【うんっ♪ あ♪ いいコト思いついた~♪】







中下級貴族達に込められている微細オーロ魂片を回収しなければという時ですが、そのオーロザウラが生み損なった息子が登場しました。

カイダクルと改名された男神はザブダクルとシャルダクルの弟です。

可哀想な生い立ちですが、これからは幸せに生きられるでしょう。



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