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チビッ子マーズ



 翌日、金曜日。

今日こそはと意気込んで登校した彩桜は楽しく授業を受けていた。


 3時間目の地域社会科も終わりに近付いた頃、またしても悪神欠片持ちがザブダクルの前に現れたらしくマディアの咆哮が神耳に響いた。

【彩桜様! マディアをお願い致します!】

【サーロン(分身)お願い! 狐儀師匠 任せて!】

ランマーヤが彩桜を連れて術移した。

当然ながら姿を消しているし、姿を消す彩桜とサーロンとの息もピッタリなので誰にもバレはしない。


【狐儀様、紗ちゃんの代わりは誰がしているのですか?】


【ランマーヤは龍狐のようです。

 狐は分身も得意ですので自身で分身を成して来ているようですね】


【ボクも もっと修行して離れても消えない分身が成せるように頑張ります!】


【はい♪】


チャイムが鳴った。


「では、地域史の期末テスト範囲は古代から鎌倉時代初期までです。

 頑張ってくださいね」

教卓を片付けつつ言って微笑み、教室を後にした。



 すぐに堅太が来る。

「彩桜サーロン、美術室に――また!?」


「またバレたです♪ 美術室に行くです♪」

「サーロン行こ~♪ お絵描きする~んるん♪」

道具を持って一緒にぴょんぴょん出て行った。



「この前の話……本当に起こるのかも……」

また不安そうで、彩桜を心配している祐斗がサーロンが出て行った戸口を見詰めている。


「起こったら起こったで俺達は全力だ♪

 彩桜が言ってた避難誘導と避難所での掃除やらのヤツ、俺達が先頭に立つんだからな。

 マーズスタッフとして頑張るだけだ」


「そうだね」

つい俯いてしまったが、思い直して祐斗は顔を上げた。


「行かないの?」凌央が堅太に並んだ。

「僕達は彩桜に託されたんだよ。

 彩桜がヨーロッパに行っている間なら僕達しか居ないんだからね」

不敵な笑みを浮かべて美術室に向かった。

「信頼だよね~♪」「だぁね~♪」

美雪輝と愛綺羅も笑顔で追う。


「彩桜からの信頼……だよね♪ 行こう♪」

「おう♪」「「そうよね」♪」

他にも集まっていたので一緒に行った。



―・―*―・―



 金曜日は その1回のみだったが、翌土曜日は全く勉強会に参加できないまま、神世にも人世にも現れる悪神の欠片持ちな神達に夜まで振り回されてしまった彩桜達だった。


【彩桜、アテネに行くよ】【ほえ~い】

【治癒が必要かな?】【セルフする~】



 彩桜は家から、青生は動物病院からマーズとして分身と妻を連れて同時にアテネに着くと、他の兄弟は両親とソリスト達も連れて来ていた。

「ヤーコフさん大丈夫なの?」分身彩桜。


ソファで脱力して天を仰いでいるヤーコフは何も考えていなさそうだった。


「忍者移動に驚いただけだ♪」

「俺達に任せとけって♪」

瞬移大好きなトレービとジョージが大笑い。


「じゃあ、お任せする~んるん」

マーズとキリュウ兄弟はステージに向かった。



―◦―



 軽いリハーサルの後、広く囲んでいた壁が消えて開場を知らせるアナウンスが響くと、期待の笑顔達が賑やかに四方八方から雪崩れ込んだ。


 今回の開場は野外で、遺跡公園的な丘上の広場に紅火が堅固で成したパルテノン神殿遺跡風で大理石の床と柱のみの築造物が囲むだけの開放的なものだった。

なので防音壁は不粋だと、紅火は人の目には見えない堅固結界で広く丘を囲み、周辺地域には迷惑にならないよう遮音していた。


【ねぇねぇ青生兄、あの石の塊、にゃ~んか違和感?】

フリューゲルは既にスタンバっていて、マーズだけがステージ後方に作った控室に居る。

壁際に居る彩桜は、壁のすぐ向こうにある石塊を指した。


【そうだね。像の土台だったのかな?

 像は……粉々に散らばって埋もれているみたいだね】


【後で復元しにゃい?

 神様、一緒にバラバラなってる気がするのぉ。

 土台も誰か隠れてるし~】


【うん。そうしよ――】【青生!】【行こっ!】



【10分前なのに!】【戻ると信じようよ】

つい声を上げた悟を竜騎が宥める。


【オープニング曲は青 桜抜きとする。

 本来パフォーマー抜きの曲だが、仮振り付け1で参じてほしい。

 自信の有る者のみステージへ】

舞台袖に移動し、メーアと話している金マーズから。


【【【【【【【承知!】】】】】】】


【青 紺 桜は鳥忍として戻るだろう。

 上手く合わせてもらいたい。

 頼りにしている】


【【【【【【【はい!】】】】】】】



―◦―



 はたして――と言うよりは案の定、最速で戻ったらしい3鳥忍はオープニング曲のラストサビで天から飛んで来てステージに着地すると、即パフォーマーに合わせて踊り始めた。


【おお~い、また大騒ぎじゃないか】

すっかり慣れてしまったメーアの歌は続行中だが頬に苦笑が滲んでいる。


【たっだいま~♪】


【返事になってないだろ♪】


【うん♪ 次の曲は演奏する~♪】


【おう♪ 頼んだぞ♪】



 そこからは順調に進み、アンコールに応えてステージに戻った時――

〖随分と神力(ちから)が戻ったわ。

 音神の皆様、もっと続けてくださるかしら?〗

――音色で目覚めたらしい女神の声が聞こえた。


【やっぱり居た~♪】【そうだね】

〖この共鳴……先程の声……ララナルフ様!

 どちらにいらっしゃいます?

 スタリーナですよ!〗


〖もう少し神力を得なければ何も……待っていてね、スタリーナ〗


〖はい♪

 きっとまだまだ続けてくださいますよ♪

 お兄様ですもの♪〗


〖そう……音神様はドラグーナ様でしたのね。

 お願いいたしますね、獣神王様〗


〖お兄様♪ 沢山お願いしますね♪〗



【ドラグーナ様、また狸寝修行なのぉ?】

【そっとしておいてあげようよ】【うん】

スタリーナとララナルフは まだまだ話しているが、アンコール中なので他のマーズは皆、聞こえない振りをしていた。


 このアテネライブには、期末テスト間近だからという理由で黄緑(わかば)衆の4人は連れて来ていない。

アンコール曲として選んでいた『疾風』では、いつもなら黄緑達が長旗を靡かせて走るのだが、今回は その演出も無しとしていた――

【ああっ!】【飛鳥君!?】【ユーロン!?】

【もう1人は!?】【誰だよ!?】【む……】

――が、光の三原色というカラフルな忍装束のチビッ子忍者(マーズ)達が黄緑旗を靡かせて駆け抜けた。

その先頭が誰なのかに気付いた赤が桜をチラリ。


【首謀者、ランちゃん】にゃはははは~。


【じゃあ瑠璃の真似?】


【うん。紗之助(すずのすけ)くん、かにゃ?】


【可愛いから紗之助君で決まりだね♪

 でも呼び名は別にする?】


【そぉだねぇ……やっぱりスズランくん?】


【いいんじゃないかな。

 飛鳥君は読み方を変えようかな】


【うんうん♪】【ユーロンも そうします!】

話していると広い会場周遊の旅を終えたチビッ子マーズ達が再びステージに戻った。


【紗之助くん紹介するね~♪】捕まえた♪

【ユーロンもね♪】空マーズがキャッチ♪

【飛鳥君もだよ♪】青マーズが抱き上げた。


 チビッ子達を捕まえたのが間奏に入るタイミングだったのでメーアは大笑い。

ソロの為に前に出ていたギターのベルクも笑っている。


 ソロ始まりの音に合わせて、チビッ子マーズ達が持っていた長旗が上下(かみしも)の舞台袖と舞台後方へと柄から飛んで黄緑色の尾を見事に引いて退場した。


【飛んでねっ♪】【ユーロンもね♪】

【飛鳥君、驚いて龍にならないでね】

【【せ~のっ♪】】ポ~ン×3♪


銀 黒 灰が跳んで宙返りしつつ受け止めると、パフォーマー達が踊っている両サイドへと方向を変えて飛ばす。


チビッ子達は真っ直ぐ黄 橙 白の三方へ。

【真上に跳べ♪】【【【はい!】】】

【中央に集めるつもりでなっ♪】【せ~のっ♪】


【【【はい♪】】】ポ~ン×3♪


今度は金 赤 藤が宙返り。緑 紫 紺の方へ。

真上に跳んだ3マーズはチビッ子達を観覧エリアへ飛ばした。


 歓声が悲鳴に変わる。

観覧エリア側に走らせていたサーチライトが慌てて動きを変え、三方向に飛んでいるチビッ子マーズを追う。

まだ勢いよく上昇中なので着地点は遠いだろうと、後方の観客達が受け止めなければと両手を上げている。


そのライトが大きく広げた白い翼を捉える。


宙空に現れた鳥忍達が下降を始めたばかりのチビッ子達を抱き止めると、クルンと肩車した。

舞うように美しい揃った所作で客席後方を向くと、感謝を込めた礼をし、拍に合わせて羽ばたいてステージに戻った。


『おいベルク、手が止まってるぞ♪』あっはは♪


ハッとしたベルクが続きをと動いたが、

『どこで止まった?』な顔になり、

『こうなったら!』と即興で弾き始めた。


ベースのフルスも前に出てギターに合わせ、長年共にやってきたのだとプロの意地を見せた。

そしてソロ終わりのフレーズに綺麗に繋いでボーカルに渡す。



 後はサプライズ無しで曲が終わり、チビッ子達を肩車したままの青 桜 空がメーアに並んだ。

『で? 予定外に出て来やがったのは青マーズの子か?』


『違いますよ。

 でも忍ノ里生まれ忍ノ里育ちの上忍候補な子供達です』

『まだ忍名(しのびな)ナシなの~♪

 だから呼び名は赤が紗蘭(すずらん)くん♪』

『緑は羽龍(うりゅう)くんです♪』

『青は飛鳥(ひちょう)君だよね♪』


『『『は~い♪』』』超ゴキゲンで手を振る。


『この5歳児達は正真正銘、修行を積んだ忍者です。

 普通のお子様に先程のような事をすると大怪我では済まない大惨事になりますので、くれぐれも真似はなさらないでください』

チビッ子達を前に抱き直して深々と礼。


〖お兄様、続きはまだですか?〗

拍手喝采の大騒ぎの中、スタリーナの不満気な声が聞こえた。


『コイツらも踊れるんだろ?』『『『うん♪』』』


先に答えられてしまった青 桜 空マーズは忍面の内の顔を見合わせて苦笑しつつ跳び、ステージ上に吊っている蹴り板の上にチビッ子達を残して立ち位置に戻った。


『そんじゃあ次の曲だ♪』


 マーズはピシッとポーズ。

観覧エリアから程よく見える高さまで下がった蹴り板上のチビッ子マーズもピシッと揃っているので観客達は大喜びだ。


大盛り上がりの中、最初の音が弾けた。







カラフル忍装束は試作品で、紅火は他の色も作っていたようです。

隠し社での作業用の黒い装束は、既に飛鳥とユーロンに渡していましたが、もっと可愛くと試作していたようですね。

もちろん紗ちゃんには くノ一装束を渡していたんですよ。



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