目覚めてランちゃん!
皆が神力を注ぎ、治癒を維持して暫く。
意識無く、何の反応も無かった紗が彩桜の手を弱々しくではあるが握り返した。
【ランちゃん? 返事してランちゃん!】
しかし以降また無反応になり、昼を過ぎた。
【昼メシ置いとくからな。彩桜も食っとけよ】
【うん、ありがとう。食べさせておくよ】
彩桜が返事しないので青生が代わりに。
【供与、必要か?】
【してくれたら嬉しいけど、リーロンも忙しいよね?】
【ウケモチ様に頼んでくるよ】瞬移。
リーロンが戻っても光景は同じだった。
【そんじゃあ領域供与】〖なぁオニキス〗
【ったくウンディだけは起きてるのかよ】
〖俺は意思だから疲れないらしいな♪〗
【ウンディなら身体があろーが疲れねぇよ】
〖あ~、確かにな♪
で、ランマーヤちゃん、どーなってるんだ?〗
【オレが知ってると思うのか?】
〖そっか。また俺達はカヤノソトかぁ〗
【だな。ランマーヤの状態、見とくか】
と、神眼を強めた時、龍の咆哮が聞こえた。
【マディアだ!】
【彩桜はそのまま! 行くぞ青生!】
青生を連れて瑠璃が術移した。
〖ナンだぁ?〗
【悪神の欠片持ちな人神がマディアんトコに現れたんだよ。
ヒマなら爆睡してるアーマル兄様 起こしてくれよ】
〖おう。ん?〗【ゲッ……オフォクス様っ!】上!
【中断は出来ぬ。サイ、頼む】【任せろやぃ】
サイオンジが消え、隠し社に居た金錦が現れた。
【我々は大禍群の方に向かいます】
続いて瞬移して来た藤慈を連れて消えた。
【お稲荷様、俺……】
【彩桜は紗に集中せよ】
【ん……】
〖今度は? どーなってるんだよ?〗
【マディアんトコに現れたのとは別のヤツが人世の上空に現れて禍を降らせたんだよ。
あんま強くない禍だったんだろーな。逃げきれなかった死司や再生の人神達が触れても滅されずに魔化して、霊が怨霊化しちまったんだ。
爺様持ちのサイ様が怨霊、父様持ちの兄弟が人神達と戦い始めたよ】
〖爺様と父様が?〗
【お前が堕神にされた後、父様も堕神にされちまったんだよ。
爺様は いつとか知らねぇけど堕神なんだ】
「……サクラお兄ちゃん……」
【ランちゃん! 俺、一緒に居るよ!
お稲荷様! さっきのどっち!】
【ランマーヤの寝言だ。
やはり表皮の如くな人魂には意思は無い。
ただし人としての年齢相応という、封印結界と連動した強い縛りのみを持っておる。
判断力やらに蓋をし、不用意に禁忌に触れさせようという目論見であろう。
此迄の紗は其の縛りを受けてはおるが、眠っておるランマーヤだ】
【そっか……だったら割っていいよね?
瑠璃姉が記憶の写し持ってるんだから。
俺が闇呼吸着しないと、あの数は無理だよ。
兄貴達に渡した闇呼玉、もぉ全部 使っちゃったもん】
【ふむ……性格は若干 異なるやも――】
【それでもランちゃんだもん!
ずっと手繋いでるから分かるんだもん!
目覚めさせるからねっ!】
紗の手をギュッと握り締め、薄紅光を纏った。
【ランちゃん! ランマーヤ様!
起きて封印を割って!!】
〖……サクラ……お兄ちゃん……〗
【うん! 俺、彩桜だよ!
ちゃんと目覚めて割って!】
これまでの紗の笑顔が脳裏に過る。
幼い紗の はにかんだ笑顔は二度と見られないと覚悟して、彩桜は呼び掛け続けた。
〖……サクラお――ええっ!?〗【起きた~♪】
〖えっ、えっと……〗ぽ♡
【あれれ? ランマーヤ様、だよね?
窮屈でしょ? 割って出て?】
〖だって……その……手……〗
【俺、ダメ?】〖じゃないの!! あっ――〗
飛び起きて、俯いて、でもチラチラ見つつ、もじもじもじ。
〖出てもいいの?〗
【うん♪ 割っていいんだよ♪】【姉様♪】
〖サファーナ!? ……見てたの?〗【うん♪】
龍のまま飛んで来て空いている方の手を握った。
【今、姉様は人の身体の中なんだ。
だから、こうして取り込んで龍になるんだよ♪
ラピスリ叔母様から習ったんだ♪】
方法を流して離れる。
【サクラお兄ちゃんが待ってるから早くねっ♪】
〖私……シッポぐるぐる巻きなのね……えっと……動けないの〗
【絆パワーで後押しするからね♪
一気にパーンしてね♪
せ~のっ♪】掌握で握手♪
〖絆!? あっ!〗
一気に流れ込んできた強い神力で魂が満たされ、膨らむに連れ封印に亀裂が走って拡がった。
【もーちょい!】〖うん!〗
【頑張って!!】〖うん♪〗
パーーーーーン!!
――と表現するより他に無い花火のような弾け方で、ランマーヤを縛り固めていた封印結界が飛び散って、煌めき瞬きながら消えていった。
一瞬だけ虹光を纏った紗が白龍神に。
【行こうランちゃん!
兄貴達が戦ってるんだ!】【うん♪】
【まだ自由に動けねぇだろ。オレに乗れ!】
【【【うん♪】】】
【お~いサファーナは飛べるだろーがよ】
【乗る~♪ お姉ちゃんも人姿ね♪】【うん♪】
【ったく~】言いつつ瞬移。
――【【【昇華闇障暗黒、激天大闇呼吸着!】】】
ピッタリ同時に来たラピスリと その背の青生も一緒に発動した。
ランマーヤとサファーナは邪魔にならないよう龍に戻って少し離れた。
【それなら♪】藍鱗になり【浄滅禍波嵐舞玉!】
放射状に投じた嵐玉が遠くで弾け、宙に生じた竜巻が禍の群を取り込んでは浄滅していった。
【ランちゃん すっご~い♪ 竜巻い~っぱい♪】
【近くの禍は お願いねっ♪】【もっちろ~ん♪】
あっという間にスッキリ爽やかな空だ。
妻に乗った兄達が寄る。
彩桜はオニキスの背から跳んでランマーヤの背に乗った。
【瑠璃姉、結婚の絆――あっ、プロポーズし直さないとだった~。
ランちゃん、俺と結婚してください】【はい♡】
【彩桜はストレートだし、ランマーヤちゃんは即答かよ。
そんなんでいいのかぁ?】
【ぼやくなオニキス。
ずっと手を握っていたのだ。
既に言葉なんぞ不要だったのだろうよ】
【うん♪ そぉなの~♪】
【ラピスリ叔母様、絆をお願いします♪】
【ならば此処で。彩桜は乗ったままでよい。
早く此奴等を始末せねばならぬからな】
死司最高司の館に現れた人神に憑いていた悪神魂片と、人世上空に禍を撒いた人神達に憑いていたのを込めた封珠を見せた。
【人神入りの方は社に頼む】投げた。
【ん♪】キャッチ♪
―・―*―・―
〖なぁオフォクス様よぉ、俺の本体は戦えるようにならねぇのか?〗
【神であるという自覚が全くだ。
そもそもウンディは人魂と獣神魂の混合魂だ。
然うとは知らず人神共がウンディを堕神とする際に人魂で包みおったのだ。
其の人魂をより強い人魂獣神であるウンディは吸収してしまったのだ。
人神共は何度も人魂で包み、ウンディは其の度に人魂を吸収した。
其れ故に『人』が強くなったのだと考えておる】
〖そんじゃあ俺は龍に戻れねぇのか?〗
【神力は消えておらぬ。故に戻れる。
ただし龍神であると云う自覚が必要だ】
〖ソイツが大問題だよなぁ〗
【其の通りだ。
ところでウンディは何故、堕神とされるに至ったのだ?】
〖ソレかぁ。積み重ね、だな。
追った日のチョイ前から悪口三昧だったんだ。
それまでも何やら言ってたけどな、ロクに聞こえなかったし姿を見せては逃げるだけってのが多かったんだ。
1つ1つは確かに些細かもなぁと思う。
けど我慢にも限界があるんだよなぁ〗
【何を言われた?】
〖俺達に対するものは、まぁいいんだ。
けど四獣神に対してのは……やっぱ腹立つ。
トリノクス様が手も足も出せずに易々と捕まったのは手足が無い蛇だからだ。
マリュース様は飛んで火に入ったバカ猫だ。
オフォクス様は尻尾を巻いて逃げた。
父様は子を盾にする弱くて卑怯なヤツだ。
そんなこんなが いくらでも出やがるんだよ。
けど、それでも我慢してたんだ。
グレイの兄貴を見捨てたってのも悔しいが事実だ。
鱗を剥がれてもヤセ我慢したバカ龍 出て来いってのにキレちまったんだよ。
マディアは死にかけたってのに、同代と一緒には生きられなくなったってのに、アイツは何も……反省の欠片も無いって事にブチキレちまったんだ〗
【然うか……ならば已むを得ぬな】
【たっだいま~♪ お稲荷様コレ~】
ぴょんと座って封珠を渡し、ショウに治癒を当てる。
〖ランマーヤちゃんは?〗
【瑠璃姉がお話あるって~。
ね、トシ兄、封印されちゃったの?】
〖は?〗
【此奴はドラグーナの子ウンディの意思塊だ。
利幸とは別だと考えよ】
〖ま、ユーレイなトシは知ってるけどな〗
【ふぅん】
【彩桜。結婚の絆を結んだのだな?】
【うん♪ やっぱりぃ、ちょっとだけ違うけどぉ、でもね、紗ちゃんも成長したら こぉなるかな? て思ったの。
ソレが急に来ちゃっただけなの。
やっぱりランちゃんなの~♪】
【然うか】フ。
【今ね、瑠璃姉から記憶 貰ってる思うの。
だから俺だけ戻ったの♪
アーマル様に報告しなきゃでしょ?】
【確かにな】
―・―*―・―
ラピスリとランマーヤは絆を結んだ空に留まっていた。
【聞くまでも無さそうだが、本当に結んでよかったのか?】
【はい♪
1年くらい? ずっと睡夢の中で一緒に居たサクラお兄ちゃんとですから♪】
神としては十二分どころでない期間だ。
【そうだったのか。ならば良い。
人としての母親である澪や学友達には先程の紗で頼む。
違和感は不穏に繋がり、厄介事になるのでな】
【はい♪ サファーナは? 弟の飛鳥なのね?】
【幼児として完璧に演技している。
負けるな】ふふ♪
【はい♪】
―◦―
そのサファーナは少し離れた空で青生と話していた。
【姉様もコドモだから大丈夫です♪】
【でも大神様なんだよね?】
【はい♪ 称号を貰う前の方が落ち着いたオトナしてました♪
明るく可愛くなったんです♪】
【大神力称号だからだね。安心して見守るよ】
【はい♪】【青生、行こう】
【うん。それじゃあキツネの社に戻ってね】
【はい♪ 姉様、行こっ♪】【うん♪】
ラピスリは青生を連れて術移し、ランマーヤとサファーナは仲良く手を繋いで瞬移した。
――「あ♪ 父様、パパ♪」
紗の姿で彩桜と並んで座った。
「私、サクラお兄ちゃんと結婚しました♪」
「やっとお目覚めで、まだ ぜ~んぜん話してなかったのに~♪」
「あはっ♪」彩桜にピトッ♡
「でも本当なんです。
神として、紗ちゃんなランマーヤ様と結婚の絆を結んでもらいました♪
支え合って、いっぱい修行して、一緒に災厄に備えます♪」
《〈災厄?〉》【彩桜 ランマーヤ! 来い!】
一瞬だけ見えた龍狐ラピスリが2人の腕を掴んで消えた。
《何事だ?》〈何があったのでしょうね?〉
「災厄に関してならば儂から話そう。
先程のは……神世に行ったようだな」
飛鳥=サファーナと同様に、紗=ランマーヤで落ち着きました。
以前、ランマーヤの声が聞こえた紗が怯えていましたが、あれも結界を破らないようにと込められていた想定行動の1つなんでしょうね。




