動かされる雲間
青生と彩桜はラピスリの背に出て、拾知全開で目的の雲間を探していた。
【どうだ? 方向すらも掴めぬか?】
【どうやら移動している雲間は他にもあるみたいだね】
【時々ソレっぽいのがチラッとするの~】
【止まるべきか?】
【う~~ん、でも気のせいかもなの~】
【そうだね。だから飛んでいてもらえる?
でも、そんなに速く飛び続けて大丈夫?】
【この程度、何とも無い。
久々に長距離で清々しいくらいだ。
龍は風に乗るのを好むものだからな】
職域を中心として、螺旋を描いて飛んでいる。
もうかなり職域からは離れていて最果ての岩壁に近付いていた。
【瑠璃姉、もぉすぐ禍の滝?】
【そうだな。近付いている。
何か感じるのか?】
【滝に引き寄せられてるのかにゃ?
違う雲間あるみたい~。
不穏禍い~っぱい大っき穴なってる~】
【ふむ。それも調べよう】【【〖あっ!〗】】
【神速で移動する不穏禍か?】
【【〖たぶん目的の雲間!〗】】
【落とされぬよう伏せろ!】豪神速!
とんでもない速さで過った雲間らしき不穏禍の塊は北東から南西へと向かっていた。
次第に距離を詰めつつ追っていると、職域の雲地下で急停止し、ゆっくりと死司域の真下に落ち着いた。
【ザブさん見てるぅ~】【そうだね】
【闇禍が、か?】
【闇禍憑き悪神かも~】【俺もそう感じるよ】
【ふむ……】
【瑠璃、まだ怒っているの?】
【俺、見るの集中するのぉ~】【お願いね】
【まだ夜は浅い。
なのにもう眠っているのかと呆れていた。
それだけだ。怒りは無い】
【確かに眠っているね。
でも……普通の睡眠じゃないみたいだよ。
拾知してみるね】
そのままを流そうとラピスリの背と、彩桜の肩に手を当てた。
ガネーシャは彩桜の頭に乗っているので伝わるだろうと、青生は違和感を見付けたザブダクルの腹部に掌握を当てているかの如くに集中して、向けた拾知を強めていった。
【なんだか……お腹の辺りから浄化が漏れているみたいだよ】
―・―・―*―・―*―・―・―
【この辺りが最も外に近いようね。
此処に床を成しましょう】
気を完全に閉じている白龍女神が宙に留まり、辺りを窺ってから最も近い外殻を見上げた。
【外に向かう道となりそうな場所はありませんでしたね。封呪核も。
次を行うには、外に近い場所であり、敵神に知られない距離を保たなければなりませんものね】
追い付いた女神も白龍。寄り添うように並ぶ。
【そうね。これ以上、殻に近寄れば気づかれてしまうでしょうからね。
では少し離れてね】【【はい】!】
最初の白龍女神の背には人神が乗っていた。
その男神が後で寄り添った白龍女神の背に移ると、後の女神が離れた。
【堅固、強浄化氷結、浄破邪治癒華】
氷結とは言ったが寒々しくはなく、清らかなクリスタルに見える床が成され、治癒光で煌めく蓮華座がクリスタル床の中に3つ現れた。
【此処で更に修行をして神力を高め、あの殻を破りましょう】
【【はい!】】
3神は蓮華座上で瞑想を始めた。
―・―・―*―・―*―・―・―
【敵神の腹部に在る封珠内にいらっしゃる神様が見えたんだね?】
【堅固で床を成した女神が初代の姉であり、マディアの妻であるエーデリリィ姉様。
もう1神が王妃であり、私達の代の基礎修行の指導をしてくださったユーチャリス姉様だ。
男神は前の敵神、神世を乱したが今は改心しているダグラナタンだ】
【エーデリリィ様もユーチャリス様も強い浄化をお持ちなんだね。
お腹の皮膚に近い場所に陣取ったから浄化が漏れて、敵神は衰弱して眠ってしまったんじゃないかな?】
【ふむ。さもありなんだな】
【あの治癒で成した蓮華座はいいね。
修行の消耗を軽減してくれそうだよ。
俺達も治癒だから真似てみようね】
【そうだな】【動いたよ!】
ラピスリは死司最高司の居室に術移した。
――が、禍神は憑くか取り込むかしようとしていた筈のザブダクルから後退っていた。
「あ~、その浄化が怖いんだ~♪」『誰ぞ!』
「最近はよくヒノカミと呼ばれてしまうよね」
「うんうん♪」
『ふざけおって……』
怒りも露にカッと見開いた目が赤を帯びる。
「もぉワンパターンにゃんだからぁ」
「其処に留まっていたら背後からの浄化で背中に穴が開くんじゃないかな?」
『喧しい! 何故 効かぬ!?』
「ソレもワンパターンなの~♪」【闇呼吸着♪】
『ぐおっ!?』
禍を瞬間的に膨らませて投げようとしていたが、彩桜が突き出したので至近距離になった闇呼玉に吸い込まれた。
「あれれ? 宿主さん見捨てたの?」
〈黙れ!〉〈ヒノカミめが!〉
闇禍は残っていた。
しかし闇呼吸着から逃れようと必死らしく、攻撃なんて出来そうになかった。
【昇華光明煌輝、滅禍浄破邪、封乱悪牢!】
【昇華闇障暗黒、激天特大盛り闇呼吸着!】
青生が射ると闇禍を感じた数だけ自動的に連射になる。それは拾知を持つからこそだ。
鋭く飛んだ光針矢2本は闇禍を捕らえて闇呼玉へ。
1本は窓の外へと闇禍を追った。
隣室でマディアを護りつつ話していたラピスリが兄弟を背に掬って光針矢を追う。
【【雲間に戻って北東に逃げる!】】
その通りに動いた。
弧を描いて方向転換したラピスリは追い続ける。
〖あの雲間、闇禍が操縦してるの?〗
【魂頭部さんの神力で動かしてるのぉ】
〖それって……〗
【魔女と悪神、人神様の真核 盗ったカモフラだけじゃなくて、獣神様に混ぜた人神様の欠片 通じて神力変換みたくして利用してたの。
ソレ、闇禍が雲間に繋げて動力源してるのぉ】
〖痛っ! イタタタ……実感~。
引き千切られるみたく神力 吸われちゃう~。
ボクの魂胸部と魂腹部、あの雲間の中に別々にあるみたい~。
どっちかに神力封じの核が封じられてるんだろ~ね~〗
【じゃあガネーちゃ師匠、手足とかだけ堕神?】
〖たぶんね~〗
神世の地の最果ての岩壁は、下空では神であろうが全く見えないが確かに存在しており、その向こうの絶滅種保護区域には行けないようになっている。
闇禍が操る雲間は、その透明な壁に沿って逃げ始めた。
【瑠璃、禍の滝下の雲間に入って】【ふむ】
禍の滝は間近に迫っていた。
逃げる雲間をギリギリまで追い、ラピスリは術移して滝下の雲間に入ると同時に浄破邪を纏った。
【【昇華光明闇障、防禍術鏡面壁!】】
〖その結界に封神力網も込めるからねっ!〗
続いて突入した闇禍入り雲間は閉じ込められたと同時に動力源を絶たれて動けなくなった。
【【暴風嵐舞!】】
纏って固めて壁にしていた雲を吹き飛ばし、
【封乱悪牢!】マシンガン状態!
【激天特大盛り盛り闇呼吸着!!】
闇禍も多数の不穏禍塊も光針矢達が連れて右手の闇禍玉へ。
左手の闇呼玉には、この雲間に溜まっていた禍達が吸い込まれている。
【大漁なの~♪】霧状の不穏禍もどんどん入る。
〖ボクの魂胸部まるっと無事~♪〗
禍やらが大騒ぎだった間、消えていたガネーシャが魂塊を2つ連れて戻った。
【魂核と神力封じの核も?】〖入ってる~♪〗
【お腹は?】〖神力吸われてボロボロだよ~〗
【大丈夫?】〖パズルも初級♪ 大丈夫~♪〗
【良かった〖ね~♪】ん? 地響きしてる?〗
【瑠璃姉! ガネーちゃ師匠の合体させて!】
【ふむ……】
【早く! 神力封じの核あるから合体お願い!】
【ガネーシャ様、急ぎますので素の姿に】
〖アレ対処ね。はい〗ぽよんと頭だけになった。
【では――】聞き取れない速さで詠唱。
【――合わせます!】
ほぼ力技で頭部胸部を合体!
〖ありがと! 行くよ!〗【うんっ!】
彩桜を乗せた巨象ガネーシャは雲間の外へ。
【〖神力封じ雷化千現万華掌!!〗】
黒々と迫って来ていたのは禍そのものやら不穏禍呪を纏う武器やらだった。
一気に現れたビシバシ雷光を纏う無数の蓮華が喰らうように それらを包んでいく。
【重ねて極めて超昇華闇障暗黒!
てんこ盛り盛り激天闇呼吸着おかわりなのっ!】
捕らえて閉じて蕾に戻ったビシバシ蓮華達が飛んで来る。
彩桜が両手で掲げている闇呼大玉に列を成して吸い込まれていった。
【〖おっしま~い♪〗】ぴょん ぽよん ぴょん ぽよん♪
彩桜とガネーシャが雲間の中に戻ると、青生と瑠璃は保護珠を大量生産していた。
仄青い保護珠の上を飛んで寄る。
【闇禍、封じに行くの後?】悪神の浄滅も。
【先ずは保護、次に封じに行き、全てを社に運ぶ。
保護している間、彩桜は寝ていろ】
【ん】ぽてっ。【悪神 見つけたら起こしてねぇ】
〖万華掌で包んでおくから安心してね~♪〗
【ん……ヒトデ万華掌~】〖へ?〗
【【ただの寝言です】よ】〖へぇ~♪〗
【ガネーシャ様はシッディ様とブッディ様をお探しください】
〖うん♪ ありがとね~♪〗ぽよん ぱよん♪
―・―*―・―
夜明けが近付いた頃、下弦過ぎの月が執務をしているマディアの背後、イーリスタが話せるギリギリの位置に達した。
〖マッディア~♪
共鳴すっごく揺れたけど大丈夫?〗
はい♪ ラピスリ姉様と話しただけです♪
エーデもユーチャ姉様も無事で
元気に修行してるんです♪
青生父様の拾知って神力で得た
封珠内の様子を見せてもらえたんです♪
〖そっか~♪ 良かったね~♪
人世に繋いだ糸電話でラピスリと
青生と彩桜とエィムとチャムと話したよ♪
ドラグーナとオフォクスもねっ♪
月から人世への道も伸ばしてるからねっ♪
繋がる頃にはドラグーナも復活してると思うから、み~んなで行くねっ♪〗
はい♪ 楽しみに待ってます♪
あ、それで青生父様と彩桜父様は――
ウキウキ気分のマディアは最近の今ブルーと今チェリーに関して話し始めた。
―・―*―・―
〖見っつけた~♪
ボク、パズルしてていい?〗
シッディとブッディの魂頭部を背に乗せて弾んで来たガネーシャが小さく首を傾げた。
【どうぞ。ご自身の魂腹部も解いてください】
〖ん♪ ラピちゃん ありがとねっ♪〗
両手で愛しい魂頭部達を抱き締め、糸口を見付けようと鼻で器用に探り始めた。
〖あれれ? 掌握?〗
ふよふよ~と飛んで来た小さな掌握達がガネーシャの魂腹部に集る。
〖彩桜?〗
向いたが爆睡中だ。
〖青生なの?〗
【いいえ。彩桜の寝掌握ですよ。
的確に動きますから問題ありません】くすっ♪
〖彩桜ってナゾ~♪〗
【ですよね♪】くすくす♪
〖連動しないの?〗
【これだけは、していないようです。ね?】
【していない】ふ♪
〖ホンット彩桜ってナゾ~♪〗
そう話している間にも、寝掌握達はガネーシャの魂腹部から抜き取った人神魂片を保護珠に運んで込めていた。
〖ホンット的確~♪ ラクになった~♪〗
雲間は動く。動かせられる。
その動力源も神力で……その為にキメラ魂に?
魔女と悪神と闇禍は、どれだけの犠牲者を出しているのやらです。




