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キメラ魂頭部



 その夜、鹿羽(かのう)一家には輝竜家の節勇の部屋に移ってもらい、輝竜兄弟とリーロン サーロン、瑠璃と慎介は揃って隠し社に行った。


【あらら~にゃんだか大騒ぎ~】

彩桜は飛んで、眠ったままガタガタと揺れている魂頭部(たまかしら)達の上から浄化と治癒を降らせた。

【ケイロン師匠どしたの?】


〖原因は此方のキメラ魂頭部(たまかしら)なのです〗

更に奥の部屋に入ったので追うと、歪に膨らんでいるようにも見える魂頭部が青生と瑠璃が成した青光を纏う保護珠に包まれて5つ並んでいた。


【ちょっとだけ不穏? また残滓かにゃ?】

1つ手に取った。

【騒いでるヒト達、共鳴かにゃ?

 本体なってるヒト、人神様で~、獣神様いっぱいだねぇ。

 無茶苦茶して接着剤が呪? 融合加速してるぅ。

 獣神様も見てみる~】

飛んで行って、震えている魂頭部を手に取る。

【やっぱりだぁ~。

 ケイロン師匠、すっごいパズルだよ。

 早くしてあげないと苦しい言ってるから頑張るけどぉ、神様の子守歌みたいなの教えてなの~】


〖子守歌、ですか……〗

〖癒しの曲ならば良いのだろう?〗


【うん♪ 分身に演奏させてパズル解くの~】


〖音神の更に上の称号が必要な程に大神だな〗

常が(しか)(つら)なオーディンが笑って彩桜と握手。

〖この曲を頼む〗


【ありがとございます♪ 兄貴達~♪】

素早く打ち合わせ、分身に演奏させて、兄弟は5組に分かれて難解なパズルに取り掛かった。



【うわ。もう解明か?】

最高司補達を連れて来た死神爺様(リグーリ)が立ち(すく)む。


【理俱、手伝え】

単独だった紅火が顔を向けた。


【ああ。で、結局コレは何なんだ?】


【人神の罪神が本体な魂頭部だ。

 抜き取った分だけ、獣神様の魂頭部から込めている】


【入れ換えてるんだな?】


【そうだ。想像でしかないが、獣神様の魂頭部が暴れぬよう縛ったのだろう】


【だから目覚められない、か……】

【リグーリ。私達は調べに戻る】

【補填用の魂材も持って来るわ】


【頼む。何しやがったのか知りたいからな。

 全てが元通りとはいかないだろうしな】


最高司補達は職域へと向かった。


【ん? ホムダマールト様とマホガニック様は?

 何か知ってるんじゃないのか?】

キョロキョロ。


【知っているからこそ居ないのだろう】


【んんっ?】


【この中にオーラマスクスとオーザンクロスティの魂頭部もあるのでは?】

【あると思うの~。だから不穏あるの~。

 悪神、逃げちゃったと思うのぉ】

【不穏源は悪神の残滓なのだな?】【うん】


【ったく、どこまで神なんだよ?】


【理俱は修行が足らぬようだな】フ。


【あーーったく!】


【それよりも手伝え】


【あ~はいはい】



―◦―



 オフォクスは倒れてしまったホムダマールトとマホガニックに治癒を当てていた。

二神は魂内で眠らせて封じている支配核がオーラマスクスとオーザンクロスティの魂頭部に反応して動いた為に意識を断たれた状態で倒れてしまったのだった。


『キツネ様ぁ、お師匠様ぁ。

 兄様が苦しんでるんです。

 助けてくださいませんかぁ?』

外で力丸が困っている。


【力丸、桜華は?】


【あ♪ キツネ様♪

 桜華様は紫苑と珊瑚を連れて出かけてます。

 大陸に行くとかって朝からウロウロして、結局 連れてったんです】


【ふむ。ならば儂が行く。戻って待て】


【はいっ! ありがとーございます♪】



―◦―



 オフォクスはオーラタムとマナライティアを連れて山の社に行った。

【手数を掛けるが調べてくれるか?】


【はい】

先ずはマナライティアが調べ始めた。

オーラタムは妻の神力を支えている。



【キツネ様ぁ、兄様から出てる臭い、オッサン臭いんですけどぉ】


【そうか。ダグラナタンの呪か支配核なのか。

 その源もザブダクルでありオーロザウラ。

 然すれば、鮒丸もキメラ魂頭部に反応したか。

 厄介極まりないな】


【俺にも入ってるとか?】


【入っていたのであろうよ】


【ん? 過去形、ですか?】


【ダグラナタンに操られておったモグラから支配を受けた時に、諸共に力丸が消したであろうよ】


【へぇ~♪ 俺ってスゴいかも♪】


【確かにな】フフ。

修行を重ねて神力基底を上げた者にとっては、ダグラナタンのものであれば、他者の強神力で発動したオーロザウラのものに比べれば消し去れる程に弱い。

そう考えて少し安堵したオフォクスだった。



 マナライティアが目を開けた。

【確かに術者はダグラナタンです。

 支配ですが、ごく弱いものです。

 玉座に居る者が父で絶対者だと縛っているだけです。

 オーロザウラの神力が希釈されたようなものですから自力で消し去るのは可能と存じます】


【ふむ、(かたじけ)ない。

 鮒丸、聞いておったな?

 父は父。玉座とは無関係だと跳ね返せば消えるであろうよ。

 力丸、手を】【はいっ】

差し出された手と繋いだ。


【父様が……笑ってる……】


【優しい笑顔であろう?】


【はい♪】


【それがティングレイス。四獣神の友だ。

 鮒丸にも見せてやれ。

 支えて乗り越えさせてやれ】


【はい♪ ありがとーございます♪】

嬉しそうにペコリ、ペコリ、ペコリ。


〈力丸ぅ~~〉〈兄様ガンバッ〉手を取った。



 もう大丈夫だろうとオフォクス達は去った。

【黒瑯、彩桜。明日はプリンにしてやってくれ】


【大量にだなっ♪】【ん♪ 運ぶ~んぶん♪】



―・―*―・―



 浄化域の記録書庫で調べていたロークスに、保魂域で調べていたラナクスが寄った。

【オーラマスクスとオーザンクロスティの魂頭部は保魂されていない。

 他にも行方不明な魂頭部がある。

 それらをリグーリが見付けたのだろう。

 何処かの天然の隠し部屋に入れていたキメラ魂頭部が人世に落ちた可能性が高いと私は思う】


【ふむ……これか?

『最重罪として封じ、永久浄化とする』と説明されている印が浄化域の記録にある】

【保魂域の記録にも同じ印があるな】

【それにしても……】

【これでは記録とは言えぬな】


【原本を持って行けばラピスリ達なら明らかにしてくれるんじゃない?】


【【そうしよう】】


チャリルが来た。

【お待たせ♪ 獣神魂と人神魂の新材よ♪

 降りましょう♪

 あら? 共鳴しないのだけどハーリィは?】


【再生域でも調べたいそうだ。

 声は掛けておくが、再生神なのだから終わったら社に直行するだろう】


ロークスとラナクスは妻を連れて術移した。



―・―*―・―



 マホガニックが目を開け、続いてホムダマールトが目を開けた。


【未だ安静にすべきです】

起き上がろうとしたのをオフォクスが止めた。


【オフォクス様、何事が起こったのでしょう?】

【オーラマスクスを感じたような……】

【言われてみれば私はオーザンクロスティを感じました】


【その通りです。

 魂頭部が人世で見付かったのです。

 しかし元凶のオーロザウラは居りません。

 感じるのは残滓のみです。

 それも回収し、浄滅しますので御案じ召されますな】


【【そうですか……】】



―◦―



 隠し社では青生と瑠璃がオーラマスクスの魂頭部を、彩桜とサーロンがオーザンクロスティの魂頭部を担当していた。

獣神部分を丁寧に分離しては保護珠へ。

何度も何度も(ほぐ)して剥がして抜き取ってを繰り返す。


【サーロンここ持ってて~】

【うん。あ、そっちも引っ掛かってない?】

【あ~、絡んで くっついてるねぇ】

長い時を経ているし、そもそも無茶苦茶に突っ込んでいるので獣神魂片同士も絡まって融合している。


それを解く為に、浄化しつつ治癒しつつで彩桜は猫の手サイズで手首から先だけの掌握を6つも出して使っている。

掌握を習ったばかりのサーロンもユーレイならではの幽体分割も使って、同じく小さな手首から先を6つ器用に操っている。



【おい紅火、張り合って増やすなよなぁ。

 けっこう気色悪いぞ】10手首て何だよ。


【理俱も遣ればよい。

 己で出せば平気になる】フ。


【負けないからなっ! 修行してやる!】


【そうすればよい】フフ♪


【ったく! ん?

 その人差し指の爪、どうなってる?】刃か?


【掌握ならではだ。

 如何様(いかよう)にでも出来る。

 彩桜とサーロン、青生と瑠璃殿も同様に変形させている。臨機応変にだ】


【なんつー巨大(バカデカ)神力だよ!】〖確かにな〗

【オーディン様っ!?】〖見させてくれ〗

【はいっ!】慌てて紅火の前を空けた。


〖ふむ。新たな称号を考えねばな〗



 ロークス達が到着した。

【これは……凄いな……】


【あ♪ 魂材お願いしま~す♪

 魔女と接触してた魂材が芯なってるの~】


【ええ♪ 存分に使ってね♪】

魂材を連れてチャリルが飛んだ。


【ありがとございま~す♪】



〖皆様、摘出済み分の照合をお手伝い頂けますか?〗


【【【はい!】】】

ロークス ラナクス タオファはケイロンに連れられて獣神の魂頭部が並ぶ部屋に行った。



―・―*―・―



 やはり在ったか……あの穴が投入口か?


 再生域で調べた後、ハーリィは職域の北東に離れた樺太の真上辺りの雲地を調べていて、穴らしい(くぼ)みを見付けて向かった。


 ハーリィが再生域に戻って調べたかったのは罪神の堕神としての再生記録だったのだが、最奥に雑然と積まれていた古い獣語で書かれた記録書に、天然の隠し部屋『雲間』についての記述を見付けて読み耽っていたのだった。


古語すぎて解読できなかったり、風化して判読できなかったりだったが、雲間は流動的で、思いの外 容易に空間の大きさが変化するだけでなく移動もしてしまうし、口も勝手に開いたり閉じたりしまうと書かれてあった。


最高司補に昇る程に下空暮らしに慣れたハーリィとしても、職域の建物が動いたり沈んだ等とは聞いた覚えが無かったので、かなり驚いてしまった。


 人世側(下向き)にも口が開いたのだろうな。


見付けた穴から入り、うねうねと続く通路状の空間を進んで行く。


「こんなにも……」


壁が薄くなっている箇所の向こうに広い空間が在ると見えたので抜けると、この雲間にも魂頭部が並んでいた。

もっとよく見ようと踏み出すと――


《誰ぞ……》


――低く響く声に続いて、ゆらりと現れた黒いモノは禍の塊としか思えなかった。


「見ての通りの職神、再生最高司補だが、そちらこそ何方なのです?」


《ケモノめが……》

ハーリィの問いには答えず迫り寄って来た。







夜になりましたので、鹿羽家と八頭兄弟のお話は置いておいて樺太の続きです。


まだ目的は不明ですが、キメラ魂頭部を作ったのは魔女か悪神で、雲間に隠れていたようですね。



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