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ヤマタノオロチから節勇へ



 常識外が初めてな鹿羽(かのう)父子に向けての話を彩桜が終えて、神隠しの話を聞き出そうとした時――

【彩桜、動いたから来て】【ん】

――節勇(ヤマタ)を見てもらっていた青生に呼ばれた。


「それじゃ少しでも寝てく~ださい♪」

続きは明日だとニッコリ微笑んで、父子を治癒眠で包むと布団に横たえ、サーロンを連れて瞬移した。



――輝竜家の書庫。ヤマタの真下。

【彩桜が拾知結果から予想した通りだったよ。

 スサノオ様に退治された残滓が生きていたんだ】

【退治したのは込められた直後なのだが、スサノオ様は眠りから覚めていなかったが故に完全ではなかったのだろう】


【だから見えないのに不穏が出てたんだねぇ。

 粉々だから吸着? でも摘出?】


【細かい塵だから弱めの闇呼吸着で集めてから摘出かな?】

【ふむ。そうすべきだな。

 摘出中は浄化と眠りの維持を頼む】


【ん。サーロン頑張ろ~ねっ♪】【うん♪】


節勇(みさお)君の身体ごと引き寄せてね】【ん♪】

一斉に節勇(ヤマタ)の上に瞬移して浮かぶ。


【優し~い闇呼吸着♪】お腹にピトッ。

【せ~のっ【人用浄破邪の極み♪】治癒眠も♪】


青生と瑠璃は離れた位置から掌握での摘出を始めた。



―・―*―・―



 キツネの社では、大神達が集まってスサノオの魂頭部(たまかしら)を調べていた。


〖言われて初めてという情けなさはありますが、僅かばかり見えました〗

ケイロンが申し訳なさ気に頭を下げた。


【いやいや、私には言われようとも全くな有り様だ。

 これもまた人神でなくば解きようも無いのであろうよ。

 いやはや夜中に申し訳ない】

アマテラスも一緒に頭を下げた。


〖ケイロン、もしやこの状態は、後で運ばれた殆どに共通するのではないか?

 雲地に自然と出来る隠し部屋に納められた時期は近いのだろうからな〗

オーディンが隠し社の方に忌々しそうな視線を向けた。


〖可能性は大いにありますね。

 後の方々は ほぼお目覚めくださいませんからね〗

スサノオの魂頭部も見つけたが目覚めず、ツクヨミとアマテラスが保持していたのだった。


〖人神達に見せ、彩桜にも見せねばな。

 未だ青生と彩桜には後組を見せておらぬのだろう?〗


〖確かに。それまでの方々も多く居られますのでね〗


〖では全ては朝だ〗

〖皆様ありがとうございます〗

【【ありがとうございました】】揃って礼。



―・―*―・―



【理俱、何か見つけたのですか?】

狐儀(フェネギ)は樺太の元の場所に戻ってみたが、理俱(リグーリ)は居なかった。


【ああ。たぶん兄様の辺りには残っていない。

 コッチのは別件だと思う。

 悪神でも魔女でもなさそうだが……】


狐儀は理俱へと瞬移した。

【樺太の北端近くですね。

 海側は断崖絶壁。おや、上にも。

 此処は途中で張り出しているのですね】


【だから人は足を踏み入れてなさそうだ。

 アレ、何だと思う?

 俺は、前にモグラが作ったキメラ魂に似てると思うんだ。

 ただし人や獣じゃなく神だと思う】


【人神と獣神のキメラ魂ですか。

 敵となるか味方となるか、等とは考えても仕方の無い事でしょう。

 眠っているようですから目覚めさせてみましょう】


【目覚めるんだか――って、もう行ってるし!】


 理俱が慌てて追うと、狐儀は地中に ほぼ埋まっていた魂塊を取り出していた。

(まだら)に合わさった魂頭部(たまかしら)ですね。

 何かを試したのでしょうか?】


【何を? 獣神撲滅の為の研究で、狩った獣神と罪人神とを混ぜてみたとか?】


【恐ろしい事を言うのですね】


【だ~ってほらコレ、この部分は人神だろ?

 で、額にシルシ。罪神で間違いないだろ】


【確かに……】


【社に持ち帰って聞いてみるか?

 ホムダマールト様とマホガニック様なら浄化神してたんだから何か知ってるかもだろ?】


【そうですね。保護珠に封じましょう】


【あ……】


【また何か?】


【海にも落ちてやがる】

渋々だが海に入って拾った。

【他にも落ちてるかもだが、明日にするよ】


【もう夜明けが近いのですが、明日とは?】


【細かいなぁ。昼間に探るよ。

 朝はエィムと話したいし、ロークスにも会いたい。紅火とも話したいからな】


【ロークスと紅火様は解りますが、エィムとは何を?】


【エィムはマディアが会議とかで敵神と離れた時は代わりに護衛してるんだよ。

 ラピスリが離れて以降の様子を聞きたくてな】


【それは必要ですね】



―・―*―・―



 明け方、ようやく節勇(みさお)からの悪神魂片の摘出が終わり、犬の散歩があるからと残ったサーロンの他は神世に行った。


「ん? サーロンか?」堅太は意外と鋭い。


「またバレました♪」


「会えるのは嬉しいからいいけどな♪」

「なんだか居るのが普通だよね♪」

「学校も? 来てくれるよね?」


「はい♪ 彩桜、遠いです。

 戻るまで居ます♪」


「席もあるんだから、そのまま居たらどうだよ?」


「ボクまだ手続き中です。

 それに彩桜が遅刻になるです。

 分身は練習中ですから」


「あ~そっか。そんじゃあ出発だな♪」

一斉に走り出した。



―・―*―・―



 理俱が紅火と話した後、エィムを待っているうちに外は明るくなっていた。

梅雨らしい小雨なので陽の位置を神眼で確かめると、すっかり高くなっていた。


【遅くなってしまいました。すみません】

なかなか解放してもらえなかったらしい。

【なんだか久し振りにお師匠様ですね♪】


【窓から覗かれると面倒だからな。

 で、大変そうだが敵神の様子は?】

廃教会なので死神爺様で待っていたが心話は普通に。


【真面目に瞑想しています。

 不気味なくらいですよ。

 ですが、悪神を乗り越えるのは無理かもしれません。

 まだビクビクしていますから】


【気を探ってるのか?】


【いえ。危険なので見たりしませんよ。

 ちょっとした物音とかでビクン! です】


【悪神が現れたと思うんだな?

 疑心暗鬼の塊かよ】


【その通りみたいです。

 あとは消耗が激しいらしくて、ラピスリ姉様の治癒が恋しいみたいですね】


【それが反省に繋がればいいんだがな。

 マディアは? 落ち着いてるか?】


【はい。尾を使って話せますので♪】


【そんなら引き続き頼む】


【はい♪】術移!



【どーしてリグ(じぃ)ちゃまなの?】現れた。


【ご挨拶だなチャム】


【エィムの気が残ってるのにぃ!

 あ♪ 私、沙織と友達になったのよ♪】


【接触するなっ!】


【リグ兄ちゃまより仲良くなっちゃうんだから~♪】


【邪魔するなっ!!】


【邪魔なんてしないも~ん♪】【チャム!!】

戻ったエィムが連れ去った。



「ったく……話したくても今は学校か……」

呟きと溜め息を落として次に向かった。



―・―*―・―



 狐儀が鹿羽(かのう)(父)の姿でホテルをチェックアウトして荷物と車を家に届け、(やしろ)に戻ると鹿羽父子が穏やかに話していた。

「失礼しますね」


「社会科の狐松先生?」


「はい。2年1組の担任もしています。

 輝竜 彩桜君のクラスです」


「あっ……」


「心配しなくても仲間ですよ。

 今日は欠席としていますし、お父様は移動日ですので、ごゆっくりなさってください。

 その連絡に参りましたのみ。

 では、私は学校に戻りますので」

会釈して部屋を出、輝竜家の節勇(みさお)の部屋へ。



――ノックしてドアを少しだけ開けた。

「おや、目覚めたのですね」


「ん? あ~っと、先生だっけか?

 なんか~スッキリ?

 暴れたいのとか消えたから安心して入っていいよ」


「そうですか。では失礼しますね。

 食事を運んで来る彩桜君の担任をしています狐松です。

 八頭(やつがしら)氏とは血縁関係が無い事は知っていますか?」


「あ~はい。捨て子だって聞いてます。

 親父と会ったんですか?

 俺、3年近く会ってないんですよね」


「確かに毎日 挨拶程度はしていますが、悪霊を祓った今は すっかり別人ですよ」


「悪霊!? もしかして俺もか!?」


「はい、祓いましたよ。

 ですからスッキリしたのです」


「うわ……でも、、だよな。うん」


「男の低い声が聞こえていたとか?」


「先生てソッチ方面の人? オカルトとか」


「真実を知らぬ者が作った胡散臭い映画やらとは一緒にしてもらいたくはありません。

 ですが悪霊や悪魔とは戦っておりますよ」


「ふ~ん。でも信じるよ。

 そのとーりなのが聞こえてたから。

 邪魔するモノは全て排除しろみたいな。

 で、ずっとイライラでモヤモヤで。

 意味とかどーでもで暴れたくて。

 でも……ここ来てからかな?

 あんま暴れたいとか思わなくなって。

 でも時々モヤモヤするから他人に近づきたくなくて。

 けど、そのサクラだけは、ナンか、よく分かんないけど話してみたいな~と」


「そうですか。彩桜君ならば大喜びで友達になりたがるでしょう」


「サクラも言ってたけどマジで俺なんかと?」


「これまでの生活は全て、悪霊が道を歪めていたのです。

 本来の節勇君に戻れたのですから、彩桜君は友達になりますよ。

 落ち着いているようですから、悪霊が八頭氏に何をさせたのかを話しましょう。


 悪霊は後継者を欲して望むが儘に育てようと、幼子を拐わせたのです。

 そして、その幼子にも取り憑き、人の世を乱す者に育てようとしていたのです」


「その子供って……」自分を指差した。


「はい」


「って……じゃあ、捨てられたんじゃない?

 マジかよ……本当の親は!?

 捜してくれなかったのか!?」


「当然ながら必死で捜しておられましたよ。

 仕事も全国に出張できるように転職なさって」


「そっか。けど何年もしたら顔なんて分かんないだろ?

 だから見つかんなかった?」


「いいえ。見つからなかったのは悪霊が隠していたからです。

 親族には姿が見えないようにしていたのです。

 節勇君の顔は何歳(いくつ)になろうがご両親には判りますよ。

 節勇君には双子の兄、季勇(ときお)君が居りますので」


「双子!? 俺に兄!?」


「はい。悪霊を祓いましたので、もうご家族にも見えますよ。

 会いますか?」


「会いたい……けど……こんな俺じゃ……」


「この家で勉強しながら中学校にも通いませんか?

 季勇君も彩桜君も同じ中学校ですよ」


「学校かぁ……」







5月に輝竜家に来て以降、彩桜が少しずつ浄化していたヤマタノオロチは、ようやく節勇としての人生に踏み出せそうになっています。

最初の一歩、頑張れ! です。



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