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鹿羽父子



 季勇(ときお)のスサノオ魂片と同等神力との置換を無事に終えると、青生 瑠璃 彩桜は水槽の方に行った。


 水槽の囲みには金錦も加わっていたので、青生が名と呪に関しての説明を始めた。

もちろん紅火にも流している。


【彩桜も樺太で戦っていて呼ばれてしまって、あの強さでも短時間とは言え固められてしまったんだ。

 アフェアン様も悪神に名を呼ばれて呪で縛られてしまったから魂材にされるに至ったんだ。

 だから神様や呪に対しての本名を俺と彩桜はアミュラ様に置き換えてもらったんだよ。

 人世では気にしなくていいし、普段は忘れていてもいい。

 でも解呪とかには必要だから完全には忘れないでね】


【よく分かった。この忍面(しのびめん)も新たな名も、これからの俺達には必要不可欠で、俺達は進み続けるっきゃねーんだよな。

 で、早速か?】


【【はい】アミュラ様にお願いするには兄弟である青生を介すべきですので、安全に行き来する為には他2人となります】

瑠璃は再生最高司補の白装束に。

両掌には身体を保管する保護珠を乗せている。

【何方からでも】【彩桜は此処をお願いね】


【ん♪ 白久兄と黒瑯兄、先がいいと思う~♪

 またイライラしちゃうもん】


【【彩桜っ!】】【そうだよね♪】くすくす♪

【異議無しだ。早く行くように】【ですよね♪】


【【ったく~】】

兄弟をチラリと睨んだが、吹き出し、笑いながら保護珠に吸い込まれた。

保護珠から魂のみを取り込んだ瑠璃は龍狐女神の半獣姿になってから青生を連れて術移した。



【彩桜、瑠璃姉様の衣装は黒から白に変わったのですね?

 白の方が似合っていますね♪】


【うん♪ アレねぇ、ザブさんがトシ兄 滅したいから渡せ言ったからなのぉ。

 真っ黒服、ザブさんに突き返したの~。

 その前に真っ白服 貰ってたから神力射は大丈夫なの~♪】


亥口 利幸(ウンディ)は、神としては瑠璃(ラピスリ)様の弟なのです】

季勇(ときお)に付き添っていた慎介(フェネギ)が来た。

鹿羽(かのう)君に込めた神力は安定しましたので私も此方に。

 それに致しましても何故ウンディなのでしょう?

 私には全く()せません】


【ナンでか悪神の邪魔者イチバンなんだって~】


【より一層、解せませんね。

 さておき、ラピスリ様は再生最高司補の御姿の方が ずっと良くお似合いです】


【メイ姉 着てるの想像してるでしょ♪】


【それは……当然でしょう?】【ん♪】

彩桜に普段通りの笑顔が咲いた。


その笑顔を見て金錦と藤慈は、彩桜が心の内に無理矢理に沈め込んでいた呪に固められたショックを乗り越えたと安堵し、慎介も一緒に笑顔になった。


【ねぇねぇ兄貴達と先生。

 鹿羽(かのう)先輩、ウチに居るヤマタくんソックリじゃにゃい?】

なんだか恥ずかしくなって話題を変えた。


【ヤマタノオロチ君ですね?

 手を尽くしても不穏が消えきらず、顔を上げてくれない彼に神眼を向けたのですか?

 危険ですので おやめくださいね】

改心中の者達に不穏が伝染しないように個室を与えているのだが、ヤマタは それを利用して誰も近寄らせず、すっかり籠ってしまっているのだった。


【俯いてるからぁ、俺には よく見えるのぉ】

【彩桜の身長だと、そうなりますよね?】

【藤慈兄アタリなのぉ。

 それとね、憑かれてた八頭(やつがしら)さんと同じ臭いなのぉ】

彩桜は籠っているヤマタに朝夕の食事を届けている。

ヤマタは彩桜には少し心を許しているものの、あまり部屋の中に入られたくないらしく、受け取りに来るので顔を見ていたのだった。

軽く拾知も向けていて姓が『ヤツガシラ』だとも知っているが、また心配されてしまうだろうと話さず、代わりに八頭兄弟の名を出したのだった。


【【八頭さん、とは?】】


【大陸のカシラさんと中ボスさんしてたヒト~】


【ではオーラマスクス臭いのだな?】


【たぶんなの~。ちょっとずつ浄化なの~】


【ふむ……】【危険なのですね……】

【ですが……昼食は部屋前に置くようにと、全く姿を見せないそうなのです。

 彩桜様は受け入れてもらえているのですね。

 少しでも心を開いているのでしたら不穏が消えない謎の解明も可能でしょう。

 拾知して頂けますか?】


【うんっ♪】一緒に瞬移♪



――輝竜家の書庫。

ヤマタの部屋、ベッドの真下に行き、天井に掌を当てて彩桜は目を閉じた。

今なら狐儀に護ってもらえる。そう思って拾知を全開にした。



【んと……次、八頭(やつがしら)さんトコ】


【彩桜様、天井に手を当てたのは?

 必要なのですか?】


【ノイズ減るから。

 近くに大勢だからザワザワいっぱいなっちゃうの~。

 んとねぇ、探りは目的地に向かって掘ってく感じでぇ、拾知は投網してガサッて捕ってくる感じなの~】


【そういうものなのですか……】

感心しつつ彩桜を連れて、大陸のカシラだった八頭の真上に瞬移した。



――翼を広げた彩桜は、少し降下して布団の上から そっと触れた。

先にカシラだった兄を調べ、隣で眠っている中ボスだった弟に移った。

【やっぱり……次、鹿羽先輩の父ちゃんトコお願い。

 起きてるからマーズで行こ】


【つまり父親が見えているのですね?】


【うん。スサノオ様いるみたいなの】

布団に当てていた手を慎介と繋いだ。


【では参りましょう。

 彩桜様は拾知に集中なさってくださいね】瞬移。



――薄暗い安ホテルの部屋。

季勇(ときお)の父親はコンビニ弁当を食べていた。

「んっ!?」


「突然すみません。夜分に失礼しま~す。

 季勇君をお預かり中のマーズで~す。

 イキナリですが、季勇君て双子ですよね?」


「どうしてそれを!?」


「別件でソックリさんも お預かり中なの。

 節勇(みさお)君なの。当たってる?」

【スサノオ様 探してみるね】【お願い致します】


「そうです!

 節勇は1歳になったばかりのお盆に神隠しに遭ったんですよ!

 会えますか!?」


「悪いヒトが拐って不良のアタマにしちゃったから、魂を浄化してからになります。

 必ず会えるよぉにしますから心配しないでください。


 でもドキドキで運転したら危ないよね?

 車ごと中渡音に運んだらいい?」緑マーズに。

【大っき欠片、魂核ある~♪】


「そうですね。ご自宅まで送りましょう」

【確かに。社にお連れしましょう】


「ん♪ ご飯 ちゃんと食べてね~♪

 お話し大丈夫?」【目覚めさせる~んるん♪】


「あっ、はい。なんとか……」


「鹿羽さんも子供の頃イジメられたでしょ。

 バケモノ言われたでしょ」


「はい。ですから友達なんて作れませんでした。

 生きているのだけで必死で……。

 ですから季勇にも動物と話すのを見られたら生きていけなくなると教え込みました」


「うんうん。俺もなの。

 だから学校で空気してたの。

 誰とも話さなかったし、登下校すっごく遠回り。

 季勇君、隠すの上手だよね。

 ちゃんと友達いるもんね♪」


「そうなんですね。

 学校での話なんて一度もしてくれなくて。

 最近は医大に行きたいってだけで……」


「そぉなんだ~♪」


「本当に、それしか話してくれないんです。

 成績は悪くもありませんが、医大に行けるとも思えなくて……」


「ソッチ方面、これから大丈夫です♪

 鹿羽さん、出張いっぱいですよね?

 季勇君と節勇君、輝竜家に下宿しませんか?

 マーズの友達なキリュウ兄弟、知ってます?」


「はい。文化祭で。

 ただの勘ですが、動物と話せる仲間じゃないかと思っていました」

〖私を呼ぶのは誰ぞ? 龍神か?〗


【俺は輝竜 彩桜。今チェリーです。

 ツクヨミ様とアマテラス様がお待ちです♪】

「ナイショですけどアタリです♪

 だから忍者の友達です♪」

〖ふむ、信じよう。案内(あない)を頼む〗【はい♪】

「チェックアウトは明朝、予定通りにします。

 荷物と車もお家に運びますので、今から一緒に来てください♪」



―・―*―・―



 ツクヨミとアマテラスとサーロンが治癒を保ち、様子を見ていた季勇が目覚めた。

ツクヨミとアマテラスは治癒は保っているが姿は消した。


「夜中ですから眠ってもいいですよ」


「輝竜、君?」


「彩桜はイトコです。ボクはサーロンです」


「双子みたいなイトコ君か……」

起き上がって周りを確かめていたが

「ここ……どこ?」

困惑して首を傾げた。


「学校での事、覚えていますか?

 昼休みの少し前、何あったですか?」


「4時間目……あ……目の前が暗くなって、おじさんか、お爺さんみたいな声が……」


「何 言ったか覚えてますか?」


「カタワレだとか、ケモノだが利用できそうだみたいな……ずっとブツブツ言ってて、でも聞き取れなくて。

 だんだん気が遠くなって……」


「昼休みに2年1組に来たです。

 完全に乗っ取られてました。

 そのオジサン、悪霊です。

 もう祓いましたから安心してください。

 此処は祓い屋と忍者の拠点で、ボク達は(やしろ)と呼んでいます」

「動物と話せる仲間い~っぱいのトコ♪」

同じ顔が並んでいた。


「えっ? どうして、それを? それに……」


「暗いから入って来たの見えなかったんでしょ。

 俺、輝竜 彩桜♪」


「本当に双子みたいだね。

 輝竜君も動物と話せるの?」


「俺もサーロンも兄貴達も♪

 だから友達なってください♪」


「うん。嬉しいよ……初めてだよ……やっと本当の友達……」


「うんうん。でもね、話せなくても理解してくれる友達いっぱい居るよ♪

 だからウチ来ない? 下宿しない?」


「いいの? あ、でも父さんが……」


「だ~いじょ~ぶ♪ 入ってく~ださい♪」


「父さん!?」「うん。連れてきてもらってね」


「並んで並んで~♪

 常識の外の話、ちゃんとするから~♪」

「彩桜、その言い方だと真面目な話には思えないよ」

「そっか~♪ でも陽気は正義♪

 明るく受け入れてく~ださい♪」



―◦―



 彩桜が季勇の部屋に現れる前に、狐儀に治癒を交替してもらっていたツクヨミとアマテラスは、スサノオの魂頭部(たまかしら)に引き寄せて鹿羽から取り出した魂核と、オフォクスが運んで来た節勇に入っていた魂片とを合わせていた。


【ようやく魂頭部が目覚めそうだな】

【本当に。スサノオったら頑固で困るわね】


〖誰が頑固だと?〗


【あら、無自覚なのね♪

 魂核は魂頭部を目覚めさせられないの?】


〖何やら……呪か? いや、違うな。

 誰ぞ私の頭の芯に絡んでおるのか?

 人神共めが混ぜおったな!〗


【魂頭部に異魂を混ぜ混むとは……】

【見えもしないなんて、また厄介なこと……】







ツクヨミ様とアマテラス様に見えない混ぜ魂となると、人神様が入っているのでしょうか?

またまた厄介そうです。



ヤマタノオロチこと八頭(やつがしら) 節勇(みさお)は5月に輝竜家に来て以降ずっと個室に閉じ籠っています。

浄破邪を込めた堅固壁で囲んでいても漏れ出る不穏禍を感じた彩桜が食事の運び役を引き受けて、少しずつ浄化していたんです。



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