今度は樺太に隠れ魔女
翌日、今日はサーロンがマーズする予定だと爆走散歩の時に話して、彩桜は中学校に登校した。
この日の1時間目は社会科に変更になっていたので、邦和史の教科書を出して確認程度にササッと目を通しているとチャイムが鳴った。
今日の狐松先生も分身だねぇ。
狐儀師匠また樺太なのかにゃ?
【彩桜、理子と鳳子の魂材移し換えが終わったと連絡を受けた。
青生と共に行くのだが、念の為に闇呼玉を貰えるか?
彩桜の闇呼玉は遥かに強いからな】
瑠璃は瞬移して来たが姿を消している。
【ん】机にパパパッと連続で出した。
【ありがとう】受け取って瞬――【待って!】
【どうした? 行きたいのか?】
【じゃなくて。
魔女魂材だったヒト達 狙われてる。
悪神に魔女 重なったユーレイ?
ナンかそんなヒトが依代したくて待ち構えてるの。
だから先に――狐儀師匠! ソッチ行っちゃダメ!
眠り修行してるの! 起きちゃう!】
【ふむ。樺太なのだな?】
【うん。狐儀師匠に神眼向けたら見えちゃった】
【では先に青生と共に樺太に行け。
私が彩桜の代わりに座っておく。
この授業が終わる前に戻れ】
【ん。ソッコーね。行ってきます!】瞬移!
――動物病院。【青生兄!】
【うん、俺にも見えたよ。手強そうだね。
俺は藤慈を連れて行くよ。
彩桜はソラ君に声を掛けてみて】【ん】
―◦―
そして最速で打ち合わせと準備を終えた4人はマーズとして、樺太で合流したばかりの狐兄弟へと瞬移した。
【場所は見つけた】【蛇さんサーチね♪】
【フザケてる場合かよ】【真面目だもん】
理俱が先に集合場所の周りを蛇眼走査してくれていた。
【ほらよ】【ん♪】
ムッとしつつも情報を流してくれた。
【では包囲して一気に寄って闇呼吸着、で どうです?
抵抗されたなら藤慈の聖水メインで一斉に浄破邪で。
オモテは悪神ですから効くと思います】
【そうしましょう。
青生様、指揮をお願い致します】
【想定している流れと、抵抗された場合の効果的と考えた攻撃です】
狐儀 理俱と手を繋いで情報共有した。
【全て、拾知からなのですか?】
【拾知もあり、導き出したものもありですよ。
眠っているうちに始めましょう】
【はい】理俱も頷く。
サッと瞬移で散開。
悪神と魔女を持つユーレイが憑いている木を半径10mピッタリで囲んだ。
【木に触れる寸前まで!】【せ~のっ!】
瞬移ではなく飛ぶか駆けるかで迫る。
相手に神力を感じさせる為だ。
案の定、ユーレイは目覚めて地下に逃げた。
が、〈獣神めがっ!〉弾き出されて叫んだ。
【堅固】【【光拡散強治癒!】】【闇浄破邪!】
【地中も!【昇華光明闇障、防禍術鏡面壁!】】
赤マーズが地中から出、ユーレイを追い越して真っ直ぐ空へ。
鏡状結界で全方位を囲んで逃げられなくした。
【集中放水です!】【【術固具現化!】】
強制的に具現化されたユーレイは背後から聖水を浴びて落下した。
【昇華闇障暗黒、激天大闇呼吸着!】
〈させぬ! 神力弱化、闇千華掌!〉
闇呼玉を掲げた桜マーズを蓮華状の闇花弁がパタパタタタッと閉じて包む。
【神力無効化! 闇華も~らい♪
強化して雷化してお返し~♪】
バララッと開いた闇花弁は雷光を纏っており、瞬間的にユーレイを囲んで閉じた。
【放水再開です!】
水銃を蕾に押し当てて注入!
男女入り交じった叫び声が辺りを震わせて響き渡る。
【もっかい激天大闇呼吸着!!】
【【【【【術光矢封乱悪牢!!】】】】】
赤 藤 空 緑 紫から光矢が飛び、蕾からユーレイを連れ出して闇呼玉へ。
【昇華光明煌輝、滅禍浄破邪雷炎!!】
闇呼玉を青雷炎が包んで浄化。
【闇華解還♪ 新技も~らった♪
青生兄、誰か取り込まれてるよ。
神力弱化持ちさん♪ 大臣さんかにゃ?】
【そうみたいだね。
他にも何方かの真核を握っているね。
気絶している間に摘出するよ】
【瑠璃姉と交替ねっ♪】
闇呼玉を青生に渡して瞬移した。
直ぐに瑠璃が来た。
【始めよう】
【紅火、掌握で手伝ってね。
藤慈は聖水を注ぎ続けてね】【む】【はい♪】
摘出開始。
【狐儀殿 理俱殿。まだ気配が残っています。
お願いします】
【はい!】【空も行くぞ!】【はいっ!】
―・―*―・―
「あら? ソラ君は?」
研究室に戻った御榊がキョロキョロ。
「あっ、えっと~」
【まだ掛かるから体調不良で!】
「今朝から具合が悪かったらしくて、熱があって、病院に行きました!
このまま休ませてくださいっ」
「シッカリ治るまで休ませてあげなさいね。
観察できないのは残念だけど~」
手をヒラヒラさせて離れた。
「はいっ! ありがとうございます!」
【ソラ~、今日はお休みになったよ~】
【ありがと響♪ マーズの方を頑張るよ】
【またバイトね♪】
【あ~、そうだね】苦笑。
―・―*―・―
いつもの摘出とは大違いに困難だったが、昼前には人魂から悪神と魔女と取り込まれていた人神達の真核が分離できた。
それを確かめると、赤マーズは結界を強めて結界水槽を置くと理俱と合流し、藤マーズは水槽を聖水で満たして狐儀と合流した。
【大臣様達、まだ動かすのは無理だよね?】
青生は水槽に封珠と保護珠を入れた。
【長く神力を盗まれていたが故に崩壊消滅寸前だ】
瑠璃は水槽を挟んで向かい合った。
【魔女は接触魂材だったけど、けっこう強そうだから封じないといけないよね。
今は眠りが解けないように頑張るよ】
強治癒眠を維持。
【そうだな、頼む。
それに今は彩桜を連れて行くのは可哀想だ】
保護珠に回復治癒を当てている。
【学校で楽しそうだよね】【逃げられた!!】
【リグーリだな。やはりまだ居たか】
空マーズが来た。
【ボク、彩桜の代わりします!
吸着できるの彩桜だけですから!】瞬――
【待て。預かっている闇呼玉では?】
【もっと強くないと寄らなかったんです!】
【ふむ。だから逃げられた、か。頼む】
【はい!】改めて瞬移!
【お昼休み寸前~。お腹空いた~】
理俱と合流したらしく声だけ。
【走査中にウルサイ!】【呼んどいてぇ~】
【彩桜様、此方を】【狐儀師匠ありがと♪】
食べ始めたようだ。
【では各々を保持しておこう】
【そうだね。こっちも逃げられたら目も当てられないよね】
青生は手強い封珠内の者達への治癒眠を強め、瑠璃は不安定極まりない保護珠内の神達への回復治癒と浄化を強めた。
―・―*―・―
彩桜は昼休みに入ったので、いつものように机を祐斗と くっつけて向かい合った。
周りの机も皆が動かしている。
少し前まで彩桜の隣で この状態だったのでサーロンとしても嬉しくて仕方ない。
にっこにこで楽しく食べていると――
「もしかして、またサーロン?」
――祐斗が顔を覗き込んでいた。
「……またバレたです。ボク、まだまだですね」
狐儀からサーロンをしていた時の記憶は貰っているので。
「ナンかなぁ、食べ方が上品なんだよな」
「そうだね。彩桜より口が小さいかな?」
「ああ、開けた時のね」「そうだよね♪」
堅太、祐斗、凌央、恭弥と続いて ほっぺツンツン。
「上品、、ですか?」頬が熱い。
皆、大きく頷いた。
「それにしても、いつ入れ替わったの?」
「さっきの休み時間は彩桜だったよな?」
「はい。お昼休み少し前に入れ替わりました」
「やっぱり忍者だね。
真後ろなのに全然 気づかなかったよ」
「で、また魔女なのか?」声を潜めた。
「はい。魔女と息子が出――」『輝竜 彩桜!!』
「――あれれ?」「誰だぁ?」「3年生だね」
『こっちを向け!』
彩桜は警戒しつつ向いて首を傾げた。
強い不穏を感じたので素早く眼鏡を掛けて。
「俺の目を見ろ!!」赤を帯びている。
「にゃ~にぃ?」ぴょんぴょんと寄った。
「何故!? どうして動ける!?
輝竜 彩桜!! 俺に従え!!」
『無駄だよ』
項に手刀で気絶させて、背中に当てた闇呼玉を強い浄破邪で発動させ、憑いていた悪神を吸着した。
皆から見れば、後ろ姿な彩桜の向こうでカクンと崩れた3年生の背後にも彩桜が居たという状態だった。
「ボク、彩桜じゃありませんから♪
先生、保健室にお願いします」
丁度来た狐松に3年生と闇呼玉を渡した。
「お昼ご飯の続きです♪」
3年生と向かい合っていた分身と手を繋いで席に戻った。
「真っ黒オバケより臭かったね」「だぁね」
美雪輝と愛綺羅が顔を顰めた。
「はい。魔女の息子が憑いていたです。
だから狐松先生にお願いしたです」
「あ~、な~る♪」「だぁね~♪」
「で、それって分身の術?」
「はい♪ 7月の練習です♪
ボク、時々2人です♪」
「どこまでもマジ忍者だなっ♪」
「あの、名前を呼んだのって?」
「呪で縛る為です。
彩桜だったら危なかったです」
「目が赤くなったのは?」
「操る術です。強い催眠術みたいなのです」
「じゃあ呪いで縛って向かせて催眠?」
「です。彩桜、有名人だから危険です」
「サーロンもフルで呼ばれたら呪われるんだな?」
「ですが和語には無い発音なので、たぶん大丈夫です♪」
「そっか。正確に呼ばないと無効なんだね?」
「はい♪」ボクは天海 翔だから大丈夫♪
―・―*―・―
〈そうか。お前か……輝竜 彩桜!〉
【あっ――】 【彩桜様っ!!】
〈邪魔立てするなケモノめがっ!!
神力弱化、闇千華掌!!〉
樺太で眠っていた悪神入り魔女ユーレイと学校に現れた悪神ユーレイは捕獲できましたが、まだ樺太には居るようです。
彩桜が名を呼ばれてしまいましたが……?




