表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/870

カーマインとプレリーフ



 瑠璃が戌井家の玄関を開けると、今にも涙が零れ落ちそうな6つの瞳が救いを求めるように見上げた。


「弟から事情は聞いている。

 もう少し待ってもらえるか?」

屈んで目線を合わせ、微笑んで各々の頭を撫でた。


「ブランコのおにぃちゃん?」


「そうだ」


「スズちゃん、ケガしてない?」

「ショウ、しんじゃったの?」

仲の良い莉子と夏菜が心配を言葉にした。


瑠璃は頷いた。

「ショウと紗の父は、紗を護り抜いたのだ。

 だから紗は無事だ」


「瑠璃ったら小さな子にも同じ話し方なのね」

困り顔の澪が来ていた。


「私は幼い頃から この話し方だ。

 澪とは会話が成立していたと思うが?」


「そうだったわね」苦笑。


「紗と話させてもらえるか?」


「ええ。お願いね」



―・―*―・―



 月の門を経たマディアは禍の滝に着いた。


【ゴルシャイン兄様!

 シルバスノー兄様!

 プレリーフ姉様~!】


黄金と白銀と若葉色の兄姉が飛んで集まった。


【この話し方――】「カーマイン兄様は!?」


「シルバスノー、小さな弟に凄まないの!」


「けどコイツがカーマイン兄様を拐ってったろーがよぉ?」


「カーマイン兄様が動いたのだから、それなりの事なのであろう?

 それと先程の話法は使ってよいのか?」


「はい♪ 禁忌ではないそうです♪

 人神が全く知らないだけですけど♪


 カーマイン兄様は月の四獣神様と共に禍と戦いたいそうです。

 あの転送道の先が月なんですよ。

 ですので滝はゴルシャイン兄様とシルバスノー兄様にお任せしたいそうです。


 プレリーフ姉様♪

 カーマイン兄様がお呼びです♪」


「あら」ぽ♡

「俺達の尻拭いかぁ。

 そんじゃあ しゃーねぇよなぁ。

 でも そもそもナンで拐ったんだよ?」


「古の悪神が現れたんです。

 それで月の四獣神様の御力が必要で、禍と戦う身代わりが必要だったんです。

 悪神を封じるのは成功したのですがカーマイン兄様は月に残りたいと仰って~」


「ふ~ん」

「カーマイン兄様らしいと思う。

 月にも四獣神様がいらっしゃるとは知らず、手強い禍ばかりを随分と送ってしまったのだからな。

 此方は私とシルバスノーが引き継ぐ。

 プレリーフ姉様、カーマイン兄様を宜しくお願い致します」


微笑んで頷き、マディアの方を向いた。

「月だったら禁忌も何もないわよね?♪」


「僕は、もうとっくに神世でも使ってます。

 月の四獣神様は完全無視です♪」


「術なら任せて♪

 これで ちゃんとカーマインと戦える♪

 ちゃんと相棒できるわ♪」


『良かったわね♪ プレリーフ♪』


「あ♪ ネモフィラも一緒に行きましょ♪」


プレリーフの後ろで晴空色の龍が笑っていた。

「私をお邪魔虫にしたいの?

 今度こそ、ふたりきりなんだから気持ち伝えなさいよね」


「もうっ、ネモフィラったら!」真っ赤!


「私はシアンスタを見つけなきゃならないの。

 私は……気持ちを伝えるわよ。

 絶っっっ対!

 諦めたりなんかしないんだから!」


「ネモフィラ……」


「だからプレリーフは月で幸せ掴みなさい。

 私は強く生きるから♪」


プレリーフが想いを込めて頷いた。


「弟クンは、よくカーマインと話してたわよね?

 ふたりをヨロシクねっ♪」


「僕はマディアです♪

 カーマイン兄様がプレリーフ姉様を呼んだ本当の理由も解ってます♪

 ですので、お任せください♪

 それで……シアンスタ兄様って青ですか?」


「私より濃い青よ♪

 とっても清々しくて凛々しい青♪」


「古の四獣神様が強い青龍を探してるんです。

 僕もシアンスタ兄様を捜します。

 見つけたら一緒に月にお願いします♪」


「ありがとうマディア♪

 プレリーフ♪ 今度は月で会いましょう♪」


「そうね♪ 待ってるわ、ネモフィラ♪」



―・―*―・―



 瑠璃は、布団を被って丸まっている紗の横に正座して、黙ってポンポンと宥めるように撫で叩いていた。


『ルリせんせ?』もそもそ。


「おはよう、紗」


『ショウ……パパは?』


「命を懸けて紗を護り抜いた。

 いつまでも泣いておらず、葬式をして送ってやらぬか?

 しっかり生きてゆけると見せてやらぬか?」

布団を捲って、隙間から覗く目に微笑んだ。


「ショウ……イヤイヤしてた……おさんぽ……イヤって……でも、おうちが……」


「澪が出掛けて閉まっていたのだな?

 喧嘩したから逃げたかったのだな?」


「スズ、ウソついてないもんっ!

 でも……ケンカしちゃった……」


「見えぬもの、聞こえぬものを信じさせるのは、とても難しい事だ。

 そうそう信じてもらえるものではない。

 人とは、そういう生き物なのだ。

 しかし、もっと大人になれば、理解してくれる者も現れる」


「……ん」


「紗、秘密を守れるか?」


「ん? せんせ……のヒミツ?」


「守れるか?」


「うん!」


「私も他人には見えぬものが見えるとは話さぬようにしてきた。

 だが、澪も飛翔も気付いてくれ、信じてくれたので話した。

 そういう友が、いつかは現れる。

 それまでは黙っておけ。

 誰かに話したければ私に話せばよい」


「うん……」


「ショウと飛翔は、身体を失ったが生きている。

 いずれまた紗に会いに来る。

 私には、そう見えた。

 これが秘密だ。誰にも話すな。

 よいな?」


「うん!♪」小指を立てた手を出した。


「そうだな。約束だ」小指を絡ませた。


「ゆっびきりげ~んまん♪」

そして、ようやく布団から出た。


「喧嘩をするのは良い事か?」


「ううん……だからバチあたった?」


「そうではないが、悪い事をしたままであればショウと飛翔は現れぬであろうな」


「セイカちゃんにゴメンナサイするっ!」

走って行った。



『セイカちゃん、ゴメンナサイ!』


『スズちゃん……ごめんなさぁいぃぃ』


『リコちゃん、カナちゃん、ゴメンナサイ!』


『え?』『どーして?』『どーしても!』



 ランマーヤとして目覚めたら

 どんな顔をするのであろうな?


瑠璃はフッと笑って玄関に向かった。



―・―*―・―



 マディアとプレリーフは月に着いた。


【カーマイン兄様~♪】


 転送口を見詰めていたカーマインがサッと向いて急いで来た。

それを見た兎と狐達も。


「今度は女の子なんだ~♪」


「ちょっとコッチ!」引っ張って離れる。



 狐達も一緒に岩陰に。


【ナニナニ~?♪】


【見れば解るでしょ】


【あ~、そ~ゆ~コト♪

 それじゃ結婚式だねっ♪

 結ぶの まっかせて~♪】


【イーリスタ様には絆が見えませんけど?】


【結婚してないも~ん】


【ずっと独り身!?】


【鳳凰も少ないんだよね~。

 だからずっとボッチだったんだよね。

 で慣れちゃって~、月に来ちゃって~、そのまんま♪】


【そう、、ですか……】


【でもマディアとエーデちゃん見てたら結婚もいいな~って思っちゃった♪

 四獣神 継いだら、嫁探ししよ~♪】


【【【あ……】】】【あ♪】【成立~♪】


めでたしめでたしな光景が微笑ましい。


【まだですって!】

行こうとしたイーリスタをマディアが掴んだ。

【もう少し そっとしといてあげましょうよ】


【そっか~♪ カーマインって恥ずかしがり屋さんだもんね♪】



―◦―



 そうして、たっぷり放置した後、誰よりも嬉しそうなイーリスタが絆を結び、誓いの――

【超特大の禍です!】


一斉に戦闘モードで転送口に集結!


【私に試させて!】バフウッ!!【あら?】


輝白一色! ――が、じんわり元に。


禍は消えていた。


【絆で数倍 強化されちゃったんだから~、月 壊さないでね~】


【ごめんなさいっ!】


【カーマイン?】【大丈夫か?】

【君も強くなっているから試しておいてね】


【あ……はい】【や~ん、引かないでぇ!】


【それじゃ、さっきの続きねっ♪

 誓いの鼻ツン♪ いってみよ~♪】


【い……今……?】真っ赤っか~。


【もぉ絆 切れないよ?

 さ♪ 早く~♪ チュッとねっ♪】


【絆を切ろうなんぞとは考えていないが……】


【カーマイン……】

【ほらほら~、新婦が不安そ~だよ~?】


 意を決したカーマインがプレリーフを引き寄せ、隠すように抱き締めて背を向け、鼻先を合わせた。……らしい。


【神眼封じなんてズルい~】ぶうぶう。







カーマインは深紅、プレリーフは若葉色。

ってアカとワカナ?


ゴルシャインとシルバスノーはキンとハク?


そういえばウィスタリアってフジ?

オニキスってクロ?

ミルキィチェリーってサクラでしたよね?


ドラグーナの子は千もいますから~、中には似た者もいると思います。

ってことにっ!(汗っ)



シアンスタとネモフィラに該当する者なんて三界奇譚には出てませんし~。


軽~く千なんて数にしてしまったのを今更のように後悔してたりして~。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ