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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第45章 魔女との戦い ~闇禍だらけ編~
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説得



「これ以上、闇禍を呼ばないで。

 呼んでも全部 封じちゃうから無駄だよ。

 そのヒトからも離れてよ。

 どぉして世の全てが欲しいの?」

彩桜は語りかけながら一歩、また一歩と魔女に歩み寄った。


子神(ガキ)なんぞに何が分かる。

 戦いに来たのだろう?」

ずっと背を向けていた魔女が向いた。


「話し合いのが好きなの。

 解ってもらえない?」


「お前だけではなかろう。他は?」


「話し合うなら離れたままだよ。

 俺を攻撃したら来るよ」


「どうせ近くで囲んでいるのだろう?」


「離れてるってば。

 ぜ~んぜん感じられないでしょ?」

これは本当で、この層の端まで皆は下がっている。



 この層も牢らしく瞬移や神眼には縛りがあるが、術移は当時の人神にも知られていなかったらしく可能だった。

つまりラピスリ ロークス ラナクスが皆を連れて来るのは容易な状況ではあるのだが。



「あのね、闇禍は世を滅ぼすモノなの。

 蔓延(はびこ)っちゃったら地星なくなっちゃうの。

 み~んな消えちゃうの。

 欲しくても世が消えちゃうし、貴女も消えちゃうんだよ。

 だから闇禍なんて呼ばないで」


「見え透いた嘘を……」


「ホントだってば。闇禍に騙されてるんだよ。

 世なんて貰えないんだから呼んじゃダメ。

 受け入れてる闇禍も出してもらえない?」


「そうか。私から神力を奪うのが目的か。

 愚かな計略だな」


「違うってばぁ。

 闇禍を拒絶しないと貴女は闇禍ごと滅されちゃうの。

 利用しよぉなんて間違いなの。

 闇禍って、ずっと上位の存在なんだから」


子神(ガキ)のくせに知ったような口を……」


「少なくとも貴女よりは知ってるよ。

 貴女が閉じ込められてた間の長い長~い歴史とか、ヒノカミ様から教えてもらったコトとか」


「『ヒノカミだと!?』」


「闇禍さん、そのヒトから出ない?

 地星から去ってくれない?」


五月蝿(うるさ)いぞ小童(こわっぱ)

 呼べるものならば呼んでみよ!』


「いいの? ホントに呼んじゃうよ?

 異界から飛んで来てる仲間、片っ端から行方不明なってるの闇禍さんにも伝わってるでしょ?

 だから頑張って遠くの呼んでるんでしょ?

 その女神様は此処から出られなくても闇禍さんなら出られるでしょ?

 地星から逃げないとヒノカミ様に滅されちゃうよ?

 貴女も追い出さないと一緒に滅されちゃうんだよ」


【彩桜、欠片はステラシィリーヌ様の魂核に届いた。

 返事は無理だろうが声は届く】

【ん♪ 瑠璃姉ありがと♪】


「ねぇ、俺の言葉、届いてる?」

【ステラシィリーヌ様、カーリザウラ王子が待っています。

 お目覚めくださいステラシィリーヌ様――】

「考え込んでるの? そんな迷うコト?

 逃げるべきって分かってるんでしょ?」

王妃に呼び掛け続けつつ魔女と闇禍に話し続ける。


『何が最善なのかは分かった』

魔女の頭上に禍煙の尾を引いて黒点が2つ浮かんだ。

『その最善を儂は選ぶのみ!』

一瞬で彩桜の眼前に。更に進み――

【昇華闇障暗黒、激天特大闇呼吸着!!】

――彩桜に入ったつもりだったのだろうが闇呼玉の中だった。


「残念でした~♪ 俺、今チェリー。

 桜御神(サクラみかみ)様の御神力(おちから)を貰ってるの。

 俺に取り憑こうなんてムリなんだよ~ん♪」


【魂核に絡んでいた呪縛鎖は消えた。

 彩桜が言った通り、私の神力を吸い、成したものだったからこそ解けたのだ。

 ステラシィリーヌ様もお目覚めだ】


【サマルータ師匠ありがと♪】

「ね、見捨てられてショックだと思うけど助かったんだよ。

 そのヒトから離れてくれない?」


「離れるものか。

 私は この女神(おんな)を最悪な極悪女神とする為に己が身体を捨てたのだからな」


「う~ん、でもねぇ……新カリュー女王として歴史書に載ってたの、オーガンディオーネってヒトだったよ?

 もぉ誰も古のカリューが在った地を知らない。

 灼熱なって風雪に閉ざされてる地が神世に在るなんて知らないんだ。

 新カリューにしても古地図に載ってるのと、ほんの一時期だけ勢力拡大したけどカソーディアに滅ぼされたってだけ。

 ステラシィリーヌ様なんて載ってないし、だ~れも知らないの。

 だから諦めて出てよ」


「嘘ばかりを並べ立てるな!」


「ホントだってばぁ。

 コレ今の王様から借りた正史ね」

また何処から出したのやらだが、大きく分厚い本を差し出して開いた。

「何あって獣神様の地に来たのかも書いてないの。

 此処が獣神様の地だったってコトすらも。

 だから誰も知らないになっちゃったの。

 10億年の戦乱期も たったこれだけ」パララッ。

「新カリュー、これだけ」数行を指で丸く囲んだ。

「女王、オーガンディオーネなってるでしょ。

 どぉしてとか俺に聞かないでね。

 昔むか~しに書かれてるんだから」

書かれたのは昔々だが当然ながら改訂済みだ。


「あの、栄華を極めた大国カリューが……歴史から抹殺されてしまったのか……」


「オーロザウラが支配で操ってたからだよ。

 あの地が灼熱なったのも、戦乱期も、客観的に見て記録してシッカリ歴史を伝えられるヒト居なかったんだよ。

 でも小国のヒト達は操られてなかったから記録してたと思う。

 だけどね、人神の地を灼熱しちゃったから獣神様の地を占領したなんて、正史に書けないでしょ。

 だから故意に埋もれさせたんだと思うよ。


 ここ。2国対立期の前。

 アノーディアとカソーディアは仲良しさんしてたんだ。

 でも『カソーディア王位を簒奪したオーロザウラ』が『政を担う者達を操り、又、浄魂刑に処した』て、あるでしょ。

 だからアノーディアと対立なったの。

 最後はアノーディアに負けちゃうの。

 国旗が変わる度に、此処も、隣の都の地下牢も押し下げられちゃったの。

 こんなのして世を取って何がしたいの?

 ズルして取っても、結局 取り返されちゃうんだよ。虚しくない?」


「それでも私は……女王でありたい……」


「ふ~ん。だったらステラシィリーヌ様から出て、自分で女王の座が掴めるよぉに努力したら?

 今は世襲制じゃないんだから」


「は?」


「もぉズルしないなら今の神世のコト教えてあげる。

 闇禍にも見捨てられちゃったし、改心したら?

 コレ、最後のチャンスね。

 ヤダ言ったらステラシィリーヌ様から追い出しちゃうからね」


「追い出せるのならば何故しなかった?」


「ステラシィリーヌ様の負担なるから。

 それに滅するより改心してほしいもん」


「この私を滅するだと?」


「うん。光耐性あるの知ってるよ。

 でもね、俺は光も闇もなの。

 それに浄化耐性じゃないのも知ってる。

 だから浄滅できちゃうの。

 も1コの真核から伝わらなかった?」


「そこまでも知っておるのか……」


「うん。真核2コはビックリだったけど~」


「滅したのか?」


「ううん。閉じ込めてる。

 な~んにも聞いてくれなくて お話しムリだったけど、滅するの最後の手段なんだもん。

 だから最後のチャンスなの。

 改心しないなら、可哀想とか言ってらんない。

 世の為に滅するしかないの」

黒女神の赤い瞳に真剣な眼差しを向けた。


「掛かりおったな! 生意気な子神(ガキ)めが!」

よく反響する地下牢に高笑いを響かせた。


「やっぱり改心ムリなんだね。残念だよ」

もう一度 向けた瞳は虚ろではなく悲し気で、被支配の暗赤も帯びておらず、確かな意志が感じられる大粒の涙をひと筋 流した。


「何故 支配が効かぬ!? ギャアアッ!!」

〈私から出よ! オーガンディオーネ!!〉


【昇華闇障暗黒、闇化封乱悪牢!

 激天特大闇呼吸着!!】


ステラシィリーヌに押し出され、闇矢に貫かれたオーガンディオーネの真核は最後まで喚き散らしながら闇呼玉に吸い込まれた。


「ステラシィリーヌ様、そのままお待ちくださいね」

【青生兄 瑠璃姉、復輝降臨してあげてぇ】


 闇禍と魔女を出せたのは良いが、ステラシィリーヌ自身は長く神力を吸い取られていた為に姿を保てなくなっていた。


皆を乗せたラピスリが術移して来、青生と共に、不安定に弱々しく光っている球魂状態のステラシィリーヌを手で掬って唱え始めた。


神力を注ぐ輪に加わった彩桜も翼を広げて頑張っている。

【だって俺、カーリと友達なんだも~ん♪】

説得できなかった悔しさも吹き飛ばそうとしていた。



―◦―



 地下に行った皆がティングレイスにポンポン挨拶で神王殿に入れてくれた感謝を伝えてからキツネの社に行くと、マーズが瞬移して集まった。

「今回の件で飛来した闇禍は終わったのだな?」


「はい。呼び集めていたのは魔女に憑いていた闇禍で、今は闇障大器の中です」


「もう一度となるが、この箱の分も頼む」


「はい。全てお任せしてしまって すみません」


「構わない。謝らないでもらいたい」

「だよ。もっと頼れよなっ」「そーだよ」

『ああっ! マルトニル王!?

 禍に包まれたんじゃ――いや、ご無事で何よりですっ!』


「その声……スヴァット料理長か?

 何処に居る?」


『目の前なんですけどねぇ。

 魂材にされちまって姿はお見せできないんですよ』

「えっと、オレと重なってます」

黒瑯が軽く手を挙げた。


「そうか。各々が大変な目に遭ってしまったのだな」


「それでも こうして再会できたのだ。

 喜んでおこう」

マルトニルとアフェアンに治癒を当てているサマルータが笑顔で見回した。

皆も頷き、微笑み返した。



 彩桜がオーガンディオーネと話していた間に他の者達は地下牢に閉じ込められていたマルトニル達の救出もしていたのだった。


マルトニル達もサマルータと同様に神力封じの縄や袋で隙間無く覆われ、オーガンディオーネの神力源とされて個々に監禁されていた。


復輝降臨を受けて話せる程には回復したが、まだまだ十分とは言えないので、中古期(戦乱期後期~2国対立期初期)の話を聞きたいのは山々だが夜に集まり直す事にした。


『そんじゃあ黒瑯、神を回復させる料理を教えてやる♪ ガツンと作るぞ♪』

「おう♪ リーロン行くぞ♪」「おう♪」

料理神達はレストランへ。



「彩桜、改良する」手を差し出した。


「はい紅火兄♪ とっても役に立ったよ♪」

「それ、眼鏡なの? とっても透明だけど」

ミソ コミソを連れたサーロンが覗き込む。


「霊視線偏光眼鏡の改良版♪

 支配視線拡散眼鏡♪」


「もしかして悪神の目を見ても大丈夫?」


「平気だった~♪」


「紅火お兄さん凄いです!」


「彩桜が神世から情報を拾って来てくれた。

 そうでなければ作れていない」

フイッと視線を逸らして瞬移した。


「照れちゃった~♪

 あのね、昔むか~しの国で支配を跳ね返す眼鏡っての作ってたんだって。

 ソレ聞いたから闇禍探しながら地の記憶も拾ったの。

 闇呼玉 配ったトキ紅火兄に伝えたの♪

 そしたら すぐ作ってくれたの~♪」


「ホント凄いよね!♪」


「うんうん♪」「彩桜、封じに行くよ」「ん♪」

手招きしている青生の方へ。

「ミソ コミソ、すぐ戻るからね♪

 あ、お帰り~♪」

手を振っていたが瑠璃に回収されて消えた。



「もう少しだけ待ってようね♪」


〈〈マールイ、サーロン、オイシイ♪〉〉


「ありがと♪」なでなで♪







説得には失敗してしまいましたが、大勢を救出することができました。

紅火作の眼鏡も大成功です。


それにしても真核が2つだなんて……心臓が2つあるのと同じです。

有り得ないとは言えませんが稀も稀。

だからこそ魔女になったんでしょうかね?


兎にも角にも闇禍の集団来襲は終わりました。

次は……カロリーナ姫?



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