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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第44章 魔女との戦い ~狙われた彩桜編~
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ピュアリラの想いの欠片



 姿を消して様子を窺ったサマルータとマルトニルは玉座の間から離れて姿を成し、改めて王の前に跪いた。


「陛下、アントレアよりの使者で御座います」


「アントレアの、と? 用件は?」


「アントレア王は捕虜の交換を望んでおります。

 大将を含むソードンの将10名、兵30名、及びセシアミーティナ姫様をお返し致します。

 どうか大将アフェアンをお返しくださいませ」


「ならぬ」


「陛下!? セシアミーティナ様もお返し頂けるのですよ!?」

王が溺愛していた末の姫なのでマルトニルは大いに驚くと同時に、偽者確定と身構えた。


「憎きアントレアの将は既に処刑場だ。

 魂は浄魂槽に投じ、その身は滅した。

 返し様なんぞ有りはせぬ。

 その使者を捕らえよ!!」


「陛下! 使者を捕らえるなんぞセシアミーティナ様が処刑されてしまう行いですぞ! 速やかに撤回を!」


「ええい! 儂に歯向かった将も同じくだ!

 直ちに捕らえ処刑せよ!」


(たちま)ち黒々とした兵達に取り囲まれた。


〈トトサガン! ガングニル!

 あの王は偽者だ!

 セシアミーティナ様が処刑されようが使者を捕らえよと言ったのが その証だ!

 私達に加勢してくれ!〉


 マルトニルが呼び掛けた相手は兵達の前、つまり直ぐ近くに現れた将達だった。

しかし将達は無表情で暗赤を帯びた瞳には理性も知性も感じられない狂暴さしか窺えなかった。

「捕らえよ!」

兵達が突進して来、術が封じられている玉座の間は2vs多の乱闘となった。


〈マルトニル殿、呼び掛けても無駄のようだ。

 どうやら王の偽者に支配され操られている〉


〈支配、とは?〉


〈操禍と並び最強と言われる稀なる神力だ。

 他者の魂を封じ、思うが儘に操る恐ろしい神力だ。

 偽王の瞳は赤い。

 その赤を映した瞳の者は全て偽王の意の儘だ〉


〈何と言う……ソードンは既に奴のものとなっていたのか……〉


〈偽王の目を見てはならぬよ〉


〈支配を受けてしまうのだな? 心得た〉


〈では、皆は気絶させる程度で!〉


〈それも心得た!〉


気絶者の山を築こうが兵は次々と現れる。

部隊が増えれば手強い将も増える。


その激しい乱闘の光景が不意に揺らぎ、霞んで遠ざかりつつ消えた。



―・―・―*―・―*―・―・―



【あれれ?】


〖私の拾知にまで浄魂の影響が及んだのだろう〗


【その後なら私が話そう】

サマルータが自嘲の笑みを浮かべた。

【確と思い出したのでな。

 全て気絶させようなんぞと、自惚れにも程があったようだ。

 長い乱闘の末、私達は捕らえられた。

 偽王は――いや、どうやらオーロザウラが乗っ取っていたようだな。

 奴は私を見て

『この者に決めた。地下牢に封じよ。

 術に長けておる故、縄を隙間無くな』何を決めたのやらだが、そう言った。

 そして私は神力封じ縄でギチギチに巻かれて放置されたのだ】


〖その後のソードンを知りたいものだな〗


【歴史書だと、ソードンがカストリニを支配下に置いた後、新カリューに分断されたディアストロの西側部分も占領したの。

 で、新カリューと一緒なって、周辺の小国も呑み込んでカソーディア国。


 アントレアとディアストロ東部と周辺のとノーザントが一緒なってアノーディア国。

 国2つなってからは2国対立期なるの。

 戦乱期、終わりなの】


【では新カリューはディアストロ中央部に現れたのだな?】


【うん。都、占領したの。

 新カリュー、あっちこっちの軍神様いっぱい支配して集めたの。

 攻め込んで、支配して、そのヒト達で次トコ攻め込んで。の繰り返しで拡げたの。


 この前、魔女 追っかけててソレ見えたの。

 だから歴史書の欠落部分、大きいな~て思ったの。

 戦乱期なんて説明ちょっとと地図くらいしかなかったんだもん。


 気になるのは~、マルトニル様の その後と、フローリア様が戦況好転した言ってたのだよねぇ。

 にゃ~んかぁ、繋がってる気する~♪

 紅火兄の魂材様かにゃ?

 行ってみる~んるん♪】瞬移♪



 そして紅火を連れて戻った。

大荷物も背負っているし着替えてもいる。

【お昼ご飯リーロンから貰ったの~♪

 若菜姉ちゃんから服 貰ったの~♪


 紅火兄の魂材様、カッシアス様♪

 奥様と一緒なってるみたい~。

 奥様がバミリアス様♪

 お目覚めお手伝いお願いしま~す♪】

【お願い致します】ピシッと礼。


【では呼び掛け、魂を揺さぶってみましょう】



―・―*―・―



 きりゅう動物病院では、青生が瑠璃をし、瑠璃が青生をして午前中の診察を終えた。


何やら考え事をしているらしい青生が仮眠室に行ったので、瑠璃は机上の昼食が入っているバスケットを持って追い掛けた。

【何か悩んでいるのか?】


【ん? あ、お昼だったね】


【ぼんやりして。深い悩みなのだな】


【この姿だと、どうしても悩んでしまうよね。

 今後とか、いろいろね。

 大きなのは術かな?

 どうしたら蒼月煌を緋月煌に変えられるんだろうね】


【試すのは良くないと言われたからだな?】


【うん。試して絡むと厄介で、悪くすれば呪に変貌すると言われたら試せなくなって当然だろ?

 そうなると完璧にして本番するしかない。

 でも正解は分からない。

 だから悩むと言うより困っている、かな?

 悩んでも仕方がないからね】


【ふむ。その思いは湧いて当然だが、()には傾くな】


【そうだよね。あ、食べないとね】


【そうだな】サンドイッチを取り出した。


【サンドイッチなら外で食べない?

 ドッグランでピクニックしようよ】


【それが良さそうだな】ふ♪



―・―*―・―



〖青生も連れて来ぬか?

 今ピュアリラ様もご一緒に〗

仕事中でないのは もう半分から伝わるアフェアン。


【ん~~とぉ。も~ちょい後ね。

 俺もサンドイッチ~♪】

邪魔は出来ないので食べ始めた。

【紅火兄も食べよ~♪ 休憩ね♪】


【ふむ】

【そうだな。休憩は必要だ。

 焦りは何も良いものを生まぬ】


【はい。では失礼致します】礼。彩桜の方へ。



―・―*―・―



【ねぇ瑠璃、陽射しは弱いけど雨は降りそうにないよね?】


【そうだな】


【だったら、ね? いつもみたいに】


【そうは言うが……】


【だから たまには瑠璃が横になってよ】


【それでよいのか?】


【うん。こっち側も知っておきたくてね♪】


【ふむ……】


 にこにこな瑠璃(あお)の膝枕に青生(るり)が頭を乗せて見上げる。

【恥ずかしいのだが……】


【いつもと距離は同じだよ♪

 それに今の姿で いつも通りにしたら、ご近所さん達が驚いてしまうよ】


【確かにな】【えっと、ラピスリ?】【ん?】


青生(るり)が起き上がると、困り顔のチャリルが居た。

【やっぱり そっちがラピスリなのね。

 あまりにナチュラルで気が似ていて自信が持てなかったわ。

 お邪魔をして悪いのだけれど、急ぎだと思うから報告させてね】


【先程のは、ご近所さん向けのパフォーマンスだ。気にしないでもらいたい。

 忙しいのに急かして悪かったな】


【そう? それじゃあ、術の方ね。

 他の最高司補にも協力してもらって多方面に調べたのだけれど、何方もご存知でなかったし、何にも書かれていなかったわ。

 マヌルヌヌ様もご存知なかったくらいよ。


 それで里を巡っていて預かったのだけれど小動物の里長様から 一欠片ずつなの。

 これよ。今ピュアリラ様と今ブルー様へ、ですって】


【ふむ】受け取った袋を覗き込む。【鏡だな】


【そう。鼠の里長様が呼び掛けたそうよ。

 渡せば分かると言われたのだけれど?】


【瑠璃、ピュアリラ様の想いの欠片だよ】

【ああ、あの。すっかり忘れていた】

【鼠の里長様から頂いたのを持って来るよ】

瑠璃(あお)が立ち上がり

【ごゆっくり】

微笑んで院内へ。



 その後ろ姿を見ていたチャリルが感心の溜め息を落として微笑んだ。


【どうかしたのか?】


【なんだか……ラピスリよりも女神様ね♪】


【ん?】怪訝顔。


【ラピスリは、わざと女神らしくしていないとは思っているのだけれど……だからこそ、なのかしら? とても女神らしいラピスリを見た思いなのよ。

 所作が細部までエレガントで、ええっと、、『おしとやか』だったかしら?

 男性だからこその理想なのかしらね】


【ふむ……】


【ラピスリも青生さんにだけでも たまには女神らしくしてみては?】


【そうか。だから青生はヒラヒラした服を着せたがるのか。納得だ】


【そうなのね♪ それなら尚更よ。

 着てあげなさいね♪】


そのエレガントな瑠璃(あお)が彩桜を連れて近付いて来ている。


【彩桜? 何かあったのか?

 それに、その格好……】


【うん。休憩の間だけでも、と思ってね】

【貴重な体験だし~♪

 カロリーナ姫様、目覚めたトキ違和感ないかな~て♪

 それにコレなら夫候補ならないから拐われないでしょ♪】


【それが、ラピスリが言っていたヒラヒラね♪】

チャリルは楽しそうだ。


【欠片を持って来るだけにしては時間が掛かっていると思えば……】

私への当て付けかと睨んでいる。


【そういう意味じゃなくて、この姿だと こうした方が落ち着くんだよ】

【うんうん】

【それより鏡の方を進めようよ】


【誰が話を止めたのだ?】まだ睨んでいる。


【鏡のパズル~♪】るんるんるん♪

青生と瑠璃の遣り取りは無視。

スススススサササッと素早く並べている。

【浄化復元♪ でっきあっがり~♪

 コレも光かにゃん?】浄化光を当てた。


鏡面を上にしているので鏡の上に大鳥翼を広げた瑠璃鱗の龍神が浮かんだ。


【あれれ? ピュアリラ様じゃないねぇ。

 じゃあ闇~♪】


闇を当てると龍神は消えた。

暫く待ったが何も起こらなかった。


【さっきのブルー様だよね?

 女神様もチェリー様も出ないねぇ】


【彩桜、ピュアリラ様の想い、伝わらない?】


【あ……何度も見てたんだ……何度も何度も……】


【そうみたいだね。

 切実に会いたいと願っているよね】


【後の方は『お助けください』だけどぉ】


【きっと、親しい方に闇禍が憑いて以降だね】


【うん……それまでは……】きゅん♡


【契婚でもいいの】

【いつも傍にいられなくてもいいの】

【いっそ異界に連れ去ってください】

【叶わないのに、どうして私は……】

【もう一度、私の前に……】

【お慕い申し上げております】

【愛しいブルー様……】


【アミュラ様もコッソリ見てたみたい~】


【そうだね】


【ブルー様モテモテ~】


【そうだね……】


【悲しいね……】


瑠璃(あお)も彩桜も潤む瞳で天を仰いだ。

その雲の向こうには、陽を追う白く細い三日月が神眼に見えていた。


光神(ブルー)様を追う三日月(ピュアリラ)様だね……】


【振り向いてもらえないんだよね……】くすん。







『想いの欠片』と言えば、人魂などから取り出した強い想いや記憶などなどでしたよね。

つまり魂の一部なんです。しかも強い。

だからこそ鏡の破片も、その想いの強さから『想いの欠片』と呼ばれるようになったようです。


それにしてもですよ。

瑠璃にプレゼントした服を着るって、青生は何を考えているのやらですよね。



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