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初代四獣神



「ごっ先祖様~♪」「えっ?」


《やはりイーリスタか。

 賑やかな足音が聞こえておったぞ。

 その龍は青龍の器となった者だな?》


祭壇に横一列に並ぶ水晶玉の1つが赤く輝き、朱雀の姿が淡く浮かんだ。


「はい♪ 先程は ありがとうございました♪

 青龍様の子孫、マディアです♪」

「ええっ? あっ! はじめまして!」


《ふむ。確かに似ておるな。

 で? 紹介しに来たのではなかろう?》


「はい。確かに封じたと思うのですが~、神世の状況が変わらないのです。

 まだ何か足りないのでしょうか?」


《おい青龍、寝た振りなんぞして観察するな。

 封じた後、何やらブツクサ言うておったろ》


隣の水晶玉が青く輝き、青龍が朱雀に並んだ。

《手応えがなぁ、前とは違ったんだよねぇ。

 だがまぁ、今回は器がショボいからかと己を納得させたんだよなぁ。

 なぁ子孫、空振った感、しなかったかぁ?》


「簡単に封じられたのは力量差のせいだと思ってました」


《やっぱり簡単だと思ったんだなぁ?》


「はい……青龍様の御力に圧倒されてましたけど、そう感じてしまいました」


《ふ~む……》《だよねぇ……》


更に隣が白く輝いた。

ディルムそっくりな白虎が浮かぶ。


《封珠はマヌルの嬢ちゃんトコか?

 俺の子孫に持って来させろよ。

 確かめようぜ》


「連絡できませんてば~」「僕、行きます!」


《何にせよ封じ直すべきだな。

 では玄武の器も連れて来い》


「はいっ!」


もう1つ、水晶玉が黒い靄に包まれた。

玄武も並ぶ。

《犬にされておる子も連れて参れ。

 解いてやるわぃ》


「はいっ♪」



―・―*―・―



 此処は?

 よく見えぬが……近くに人神が居るな。

 ならば獣には見えぬ蔦の種を込めておこう。

 根を張れば儂の出口となろう。



―・―*―・―



「マディアはザブダクルもダグラナタンも、いずれ出して反省させたいらしいんです」


《我等も気持ちは同じだが……》

《だから滅さずに封印したんだよなっ》

《玄武がねぇ、闇も禍も使いようだってね》

《その通りじゃろうが》


「やっぱり神は許せないとね~」


《しかし反省なんぞせぬだろうな》

《ヒネクレちまってるからなぁ~》

《何があったのやらなんだよねぇ》

《手詰まり故に呼ばれたのじゃからな》


「ご先祖様の頃も人神は獣神を無視してたんですかぁ?」


《そうだな。しかし各々が強かった》

《だから別々に暮らしてたんだよなっ》

《人神は争ってばかりだったよねぇ》

《挙げ句、己が国を灼熱地獄にしおった》


「へ? じゃあ月の門の周りって人神の国だったの?」


《そうだ。壁を成し、助けたのは我等だ》

《もンのスッッゲー熱かったんだよなっ》

《だから、壁が分厚くなったんだよねぇ》

《雪も門も人神を避難させるが為じゃよ》


「吹雪なのに? 逃げられたの?」


《そうでもせねば地が燃える》

《イカツイ風と雪で散らさねぇとなっ》

《あの灼熱も何をしたのやらだよねぇ》

《遥か彼方からの熱に驚いて行ったのじゃからのぅ》


「アレもご先祖の頃だったんだね~。

 ザブダクルと、どっちが先?」


《彼奴を遠くに封じて戻ったら熱風だ》

《休む暇もなかったよなっ》

《僕の背で寝てたじゃないかぁ》

《帰りは儂の背じゃったぞ》


《そ~だったかぁ?》あははははっ♪



―◦―



 マディアは術で加速して門に向かった。


「あ♪ カーマイン兄様~♪」


「イーリスタ様は?」


「まだなんだけど、大丈夫?」


「楽しんでいる」フッ。 「「おっ♪」」

〈早く行け。伯父上に捕まるぞ〉


「ん♪」 「待てよ!」「話すだけだ!」


「ええっと~、何でしょう?」


「「カーマインを置いて行け!」」


「滝が困るんですけど~」気に入られた~♪


「「だったら誰か寄越しやがれ!」」


「マヌルヌヌ様に相談します~」でも困ったなぁ。


「「ヨシッ! 行け!」」



―◦―



 通路からは瞬移を使って、マヌルの里へ。


「マヌルヌヌ様、さっきの封珠、月に置いてもいいですか?」


「それが良かろうのぅ。頼めるか?」


「はい♪ それと、月が禍で大変なんです。

 何方か行けませんか?」


「ふむ……此方の護りは十分じゃな?」


カウベルルが姿を見せた。

「そうですね。此方は増えましたからね」


「ふむ」〈モノオクス、ジーニクス〉


「「はい、マヌルヌヌ様」」現れて礼。


「月を頼んでもよいかの?」


「「畏まりました」」「いいんですか!?」


「勝手知ったる月じゃからの」ほほっ♪


「モノオクス、ジーニクス、テトラクスと継いだのよ」


「では、オフォクス様もお連れしないといけませんので少しお待ちください」

にこにこ瞬移♪



―◦―



【オフォクス様、失礼致します】


【如何した?】


【もう一度、玄武様の器をお願い致します。

 今度は月で】

死神装束を差し出した。


【ふむ】



―◦―



 再びマヌルの里。


〈封珠は最奥ですか?〉〈そうじゃよ〉


 瞬移で直行♪〈え? ルロザムール?〉


〈忘れておったわ。

 皆が怯えるからのぅ。

 誰も行かぬ所にしか置けなかったのじゃ〉


〈ありがとうございます♪〉

眠ったままのルロザムールを背負い、封珠を手に現れた。

〈死司域に連れて行きます〉瞬移♪



 すぐにディルムを連れて戻った。


「それでは月に――」「移動は儂に任せよ」


「あ……狐族だけの術?」「然うだ。掴まれ」




 あっという間に月へ。


「「ゲゲッ!」」蒼銀双龍が逃げた。


オフォクスがフンッと鼻を鳴らす。


「兄様、此方はお任せください」

モノオクスとジーニクスが微笑んで離れた。



「ペンタクスさ~ん!

 一緒に来てくださ~い!」

少し遠くに見つけて呼ぶと、テトラクスが連れて来てくれた。


「はい。お願いしますね」「はい♪」


「行くぞ」フンッ(術移)




――イーリスタの楽し気な声が漏れ聞こえる神殿前に。


『うんっ♪

 オフォクスはフルコンプなんだよ♪』


「ったく……」苦虫的苦笑。



「ご先祖様、お待たせ致しました」

笑いながら入った。


「早かったね~♪ さっすがマディア♪」


古の四獣神も笑う。


《先ずは、その犬じゃな。

 オフォクス、借りるぞ?》


「宜しくお願い致します」蛇亀に。


 マディアが掲げた神力の水晶から闇が飛び、オフォクスに入ると、即座に詠唱が低く響き、ペンタクスが黒い靄に包まれた。



 靄が一気に膨らんで弾け消えると、銀毛の狐が嬉しそうに尾を振っていた。


「ありがとうございます♪」

オフォクスと揃って礼。



「凄い……」「ああ。スッゲーな……」


《勝手に決めおった禁忌なんぞ知った事か》

玄武が得意気に鼻を鳴らした。


「みんなを連れて来たら――」「おいおい」

「あっ! 術をお教えください!」


《よいが、もぅちぃと修行せよ》「はい!」


《して、封珠は?》「あっ、はいっ」


《台座は奥に在る》

《色違いのが1つ在るぞ》

《あったねぇ。それ持って来てね》


「はい♪」



 マディアが戻ると、中央に魔法円が描かれており、亀鳳虎が位置に着いていた。


《台座は中央にな》「はいっ♪」


封珠を置いて位置に着くと、青龍の神力がスッと入り、詠唱が始まった。


封珠が赤青白の光と闇に包まれ、台座ごとガタガタと震えた。


詠唱が終わると同時にピタリと止まる。


《やはりのぅ》《そうだな》


《おい子孫、此処に残れ》「ええっ!?」


《僕は双子どちらかでいいよ。

 色も力もギリギリだけどねぇ》


「色はともかく、力は――」


《君の方が上だよ。僕が保証する。

 此処に居てくれるのなら嬉しいけどねぇ。

 そうもいかないんだよねぇ?》


「そうですね……」


《ペンペンは儂が鍛えるからのぅ》


「はいっ♪」


《オフォクス、これからが本番じゃ。

 心して備えよ》


「はい」


「これからが……」「本番……ってぇ!?」







マディアは青龍の、ディルムは白虎の子孫でした。

イーリスタは朱雀の子孫です。

たぶんオフォクスとペンタクスに入っている蛇亀も玄武の子孫のものでしょう。



初期の四獣神は各里の(おさ)達が話し合って選んでいたみたいですが――


神の場合、親が強ければ子も強いのは必然らしいので、どうしても選ばれるのは初代四獣神の子孫が多くなっていき――


わざわざ選ばなくても~、な風潮になって、志願や推薦にしても初代の子孫が選ばれ――


親が四獣神なら子や孫が継ぐことが多くなって、結局こうなったみたいです。



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