月の表へ
交差点の近くに在る小さな公園から、彩桜達の様子を見ているユーレイ達が居た。
〈確かに、お師匠様から聞いた特徴通りの『キツネ様』だな〉
〈でしょ?
あの女性は少し前まで暎を手伝ってたのよ。
キツネ様のお弟子さんだったのね~〉
〈男達は? 兄弟のようだが〉
〈どう見ても兄弟よね。
女性の旦那さん? 愛を感じるわ♪〉
〈揃って強い。
正式に祓い屋にはなってくれぬのか?〉
〈生きている動物を救うのに忙しいらしいわ。
惜しいわよねぇ〉
〈そうか……。
で、あれは何をしていると思う?〉
〈地縛霊にならないように? とか?〉
〈ふむ……方法を教えて貰いたいものだな〉
〈そうねぇ。あら、帰るのかしら?〉
〈離れたな。行こう〉〈ええ〉
俯き佇む青年ユーレイの前に。
〈完全に眠ってるわね〉
〈この気……〉
〈ホウジョウってば、どうかしたの?〉
〈だが別人だな。気のせいだろう〉
〈何よぉ〉
〈祓い屋に誘っていた戌井に似た気を感じた〉
〈珍しく熱心に誘ってたわよね♪
成仏したんじゃなかった?〉
〈した筈だが……〉
―・―*―・―
その頃、街と街の間に在る家では――
「出て来やがれ!! 死神野郎!!」
――利幸が鳴らない鈴をブン回していた。
「出て来やがれってんだっ!!」
「あっ、あのっ、そんなに振らなくても――」
「っせーーーっ!!!!」胸ぐら掴む。
「飛翔の代わりに俺だっつったろ!!!!!
ショウが死んじまったじゃねーかよっ!!
何しやがるんだバカヤロー!!!!!!!」
「あああああれはっ!
わわ私共がしたのではなくっ!」
「飛翔を返せっ!! ショウを返せっ!!」
「かかかかかぇ――ぐえっ」
「今すぐ返しやがれっ!!!!!」
「は、はなしっ、てっ!」
「生き返らせるんだな?」
「ひぃぃぃいぃいぃ~」
「おい。緩めてやるが逃げるなよ?」
必死で頷く!
「ほらよ」
「ですからっ! 返すも何もっ!
魂が行方不明なのですっ!」
「行方不明だと?
神のクセに妙なウソつくんじゃねぇ!」
「ほほほほほ本当ですっ!!」
「ふ~ん。ぶっちゃけ逃げられた、ってコトかぁ?」
「そそそそその通りですっ!!」コクコクッ!!
「だったら飛翔とショウを捜すな」
「ででででですがっ!
死魂は導かねばならないのですっ!
どっ、何処に隠しているので――」
「っせーーっ!!
俺が代わりだつったろーがよ!!」
「はヒィィっ!!」
「飛翔とショウは見逃せ。
いいな? 捜すなよ?
サッサと俺を殺しやがれっ!!」
「そ、そんなっ、死司神は導くだけでっ、殺すなんて――ヒィッ!」
「じゃあ飛翔とショウを殺したヤツの所に俺を連れてけ」
「むむむむ無理でっ――」「サッサとしろ!」
「私は下位ですのでっ!」
「そんなら上のヤツ連れて来い」
「そっ、そんなっ、畏れ多い――」
「連れて来やがれっ!!」
投げ飛ばすと、死神は言葉にならない叫び声を上げて消えた。
「ったく! 死神株式会社かっ!!」
―◦―
【ウンディなのに上手く言うわね~♪】
【うんうん♪ ウンディなのにね~♪】
【あの死神、二度と来ないんじゃない?】
【相手は無自覚だけど力の神だもんね~】
【ウンディってば、自分も助かるように話せばいいのにね~】
【そうよね~。あ、そ~いえば、まだ死印ついてないわよね?】
【そうね♪ 必死で逃げたから~♪】
【可哀想な死神さん♪】
【アーマル兄様も無事だってラピスリの声 聞こえたし♪】
【兄様なら、ちゃんと復活するわよね♪】
【するわよ~♪ アーマル兄様だもの♪】
子猫達は楽し気に木に戻った。
【あ♪ 月が昇ってきたわ♪】
【イーリスタ様ど~してるかなぁ……】
【可愛くて……】【強くて……】うっとり♡
【【ステキにカッコイイわよねっ♪】】
―・―*―・―
ミルキィとチェリーが見つめる先では――
「え? 青い光?」地平線の一点を指す。
「もうちょい進めば ちゃんと見えるよ~♪
神眼で見れば白く輝いてるよ♪」
「どっちも綺麗……」
「でしょ♪ 目立つし動かないから、と~ってもいい目印だよ♪」
「あ……もしかして地星?」
「そ♪ 肉眼だと人世、神眼だと神世が見えるんだよ♪」
「ぽっかり浮かぶ大きな宝石……」
「でしょでしょ♪
満ち欠けは するよ♪
真ん丸から真ん丸で1ヶ月♪
月が動いてるからね♪
地はクルクル♪ 1回転で1日♪
僕はあの島国を基準にしてるんだ♪
今の神世の基準時と同じだからねっ♪
で、コッチ側が地の方をず~っと向いてるの♪
初代四獣神様が見てられるよ~にねっ♪
陽は動くよ♪ 昇って沈む♪
ゆ~っくり1ヶ月でねっ♪
それもコッチが動いてるからだけどね♪」
「あれが陽?」
「そ~だよ~♪」
「空が暗い……でも陽が高い……」
「空気ないから~♪
古の神様の神殿、見える?」
「あ……神眼でなら。
白い神殿が……浮いてる?」
「うん♪ 人も たま~に月に来るからね~。
見えないまま突っ込まないよ~にねっ♪」
「まだけっこう距離がありますね」
「あるね~。僕に何か聞きたい?」
「聞きたい事だらけです」
「聞いて聞いて~♪」
「ペンタクス様は、お若いんですか?」
「キミより歳下だよ♪」
「え?」
「たぶんね~、ガイアルフ様は今回みたいな『もしも』の為に蛇亀の子を生んだんだよ。
亀、減っちゃってるから~」
「どうして?」
「亀神は護りの神。戦闘は苦手なんだよ。
術は得意なんだけど禁忌だらけだし~。
それを憂いて増やしたがらなかったんだ。
だからペンタクスなんだろ~ねっ。
でも今、見つからないくらいに少ないのは獣神狩りのせいだろ~けどね。
動きは遅くないんだけど戦えないからね、その場で護りに徹しても捕まるよね?
だから里にも逃げ込められなかったんじゃないかなぁ?」
「だから龍と合わせて……?」
「たぶんね~。
力が強い龍と牛を選んだんだと思うよ。
オフォクスから聞いたんだけどね、ペンタクスを育てたのはテトラクスなんだって。
オフォクスは初めて会ったって言ってたよ」
「テトラクス様は いつから月に?」
「ん~と、ドラグーナが連れて来たのは……70年くらい前かな?
里の護りにジーニクスが必要だからって。
だからペンタクスはモノオクス ジーニクスと一緒に居たと思うんだけどね~」
「モノオクス様とジーニクス様はマヌルの里にいらっしゃいました」
「でしょ? ペンタクスだけが堕神にされちゃうなんてね~。不思議だよね~」
「蛇亀だから狙われた、とか?
僕も逃げてる獣神を誘導するのに外に出たりしてましたから、同じように出ていて、とか」
「あ~、あるかもね~。
だとしたらザブダクルは、今日ダグラナタンに取り憑いたんじゃなくて、ずっと憑いてたってコトになるよね?」
「そうか……ザブダクルの力だけを得ていたんじゃなくて、ザブダクルを取り込んで、禍を操ってたんですね?」
「ダグラナタンとしては力だけを取り込んだつもりだったかも~」
「あ……ザブダクルの方が遥かに上だから入り込まれたのか……うん。納得。
ザブダクル入りの封珠を見つけて――って、封珠は何処に保管してたんですか?」
「今の神王殿の地下に当たるかな~?」
「って、まさか――」
「建てる時に掘り出しちゃったんじゃない?
神眼だと一目瞭然だけど、玉牢ソックリだから――」
「そこにダグラナタンが封じられた!」
「――んじゃないかな~?
人神ってトコトンおバカだよね~。
真上の『封じの祠』には詳細を記した岩を置いてたんだよ?
でも古代文字だから読めなかったのかな?
獣神とも話さないし~、無視するし~、救いようなんてあるのかな~?」
「でも……」
「ダグラナタンを救い出したいんでしょ?」
「はい。
ザブダクルにも解ってもらいたいんです。
凄い神様なんだから……」
「マディアって……」
「愚かだとは解ってます。でも……」
「本当の神の聖心だよ。
僕も反省~」
「そんな――」「踏まえて相談しよっ♪」
古の神様の神殿は、もうすぐ其処だった。
公園から交差点を見ていたユーレイは、もうお分かりでしょうがホウジョウとトウゴウジです。
親友で相棒ですので。
この頃ですのでトウゴウジの姿は男です。
利幸は死神を捕まえて暴れていましたが、これだけ神と接しても神として目覚めません。
どうなっているのやらです。
月ではカーマインが生き生きと禍退治と修行に励んでいるようです。
実はマディアも居心地が良いと感じていて住みたいくらいなんです。
イーリスタと話していると真面目な話でも楽しくてウズウズしてしまうマディアなのでした。




