闇の大神サマルータ
金マーズの指示で忍者移動した赤マーズは、大帝城とライブ会場だけでなく堅固結界を成して不穏を感知し易くし、城の屋上で瞑想していた。
【紅火兄、軍務本部は?】
【当然 見ている】
【イチバン怪しい思うの。
捕まえたトキ飛ばしたかもなのぉ】
【ふむ。踏まえて警戒しておく】
【うん♪】
その桜マーズは青 黒 紫 灰と共にモスクワを囲み、広く不穏を探していた。
【隠れて眠り修行?】
【そうかもね。
皇帝が動けない時を狙って事を起こしたから、今は見つからないのが最優先だろうね】
【理俱師匠、蛇さんサーチは?】
【だからっ、いや、そんな事は後か。
俺は獣神だ。
隠れている人神を発見するのには向いてないんだよ】
【ソレはオレもだ。けど諦めねぇからな!】
【オニキスには負けんからな!】
【にゃ~に争ってるのぉ?】
【【切磋琢磨だ!】】
【そぉなの? 協力し合う方がいいと思うのぉ】
【オニキスと協力とか――ん?】
【どーしたリグーリ?】
【彩桜を間に挟まないか?】
【あ~、餡こ吸着を利用するとか?】
【だよ。気を消してよーが奴は闇だ。
俺の走査とオニキスの神眼も絡ませたら見付けられるんじゃないか?】
【やってみよーぜ♪ 来い彩桜♪】【ん♪】
囲んでいた皆がモスクワ中央の上空に瞬移して集まったので、オニキスは龍になり、皆は背に乗った。
【オレとリーロンは相棒だからなっ♪】
【おうよ黒瑯♪】
【彩桜、神力を支えるから全力でね】
【青生兄……】
【俺達は2人で1神様分なんだからね】
【ん。頑張る】
【紅火もコッチに合わせろよ】【む】
【せ~のっ!】一斉に発動した。
―◦―
その頃、黄 橙 白と黄緑マーズ達は設営スタッフとしてライブ会場内での準備に勤しみつつ、現地スタッフ達の魂内を確かめていた。
【見つかりませんね。
次は外の兵士達を調べましょう。
より慎重に、反撃を受けないように直視しないでくださいね】
【【【【【【はい!】】】】】】
―・―*―・―
紺こと瑠璃はキツネの社に戻り、サマルータに闇化治癒を当てていた。
彩桜の闇障が魔女と戦うに当たっても最強に効果的な武器だからこそ、あの過酷な状況下に置かれても数十億年と推定する長い年月を生き延びた闇の人神の協力を得るべきと考えた為であった。
そのサマルータの瞼が動き、何度か瞬きをして、ようやく龍狐女神の姿を捉えた。
「私は……助けて頂けたのだな……」
意識も確かなようだ。
頷いたラピスリが話し始めようとした その時、サマルータが震え、小さく呻くと、その姿は女神に変わっていた。
「どうやら私は幾重にも呪を受けているようだな。
ふむ、見えた。神眼も使えている」ふふ♪
「笑っておられますが、呪に性別を固定されてしまったのですよ?」
「構わない。私は兄が戦場で滅される迄は女神だったのだ。
家は代々、王に仕える戦士だった。
故に男神として継いだだけなのだから。
あれから長く経た筈だ。どのくらいだ?」
「推定でしか御座いませぬが、人神の国が乱立していたのは30~40億年前。
その中期の頃の方とお見受け致します」
「確かに国は大小多く在った。今は?」
「1国で御座います。
2国で対立していた10億年を経ての統一国が20億年程 続いております」
「そうか……では私を知る者も居るまい。
女神として新たな世を楽しむとしよう」
想いを馳せているのか瞼を閉じた。
「アフェアン様を――」「何!? っ……」
目を見開き、起き上がろうとしたようだ。
「まだ無理で御座います。
アフェアン様は浄魂または還魂を受け、素材とされても尚、その御意思を保っておられます。
新たな魂達と共に修行に励み、記憶を取り戻そうとなさっておられます。
お会いになられますか?」
「そうか。捕らえられて後、アフェアンは……。
会いたい。叶うのか?」
「はい。では、お連れ致します」触れて術移。
――オニキスの背。
『サマルータ!? ……ではないのか?』
「本当にアフェアンだ♪
私は兄を継ぐ迄は女神だった。
だから戻った。それだけだ」
『そうか。その方が良いと思う。
しかし何故サマルータ程の者が、あのような目に遭う事に?』
「アフェアンと共に生きたかった。
助けたかった。しかし叶わなかった。
それだけだ」
『そうか……すまぬ』
「何を言う。そもそもは不意の襲撃で負傷者が出た私の隊を助け、我等の代わりに残ったが故だ。
アフェアン、ありがとう。
私を助けてくれて……まだ生きていてくれて」
『お互い様だ。
それだけ話せるのならば、私の宿主を助けてもらいたい』
「私に出来得る事ならば何でもしよう。
しかし宿主か……面白い状態だな」
『私は現状、寄生しているようなものだからな。
私を魂材として新たに生まれたのが青生と彩桜。人だ。
そして包まれているのが龍神ドラグーナ。
大きな龍神でな、七分割にもされている。
その龍神が光明と闇障という面白い神力を持っているのだが、制御しきれずに困っているのだ。
闇の大神として助言してやってもらいたい』
「そう。確かめさせてもらえようか?」
【青生、彩桜。此方に頼む】【【うん】】
少しだけ瞬移して女神サマルータに触れた。
「闇障とは……初めて見る闇神力だな。
光明にしても、どうやら初めてらしい。
これは……もしや異界の神力か?
私も耳にしただけなのだが……」
「ソレってブルー様の?」
「知っていたか。
私の祖先がカリューという大国で衛兵長をしていた頃に、アミュラ様と仰る大女神様から伺った話だ。
異界の御神ブルー様は強い浄化光をお持ちだ。
他には誰も発動し得ぬ光だ。
故に弱めた光を強き神に与え、ブルー様が到着する迄、耐えられるようにするのだと。
ピュアリラ様は選ばれし大女神様であった。
今も地星が存続しているのだからな。
そして今、次なる災厄から地星を救うのは、ドラグーナ様なのだろう」
『それで闇障を使い熟すには?』
「この神力は、闇神であれば自ずと生じる闇を強化し、様々に転化して発動するのだが、光神の場合は光を闇化させて同様に発動に至るようだ。
必要な光は生じる闇の倍となるのが最善。
鍛え方が足りねば、より多くの光が必要となる。
アフェアンもドラグーナ様も光神だ。
つまり、先ずは光を鍛えねばならぬ。
然すれば自給自足が叶う。
現状、彩桜の闇障は己だけでは足らずに青生の光を餌としている。
ドラグーナ様の光、アフェアンの光、と足りなければ手を伸ばしている状態だ。
その点は改善 出来よう。
あとは……私が闇の種を与えよう。
入っている小さな闇神力とも絡め、使えるようにする。
それを育てれば自らの闇で闇障を発動 出来ようぞ」
「ありがとございます♪ 俺、頑張ります♪」
『流石サマルータだな』
「アフェアンが拾知を分けてくれたからこそ。
私だけの力ではない」
【ねぇねぇ瑠璃姉。
魂材って移し替えられるんだよね?
理子さんとかみたく】
【青生と彩桜が同時に数日 動けなくなるが、可能だな】
【魔女と悪神、終わらないとダメ?】
【そうだな。欠けられては困る】
【でも可能だよね♪
平和なったらいいんだよね♪】
【そうだな。
アフェアン様ご自身の基底神力を上げる為の時も必要であろうし、サマルータ様の回復にも時が必要だ。
結婚の絆は強いが故に基底神力も体力的神力も相応に高くなければならないのだからな】
【ん♪】【彩桜、不穏が動いているよ】【ん】
神眼に集中したが、何処かで動いているという程度にしか分からなかった。
「アフェアン、今は何をしているのだ?」
『今は国と国との戦ではなく、世を破滅に向かわせようとするオーガンディオーネ、オーロザウラと戦っている』
「まさかカリューの……?」
『魂片だが生きている。
奴等に対抗する為の知恵も貰いたい』
「記憶と知識を総動員か。
折角また生きられるのだから、少しくらいは役に立たねばな」
『今は潜伏しているオーガンディオーネを探している』
「そう。それなら……ふむ。
彩桜、これを試してみてくれ」
触れている手に流した。
「ありがとございますサマルータ様♪」
【昇華闇障暗黒、闇化光循環、闇視走査!
あっ! 蛇さんサーチ重ねて!】
【ったく~。蛇眼走査! 居た!】
【【ヨシ見えた!】紅火! 固めてくれ!】
【堅固捕縛】
軍務本部で事が起こるのを待っていたが業を煮やしたらしい女性幹部が馬に乗って裏門を出ようとしたところで固まった。
【【彩桜っ】君!】悟とジョーヌの声。
【も1人! 会場の外!】【蛇眼走査! 居た!】
【ふむ。堅固捕縛】
大隊長の補佐官らしい女性が固まった。
【ジョーヌ師匠、固まってる兵士さん、連絡係なの。
すぐ行くから確保しててぇ】
【はい。預かりに行きますね】
【そんなら俺も入場口まで行くからな】
【うんうん♪ メーアありがと~♪】
【彩桜? 楽しそうですね?】アメリカの藤慈。
【藤慈兄♪ 皇帝様は?】
【はい♪
人払い状態でしたが、緊急だと連絡して頂けましたので、なりすまし事件として訂正文書を発して頂けました♪
『救世主マーズを捕らえるなんぞ有り得ぬ』と添えられておりますよ♪】
【ん♪ 藤慈兄ありがと♪
あとは~、兵士さんは魔女に操られたってコトにして~。吸着♪
幹部さんは魔女抜いて人形 残して~、眠らされて監禁されてたにしたら~、誰も悪くな~い♪】
桜マーズは注目を浴びつつ忍者移動しまくりで、せっせと魔女の魂片と不穏を抜き取った。
【そうですね♪】ふふ♪
【ぜ~んぶ完了~♪
青生兄 瑠璃姉、早く封じ行こ!
ライブ前に戻らなきゃなのっ!】
【あとは彩桜待ちだ】【あらら?】
【人形とか作っていたからだよ】【早く乗れ】
【ん♪ 兄貴達 師匠達、行ってきま~す!】
マーズは事後処理やら、金 銀に連絡やら、ライブ準備やらで各々に瞬移した。
「アフェアンの同居人達は優しいのだな……」
呟いたサマルータはオニキスに託されている。
「ですね。父様とアフェアン様の性格を受け継いでいると思いますよ。
それじゃ移動します。
音神達の音楽、たっぷり聴いて元気になってくださいね」
オニキスが楽屋に瞬移すると、紅火がベッドとモニターを設置していた。
【紅火、ありがとな♪】【む】
サマルータを横たえ、モニターを示す。
「ここから流れますから、ゆっくりしててください」
クルンとマーズに。
「青生と彩桜はアフェアン様を新魂材に移すつもりらしいです。
先に悪神と魔女退治してアイツらに数日オフ作らないといけないんで、待っててくださいね」
「なっ、何を、待て、と?」
「結婚の絆は今ピュアリラが結ぶの大得意ですから♪」
笑って瞬移した。
「な……何故バレたのだ……?」
ほらね、という感じで国際指名手配は撤回されました。
一件落着めでたし めでたしです。
伝染する魔女は厄介ですが、強力な仲間が増えました。
どうやらサマルータ様は男神として家を継いでも女神としてアフェアン様に恋していたようですね。




