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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第42章 魔女との戦い ~まだロシア編~
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貴神殿の地下牢



 神世でオーイタカラントと王子達の痕跡を辿った青生 瑠璃 彩桜は、人神達が寝静まった副都を歩いていた。


【まさか貴神殿に幽閉されているのか?】


【うん。地下だと思うの。

 王子達、怪しいからって連れて来たの】

【その途中でマナライティア様が尾行したようだね】


【ふむ。では入ろう】連れて術移。



――地下への階段の途中。

【上への階段は多いが地下へは少ない。

 この階段でなければ移動する】


【コレ当たりだと思う~】

【そうだね。下りよう】



 姿を消して、周りを確かめつつ下へ下へ。

【瑠璃姉ここ来たコトあるの?】


【来るのは初めてだが、カウベルル様とマディアから内部の様子は聞いていた。

 上層には歴代の神王とその家族が住み、王子達は地下の浅い層に居る。


 カウベルル様が調べている理由は、前王サティアタクス様が幽閉されている為だ。

 サティアタクス様はティングレイス王の兄、第1公爵様の甥で養子だ。


 前王と現王は幼い頃、父親と共に旅をしていた時に禍に襲われ、ラピスラズリ兄様が助けたが父親は消滅。

 王達は命だけは助かったものの、誰かに狙われていると感じ取ったマヌルヌヌ様の指示で、前王はマヌルの里で獣神に囲まれて育てられ、現王は王都で孤児として育てられた。

 ――と話させておいて、何をしている?】


【まだ下がある思うのぉ】

【でも階段は此処で終わりなんだよね。

 瞬移は出来ないから術移してもらえない?】


【確かに下に広い空洞が在るな。行くぞ】

連れて術移。



――【上とは離れているが最下層らしい】


【ん~~とねぇ……】

長い通路に点々と見える扉の1つを開けた。


【彩桜っ!】【たぶん確かめて開けたんだよ】


【来て来て~♪】手だけ出して招いている。


【神眼も使えぬ筈だが? 拾知で見えるのか?】


【正確には、見えてはいないけど分かるんだよ】


【ふむ……】


入ると、天井と床とに穴が開いていた。


転送口(ワープホール)

 上はヒト居るから静かに下ね?】入った。


【ったく……】【行こう】一緒に入った。



――階段の踊り場。

上への階段は半分程で地に めり込むように終わっている。

なので下へ。


【一番下に行くね】飛んで下りる。

青生と瑠璃も頷いて続いた。



 そして三層構造の最下。真の最下階に着いた。

姿だけでなく気やら全てを消して階段口から出ると、真っ直ぐに伸びる通路の端だった。

途中には壁に点々と灯りがあるが暗く、最奥だけは明るくなっていて突き当たりの扉前には番兵が居た。


【歩くと響く床だから飛ぶの~♪】ふよよ~♪


【どうして こんなに複雑なのかな?】


【繋いで使えるようにしたのはダグラナタンなのだろう。

 今の国と成る前。この城の主が変わる毎に改装され、下に押し込まれたのだろうな】


【押し込む?】

【地下をトコロテン? できちゃうの?】


【岩盤なんぞ無い。上が土地(つち)であっても下は雲地(くもち)なのだから押し込む事も可能だ】


【へぇ~♪】【人世との違いは面白いね】


【ん? また何をしている?

 青生は いつの間に彩桜と並んだのだ?】


青生と彩桜は何の変哲もない壁に手を当てて探っていた。

【この向こうが空洞なんだ。見えないけどね】

【うんうん。この壁もニセモノだと思うの~】


【古いものなのか?】


【んとねぇ……あ。コレかにゃ?

 青生兄、手伝ってぇ。瑠璃姉、肩に手~】


【こうかな?】彩桜と並んで立ち、手を重ねた。

【肩にだと?】後ろから二人の肩に手を添えた。


【せ~のっ】


『何をしろと?』と言う前に光景が見えた。



―・―・―*―・―*―・―・―



 彩桜が立っている位置に黒魔女(マナライティア)

王子達の姿も番兵の姿も見えない。

壁は無く、通路が分岐して向かい合う10対の牢らしい扉が等間隔に続いていた。


黒魔女が詠唱すると、黒い霧が立ち昇り、凝縮して壁が出来上がった。


壁を確かめて笑みを浮かべると、何やら呟いて黒魔女は消えた。



―・―・―*―・―*―・―・―



【瑠璃姉、術わかる?】


【人神用だという事しか分からぬ。

 最後に何を言った?】


【『残りを追わなければ』だったよ~】

【でもロポロ様の方が早かったんだろうね。

 術は拾えたよ。解呪してみるね】

彩桜にも伝え、両手を当てたまま唱え始めた。



 解呪、解除と続き、最後に浄破邪光を込めると、壁は溶けるように消えた。

〈オーイタカラントさ~ん♪ 居ますか~?〉

彩桜は宙を走って行った。


【巡視されては困る。塞いでおこう】

【そうだね。一緒に。【偽装】】

今度は獣神なら向こうが見える壁にした。


【この向こうにも同じように塞がれた通路が何本かありそうなんだ。

 で、最奥に前王様と側近の方々かな?

 だから その前だけは番兵が居るんだね】


【ふむ。今日は騒ぎを起こす訳にはいかないが、出直して救出しよう】


【そうだね。今日はオーイタカラント様を出すのが最優先だよね】


彩桜は中程の牢に入って話していた。


【彩桜、順に外に出してあげない?】【ん♪】

【瑠璃、解錠するから外にお願いね】【ふむ】


 此処も元々から地下牢なので、当然ながら瞬移が立ち消えるような縛りがある。

しかし人神は術移を知らないので縛りを成せる筈も無い。

閉じ込められていた人神達を乗せた瑠璃龍(ラピスリ)は術移で隠れ家へと直行した。



 居残った青生と彩桜は全消し状態を保ち、階段から奥の牢への一本道にされている通路を飛んで進み、左右に伸びる隠し通路を見つけては封じている呪壁を偽装壁に置き換えて中を調べていった。


【他はカモフラージュだったようだね】

奥へ奥へと進み、番兵に近い5本目の隠し通路の奥壁を確かめた青生が、牢の中を調べている彩桜の方を向いた。


【でも~、ちょっとだけザワザワ?】

壁をペタペタしながら上がって天井もペタペタ。


【それは感じるけど上からかも……いや、次の通路かな?】


【上、空き部屋ばっかり~。

 でも隣通路の上、居るよ】


【この間隔で隠し通路があるとしたら、突き当たりの部屋の左右にも牢が並んでいる筈だよね】


【うんうん。

 その隠し通路分の壁あるでしょ。

 通路コッチ側に扉2つずつ見えるから4部屋で、また隠し通路でしょ。

 扉、見張り易いよぉに付け変えたのかにゃ?】

コの字に並ぶ5つの扉までの長い通路は壁しかない。


【うん。隠し通路側のは塞いでいるね。

 それは此処を利用しようと考えた敵神が変えたようだね。

 全て個室。協力し合えないようにだろうね。

 上が空いていたら話し掛けてみようか】


【上、先 行こ~♪】

青生の手を取って飛んで行った。



―◦―



 隠れ家で治癒を当てているラピスリはオーイタカラントから話を聞いていた。

もちろん大いに拝まれ、感謝の言葉をたんまりと浴びせられた後なので話し始めたばかりだ。


「私共は神王様に祈りを捧げる最適の地を占術にて得て向かう途中だと説明したのですが、怪しいからと連行されてしまったのです。

 第9伯爵家の者だと言って紋章を見せましたが信じてはもらえませんでした。

 王子達は1対1でなければ運べなかったようで、連行係として私共と同じ数だけ集まり、縄を掛けられて引っ張られて行ったのです。

 弟達にも留まれと命令していましたが、その必要はない。逃げよと先に行かせました」


「はい。こちらには老神(ろうじん)子神(こども)も居りますので、兄達には申し訳ないと思いながらも進みました」


「何処に行こうと? 獣神の里か?」


「地下神殿に隠れようと。ですが最も近い神殿は破壊されていましたので、その先を目指していたのです。

 それが思っていた以上に遠く、陽が落ちて困っていたところに、ロポロ様が声を掛けてくださったのです」


「私共の方は抵抗も出来ずに引っ張られ続け、暗くなってから副都に入りました。

 貴神殿に入り、地下に向かう途中で当主夫人神(ふじん)らしき女神が王子達を呼び止め、リーダー格の王子と離れて話した後、王子達は階上に去りました。

 助けてもらえたのかと礼を言おうとしたら引き摺られて、縄は解いてもらえないまま、閉じ込められてしまったのです」


「そして50年か……見つけ出せず申し訳ない」


「いえいえそのような。

 自由の身となれた事、感謝するばかりで御座います。

 今ピュアリラ様にお会い叶った事には感激するばかりで御座います」また祈る。


「そう何度も拝まずとも」苦笑。

「閉じ込めた理由に関しては?」


「何も。無言でした。

 弟達を捕まえてから、とでも考えたのではないでしょうか」


「しかし捕まえられず……だとしても忘れたとも考え難いな。

 その辺りはオーノマイトナールに確かめるとしよう」


「えっ」


「悪いものは祓った。

 そろそろ目覚める頃だが、直接 当主殿と話してみぬか?」


「直接……そうですね。

 逃げ隠れするよりも、正面から話して決別すべきですね。

 お連れください。お願い致します」

「私も! 娘を取り返さなければなりませんので!」


「では参りましょう」



―◦―



 地下牢最下層、最下階の1階上を飛んでいる青生と彩桜は、道すがら探りつつ、気配を感じた部屋に向かっていた。


【コッチには変な壁ないからスイスイだね~♪】


【そもそも此処は忘れ去られていた。

 だからこそ敵神は、前王様を幽閉する為に他を空けたまま使ったんだと思うよ。

 あの部屋以外は呪われているから空けておかなければならないとか立入禁止だとか決めていて、巡視すらしていないんじゃないかな?

 だから黒魔女も上には壁を作る必要がなかったんだよ】


【でも……やっぱり居るよ?】


【とても古い神様みたいだね。

 完全に忘れ去られているんじゃないかな?】

扉の前に立った。

【封印も古いし神眼も通じない。

 どうすれば――】〖〖私が解く〗〗


【もしかしてアフェアン様の時代の術なの?】


〖そうだ。知っている術だ〗

〖敵対していた国が よく使っていた〗


【今は国1コなんだって~】


〖ふむ。では此処は敵城の地下という可能性もあるのだな〗

〖解くから手を当ててくれ〗


【【はい】♪】



―・―*―・―



 ラピスリ達がキツネの社に行くと、オーノマイトナールとオーラタムが話していた。


「オーラタム様?」


「マナライティアは私の妻となったと話しただけです」


「オーロザウラがした事とは言え……」

どうやらオーノマイトナール自身もマナライティアが好きだったようだ。

ガックリ肩を落として涙も落としているオーノマイトナールが少しだけ顔を上げた。

「それで……彼女は……?」


「二度と会いたくないと、奥で手伝いをしております」


「そうですか……」再度ガックリ。



「さて、どうしたものか。だな。

 話せる状態でないのだけは確か。

 今夜はお泊まりになりますか?」


「そうですね」「あのっ! リンティアは!?」


「目覚めたようですね」

眠っている中には居ないので探る。

「奥で手伝っていますね」


オーラタムが微笑み、頷く。

「はい。妻と共に。

 彼女らも支配核に偽りの結婚の絆が繋がっており、核と共に消滅しましたので、もう自由だと離れて行ってしまいました」


「では参りましょうオーエツクミント様。

 オーラタム様も」


「はいっ」「そうですね。参りましょう」







人神の地が住めなくなって、人神達が獣神の地に蔓延(はびこ)って40億年だそうです。


小国が乱立して争い続けた戦乱期が10億年。

『神世』を二分する2大国が対立していたのも10億年。

勝利した1国になって20億年です。


1国になって以降も暫くは勝利国の王族内で王を継いでいたようですが、国名を無くして王を選出するようになったのにも魔女と悪神が絡んでいるようです。



戦乱期~2国対立期の間に貴神殿の地下牢は何度も押し込まれたようです。

その最下層を見つけたダグラナタンが利用して前王様達を閉じ込めたんです。

唐突に一本道になったのには驚かなかったんでしょうかね?



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