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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第42章 魔女との戦い ~まだロシア編~
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また憑いて動く



 青生と彩桜がオーイタカラントの痕跡を辿り始めた頃、ロシア大帝城では帝子達が次々と目覚めていた。


「お母様!?」


「もう一度 生きなさいと戻していただけたの。

 ですから また一緒ですよ」


「そうですか♪ 良かった……」


広い客間に病室かのようにベッドを並べて母親に付き添わせていたので、其処此処から そんな会話が聞こえる。



 現皇帝には帝子(ていし)11人、帝妃(ていひ)9人だがエレーニャには子が居ないので、この場には帝妃は8人だ。


その8人は城に戻るに当たって死神と狐神から魔女について聞き、理解した上で、死魂5人はユーレイとして具現環が使える程度には死神(エィム)の指導で修行して復活したのだった。

毒殺から(のが)れて実家に戻っていた3人のうち2人は獣神の欠片持ちだったので、同等神力との置き換え済み、基礎修行済みで復籍している。残る1人は不穏を懐いていたが、この状況では致し方無しと不穏と魔女に関して話し、人用の浄化を浴びせただけで城に戻した。



 賑やかになった室内にノックの音が響き、扉を開けた執事長が(うやうや)しく礼。

皇帝が笑みを湛えて入室した。

「そう緊張せずともよい。

 皆が無事で嬉しく思うぞ」


妃達が立ち上がり、揃って礼。

子供達もベッドから下りて母と並んで礼をした。


「楽にしてもらいたい。家族なのだからな。

 先ずは顔を上げてもらえるか?

 これからは少しずつ『普通』も取り入れたい。

 妻が複数という時点で普通には程遠いとは思うが、家族として、距離を縮めたいのだ」

話しながら笑顔を巡らせて1人1人と目を合わせていった。

「もう元気なのか?」


確かにスッキリ元気そのものなのだが、緊張したままの子供達には、声を出してもいいのかという躊躇(ためら)いが漂う。

妃達も子の視線に困っている。


淡い髪色の帝子達ばかりの中から、明るめの茶色い髪を弾ませて女の子が駆けて来た。

「お父様♪ と呼んでもよろしいのですか?」

可愛く首を傾げる。


「そう呼んでもらいたい。皆もな」


「では……」ハグ♪「これもよろしいのですか?」


「嬉しいぞカロリーナ」よしよし。


「みなさまも♪ お姉様も早く♪」


「えっ……」第1皇女(サラナリア)、後退る。


第2皇女(カロリーナ)が駆け戻り、幼い異母弟妹の手を引いて父の前へ。

「だっこも、よろしいのですか?」


「そうだな。子沢山なのだから鍛えねばな」

まずはカロリーナを抱き上げた。


「お父様っ、私は幼くありません!」ぷんっ。


「レディだったな。しかし私の娘だ」

嬉しくて仕方ないと笑いながら次々と抱き上げていった。


カロリーナのすぐ下2人も男の子なので恥ずかしそうにしていたが、逃げられずに抱き上げられた。

それよりも下は大喜びだった。


カロリーナより歳上4人は少し後ろに並んでいる。

しかし皇帝に対して抱き上げるなとも言えないので視線を逸らしている。


察した父が笑う。

「何か望みはあるか?」


第1皇子(おうじ)のミハエリクが向いた。

「ございます!」


「近くに」


「あっ、は、はい。……お父様」


「そのノートかな?」


抱き締めていたノートを開いて見せた。

「この、赤で書き込んでくださった方を私の先生としてください!」

ただの丸バツではなく細かな文字で説明書きが添えられていた。


「これは……ふむ。

 お忙しい方々だが頼んでみるとしよう」


「ありがとうございます!」

「それをご覧になっただけで、どなたなのか、おわかりになられたのですか?」

今度は第2皇子のアレクトイ。


「この城には魔女が入り込んでいた。

 危うく乗っ取られ、世界中を巻き込む戦争を起こされてしまうところだった。

 その魔女を退治し、塔に閉じ込められていたエレーニャを救い出し、妃達を戻してくださったのが邦和の神々と忍者達だった。

 そのご指導も忍者達だよ」


「ニンジャ……ではサムライもいますか?」


「侍には会っていないが、確かめに行きたいのか?」


「「はい!」」


「アレクトイも共に留学か……聞いてみよう」


「「はい♪」」


「受け入れて頂けるようならサラナリアとザリアーラは来年だな」


「はい♪」「はい、お父様」

サラナリアは上品かつ可愛らしくドレスを摘まんでお辞儀(カーテシー)



―◦―



 困難を乗り越えて掴んだ幸せを皇帝が満喫しているのを真上の部屋から眺めていた理俱だが、城の庭に不穏を捉えた。

【紅火、来てるんだろ?】


【む。俺が追う。皇帝達を頼む】


【アレは複数欠片だったとか、魂材魔女とかの残ってた、つーか そもそも入ってたヤツか?

 それとも後で込められた欠片か?

 けど、元々なら潜んでても彩桜なら抜いてるよな。

 魂材魔女なら預けてるだろうし。

 それなら――】

【後者だ。突き飛ばした時だ】

【――やっぱ目的は椅子じゃなくソレだったのか】


【藤慈と狐儀殿が来た。共に】【おう】

皇帝達を任せて理俱は紅火を追った。



―◦―



 赤を帯びた虚ろな瞳のエレーニャは、衛兵の厩舎に入ると真っ直ぐ衛兵長の馬に向かい、必要最低限の馬具を素早く着けて森へと駆った。



 赤と紫マーズは樹上を駆け飛んで追う。

枝から枝へと全く音を立てずに進んでいる。

【森から森だったが、目的地はアレらしいな】


【何等かのスイッチを押しに行くのだろう】


【厩舎は人が居ない時間を狙ったにしても、アッチは人が居ない時なんか有り得ないぞ?】


【支配を使えば容易い】


【まさか もう定着してるのか?

 そーいや また髪が黒いな】


【定着ではなく支配。定着迄の時間稼ぎだ】


【支配されてて支配を使う?

 いや、魔女が直接か?

 何にしろ、とんでもない魔女だな。

 うわ。マジで守衛達が石像みたく固まったぞ。

 正面から堂々と入っちまった】


【そろそろ止めねばな】瞬移。


【おいっ】瞬移!



――馬を隠して厩舎から出たところを挟んだ。


無言で前の紫マーズを睨むエレーニャの瞳は赤い。


「残念だったな。忍者には効かないんだよ」


「なっ――何したのよ!?」

背後から忍び寄った赤マーズが堅固面を被せた。


大声を上げたので複数人の足音が迫っている。


【しゃーねぇなっ】

紫が出した封珠に込めると、同時に瞬移した。



――エレーニャの部屋。


【青生の真似事だが摘出する】


【仕方ないか。定着する前に出すしかないよな】

封珠から出すと同時に【夢幻爆眠!】眠らせた。


【眠り維持を頼む。光耐性が有るからな】


【ったく厄介だよな】全力維持!


【藤慈、手伝いを頼む】【はいっ】現れた。

【光でも闇でもない浄化薬を頼む】【はい♪】


【おいおい、浄化は効かないんだろ?】


【神力が絡む浄化は全て光だ。

 闇化を可能と出来るのは彩桜の様に器用な闇の大神のみだ。

 光耐性の闇神。これが魔女の根底。

 故に無属性の薬品であれば効く】


【どうやって情報を得てるんだ?】


【青生と彩桜から聞いた】


【あ~、拾知かぁ】【聖水を魂に流しますね】


【うわ。子供が大泣きしそうな注射器だな♪】


【ですが傷はつきませんよ♪】ぷす。


 注入を開始するとギャアギャア大騒ぎな魔女が額に黒く浮き上がったので、紅火は()かさず掌握で掴み出した。


【魂縛封印!】スイッと理俱の封珠へ。


【煌輝、堅固縛、相殺消音】五月蝿(うるさ)いので。

【藤慈、ありがとう】


【いえ♪ 効いて良かったです♪

 では慎介君の所に戻ります♪】瞬移。



【で、これで最後なのか?】


【これ以上の予備は作っていないと信じたい】


【警戒は解けない、ってかぁ。

 で、此奴も悪霊オバサンなんだろ?】


【そうだ。

 (リー) 富鈴(フーリン)の霊は、半分が女帝に成る実行犯として活動し、もう半分は不穏漂う魔女の丘で眠り修行をしていた。

 その修行の成果を確かめようとペルーで女性に取り憑き、動かしたが失敗して、魔女の丘に放置という刑を受けた】


【魔女の丘に返品かぁ?】


【そうなるな。

 その女性の息子達を(そそのか)し、他の『己』の邪魔をする彩桜とサーロンの命を狙わせたりもした】


【あ~、あの2人かぁ。

 あれも悪霊オバサンだったのかぁ】


【魔女の丘に居た、どの時点かは知らぬが、富鈴は『仲間』もしくは『同類』達が封じられている場所を見つけた。

 オーガンディオーネにとっては、かつて己も封じられていた場所だ。

 その封印を破ったのは息子である悪神(オーロザウラ)だ。


 今ピュアリラ様を感じる封印群を破ろうと躍起になっていたと思う。

 隙間を開ける程度にだが、破る事が叶ったのは悪神の真核が放った禍を吸収して神力としたからだろう】


【また来てたってか?】


【慰霊祭翌日に吹雪を(もたら)した悪神真核は、己を集めて神力を得ようとしていた。

 瑠璃殿は理子の封珠を持ち、邦和から離そうと魔女の丘に行った】


【ソイツを奪いにかぁ。

 で、禍で攻撃したんだな?】


【瑠璃殿に放ち、青生の怒りを買った】


【あ~。確かに静寂の氷原みたく激怒してたよな】


【そして青生の光明と拾知が開いた。

 連動した彩桜の闇障と拾知もな】


【愚かさ故の自業自得。

 ど~しよ~もない奴だな】


【魔女も悪神も敵神も、興奮すると我を忘れ、有り得ぬ程に暴走する。

 青生も彩桜も、それを利用するのが上手い】


【確かになぁ。

 そ~いや取り憑かれてた奴らも興奮すると暴走して、おバカ行動まっしぐらだったよなぁ】


【理子達 (しか)り、坊っちゃん達 然りだな。

 で、話を戻す】


【何の話してたっけか?】


【今回の悪霊は何処に居たのか、だ。

 ロシアで女帝に成ろうとしていた魔女は獣神を感じて警戒し、帝子の中から最も憑き易い者を選んだ】


【だから最初のはボロボロだったのか?】


【そもそもが半分だが、全体を崩さぬよう更に2分割したのだろう。

 その四半悪霊魔女はキツネの里から戻って以降、エレーニャ様の近くで機を窺っていた。

 ようやく移れる機を得、(あらかじ)め作っておいた『道』からエレーニャ様に戻った。

 帝妃としての地位を利用してもよし、支配を使うもよしと企んでの事だ。


 しかし獣神も忍者も去らない。

 ならば事を急げと、世界中にミサイルの雨を降らすべく軍務本部に行ったのだ】

理俱が持っている封珠を指した。

【そうすれば世は全て お前のものだとでも闇禍に(そそのか)されたのだろう】


【そこで闇禍かぁ。

 アレを全部ブッ放したら地星は木っ端微塵だ。

 一瞬にして大発生した負の感情で満腹になった闇禍は次の旅へ。

 魔女には何も残らないってか】


頷く。

【他国も合わせたならば、地星を数十回も木っ端微塵に出来るだけの兵器が有るだろう。

 魔女の行いは誰しもが愚かだと思うだろう。

 そう思うのならば、その点にも目を向け、改めてもらいたい】


【だからアッチコッチのトップに、まだ見せてるのか?

 軍務本部は動かない守衛達に大騒ぎだぞ】


【この世には常識の外が存在すると教えている。

 人知が全てではなく、意外と無力だと】


【紅火ってチビッ子の頃から悟ってたが、もう俺より神だよなぁ】


【そんな事は無い】フ。

【ただ……別筋の魔女も居るようだ】


【おいおい……】







青生 瑠璃 彩桜は確かに主力ですが、居ないと戦えないなんてことはありません。

前は皇帝から確たる証拠をと言われていたので、我慢して茶番劇をしていましたが、今回は違うので速攻です。



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