交差点の青年ユーレイ
「それじゃ僕はペンタクス連れて戻るね♪
ディルム、死神服どこ?」
「ご案内します!」
「ん? お嬢ちゃん達おとなしいね~。
僕、怖い?」
「「いいえ! 可愛くて~♪」」
「そ♪ ありがと♪
そのうち遊びに来てね♪
じゃ~ね~♪」
犬を抱いた兎は虎の背で手を振った。
苦笑を浮かべたディルムは『またな』と尾を振って瞬移した。
「オフォクス様、イーリスタ様って?」
「オニキス、滝で滅しきれぬ禍を転送しておったろう?」
「あ~、はい。
月に行くってオフォクス様、仰いましたよね?」
「そうだ。月で禍と戦っているのがイーリスタ様達、月の四獣神だ」
「ずっと気になってたんですけど、オフォクス様が『様』付けるって……?」
「如何なる意味だ?
年長者には付けて当然であろう?」
「「「えええっ!?」」」ウィスタリア苦笑。
「イーリスタ様は両四獣神の長であり最年長者だ。
儂よりも父やフィアラグーナ様に近い年齢だ」
【オフォクス! 余計なコト言わないで!】
「ふむ……。
では、トリノクスの行方を探る為にも父の欠片の様子を見るとしよう」
「ええっ!?」「「もう少し!」」
「……ふむ」
―◦―
オフォクスが行こうとした部屋では、モグラとソラが話していた。
「――うん。サイオンジ、優しいよ♪
あのね、ボクね、誕生日なの。
おばあちゃんのお見舞いに行くの。
だからバスに乗らなきゃ……」
バスを探しているのかキョロキョロしている。
「今は夜。明日の朝、行くのでは?」
「そうかも……ボク寝なきゃ……」
「おやすみ」
「ん……おやすみなさい……」
サイはサイオンジと呼ばれているのか。
ソラはサイの近くに居られるんだね。
羨ましいな――
―・―*―・―
紗が泣き疲れて眠るまで戌井家に居た瑠璃は、事故のあった交差点に来ていた。
交差点は整理されていたが通行止めになっており、信号も街灯も点いていなかった。
ん? あの娘は祓い屋の――
暗闇の中、御札使いの女子大生が祓い屋ユーレイ達と共に、留まっている霊達を説得し、昇らせていた。
「手伝おう」
「あっ、ありがとうございます。
そのボ~ッと立ってるヒトだけは、そのままでお願いします。
お兄……意識なくて……」
泣き顔を見られまいとしているのか瑠璃の方は向かず、俯き加減に青年ユーレイを見ている。
「兄……なのか?」
「お姉ちゃんの婚約者で……6月に結婚する予定だったんです。
私……護りきれなかった……」
崩れるように踞り、泣き震える肩を抱いて瑠璃は青年ユーレイを見た。
この青年は大きな欠片の器なのか?
この欠片――【トリノクス様?】
〖ラピスリか……神力は合わせられたが……封印が解けぬ。
暫し……待て……〗
【はい。兄達は?】
〖無事だ。
……が、結界を成しておるが故に話せぬ〗
【オフォクス様に相談致します。
御無理なさらず、お待ちください】
〖すまぬ……〗
「暫し時を要するが意識は戻る。
力が開けば祓い屋ともなれよう。
いずれ会わせられる。希望を持て」
「え? 力?
お兄、ユーレイなんて見えなかったのに祓い屋になれるんですか?」
「大きな力が眠っている。
だから希望を保ち、毎日 力を注いでやれば、いずれ目覚める」
「いずれ……そうね。私が頑張らないと。
お兄が このままじゃ、お姉ちゃんまで死んでしまうわ。
護りきれなかった分、頑張らないと!」
拳を握り締め、立ち上がった。
「では私は向こうの端から当たる」
肩をぽんぽんとしつつ背を向けた。
―・―*―・―
マディアは死司域をエーデリリィに頼んで、死司装束を返しに来たイーリスタと共に月に来ていた。
「オフォクスは人世で堕神助けてて~。
マディア達は神世で堕神助けてて~、連携できなかったんだよねぇ?
でも死神服 着れば行けるよね?
もう道 要らない?」
ぴょんぴょん進んでいる。
「いえ……ナターダグラル――は偽名なんです。
本当はダグラナタンなんです。
神力射を置いたのもダグラナタンで、いろいろ悪さしたんです。
そのダグラナタンもザブダクルと一緒に封じたのに神力射は動いていました。
みんなで神世に帰るには、月からの道が必要なんです。お願いします」
ペンタクスを乗せて飛んでいる。
「ん♪ じゃあ頑張るねっ♪
ペンタクス♪ 手伝ってね♪」〈はい♪〉
「イーリスタ様は、これで本当に終わったと思ってますか?」
「ソレね~、な~んかイヤ~な感じ残ってるんだよね~。
神力射もだけど、支配もまんまだもんね~」
「ですよね。
それに僕は……やっぱりダグラナタンには全て話して謝ってもらいたいんです。
ザブダクルと分離して、ダグラナタンだけ出す方法は無いんですか?」
「方法ねぇ……あ、封印 解いちゃダメだよ?」
「はい。それは解っています」
「ん~~~、初代四獣神様に相談する?」
「え? 古の神様なんですよね?」
「魂だけ水晶の中にいらっしゃるよ♪
力とは別にね~♪」
「そうなんですか♪」
狐が現れて微笑んだ。
「お帰りなさい、イーリスタ様」
「たっだいま~♪」「瞬移……?」
「術移♪ 狐だけの術だよ♪
だから大丈夫♪
テトラクス♪ ペンタクスだよ~♪」
〈兄様っ♪〉マディアの背から跳んだ。
「狐じゃなくて犬?」受け止めて なでなで。
「堕神にされちゃったんだ~。
戻るお手伝いお願いねっ♪」
「はい♪」〈がんばりま~す♪〉
「僕の代わり、ど~してる?」
「生き生きしていますよ」
「それならちょっと表に行ってくるね~♪」
「はい。行ってらっしゃいませ」
―・―*―・―
「モグラ、ソラを見ていてくれたのか?」
オフォクスが眠っているソラの傍に現れた。
「話しました。サイの弟子になったとか」
「そうか。サイの匂いがするか?」
「そうですね……」
「サイに会うか?」
「いえ……朧気にですが、操られていた間の記憶も御座いますので……」
「ふむ。しかしサイならば喜んで受け入れると思うが?」
「ですが……それでも会えません。
サイには知らせないでください」
「ならば償ってゆけばよい。
しかし無理はするな。
未だ……終わっておらぬのだからな」
「ナターダグラルを封じたのでは?」
「封じた。が、終わってはおらぬ。
彼奴はモグラの力を必要としておる。
捕まるな。それだけは肝に銘じよ」
「ありがとうございます」【オフォクス様】
【ラピスリ、如何した?】
【トリノクス様を見つけました。
ですが動ける状態では御座いません。
いらして頂けますか?】
【ふむ。行こう】
「聞いての通りだ。ソラを頼む」
「畏まりました」
―◦―
オフォクスが交差点に行くと、意識なく佇む青年ユーレイの傍に瑠璃が立っていた。
【祓い屋達は帰りました。
この青年の魂はトリノクス様の欠片の器となっており、トリノクス様はショウから移り、欠片を融合させたようで御座います。
アーマル、飛翔、ショウも魂が重なった状態です。
分離の方法はバステト様とキャティス様があと一歩と仰っておられました】
【会うたのか?】
【はい。祓い屋の紗桜さんを御存知ですか?】
【サイの仲間の生き人だな?】
【はい。彼女の内に、堕神とされたキャティス様がいらっしゃいます。
キャティス様は神の欠片を集めており、バステト様は話せる程に集まっております】
【そうか。無事で何よりだ。
トリノクスの状態を確かめた。
通る都度で構わぬ。力を注いでくれぬか?】
【毎日 通りますので必ず――】
微かな足音が駆けて来ているので、言葉を止めて確かめた。
「青生、彩桜まで……」
「ずっと此処だったから」
「お稲荷様こんばんは~」
「ショウならば、この青年の内だ」
「お稲荷様、俺……何かできる?」
「治癒でも浄化でもよい。
当ててやってもらえるか?」
「うん!」早速、光で包んだ。
青生と瑠璃も加わり、無言で光を当て続けた。
「青生兄? 瑠璃姉? お稲荷様?
俺……大丈夫だよ。
ショウは生きてるもん。
俺、毎日ここ来て頑張れ~って送るから。
ちゃんと修行して、もっと強くなるから」
「そうか……」「彩桜……」
瑠璃が抱き締め、青生が頭を撫でた。
〈サクラ……ありがと……〉
「ほらねっ♪ 聞こえたでしょ♪」
こんな経緯でカケルとショウは重なり、お盆まで眠る事になります。
ですが、トリノクスが失敗したという訳ではありません。
確かに誤算でしたが~。
力任せに閉めた栓が抜けない、開かないという経験、ありませんか?
人神達が力任せに無理矢理な術を絡めたものですから、まだ欠片なトリノクスでは解ききれなかったんです。
まだ終わっていない。
悲しみに暮れてはいられない。
各々が前を向いて進み始めました。




