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翔³(ショウソラカケル)ユーレイ探偵団1.5  外伝その1 ~探偵団の裏側で~  作者: みや凜
第三部 第41章 魔女との戦い ~魔女だらけ編~
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黒魔女マナライティア



【皇帝と帝子達の理解は得ております。

 狐は神の使徒だとも。

 ですがドラゴンは古来よりの悪者とされてしまっております。

 覆すか否かはお任せ致しますが、重々ご注意を】

騎龍マーズ5人がモスクワの大帝城に着くと、狐儀から早口で伝わった。


【帝子の皆様は?

 城内にいらっしゃるのは狐神様方ですよね?】


【はい。漢中国のキツネの里に離宮を成し、お住まい頂いております】


【そうですか。ありがとうございます】


【ですが皇帝は民を残して離れるなんぞ有り得ぬと。

 ですので理俱が付きっきりなのです】


【帝妃は現在1人、魔女のみでしたね?】


【はい。他は皆、良くて除籍という状態です】


【魔女の子は?】


【皇帝が避けておりましたので居りません。

 ですので皇帝を操って子を成し、帝子達を亡き者にしようと動き始めたところに理俱が入り、阻止したのです】

【狐儀、金錦兄。動いたぞ】神眼最強の黒瑯。


【【阻止完了】しました】


 謁見を終えた皇帝が瞬移かのように動いて魔女との接触は回避された。

慣れているのか、今は何事も無かったかのように執務室に向かっている。

その天井裏、真上には理俱。


 狐儀は魔女の真上に居る。

魔女は謁見の間から皇帝が出たところで正面に立ち、即座に支配を発動しようとしていた。

その支配を狐儀に跳ね返され、皇帝を理俱に動かされたので、怒りも露に邪魔者を探している。


【支配は闇禍の力で?】


【いえ。先日、彩桜様に拾知して頂きましたところ、オーロザウラ魂片を取り込んで得たと。

 その入れ知恵をしたのは闇禍なのでしょうが】

【つまり操禍も使えるって事だ】


【そうですか。

 では黒瑯は城内を、白久は双璧にて周囲を神眼警戒】


【【おう!】】


【紅火は皇帝の護衛と、魔女が瞬移せぬよう、堅固を同時に頼む】


【む】


【藤慈、この魔女を追い出す為の聖水を頼む。

 相手は悪霊だ。帝妃の魂内を満たせるものが作れるか?】


【作れます♪ リリス、家にお願いしますね】

【ええ♪】大瞬移♪


【兄貴! 上空、東から黒魔女だ!】



―・―*―・―



「あ~先輩達、何してるんですかぁ?

 部活日なんですよ?」

キューヤはアトリエで待っていたが2年生が来ないので呼びに来たのだった。


「あ~悪いな。あれ? 彩桜は?」

「先生達も居なくなってるね……」

「どっちか見てない?」


「さあ。どっちも見てません。

 それよか兄さん達も居なくて、陽太郎の母ちゃん来てて困ってるんですから早く来てくださいよ」


狐松が戻った。

「輝竜家の皆さんは東京に向かわれましたので私がお話ししましょう。

 輝竜君の答案は私が預かりますね」


「へ? ナンで部長のをみんなで見てるんですか?

 そんなのイジメじゃないですか!

 部長イジメたら1年とマーズ学園みんなマジで怒りますからね!」


「違うんだってぇ」

「でも……彩桜は嫌がってたよね」

「確かにね。でも謝るのは彩桜が帰ってからだよね」


「帰って……来るのかな……」


祐斗の呟きに皆、ハッと固まった。


「その事は後で電話してみましょう。

 先ずは第二部室に移動しませんか?」


「だな!

 陽太郎のもコジレたらマズイもんな!」

「急ごう」


大急ぎで帰り支度をしてアトリエに走った。



―・―*―・―



 ロシア帝国 大帝城の間近に迫った黒魔女は龍神達を感知したらしく止まった。

「人神達よ。何故、獣神(ケモノ)と馴れ合う?

 あの腑抜け王に命じられたからか?

 彼奴は裏切り者の子孫ぞ」


「結婚の絆が見えねぇのか?

 俺達は夫婦なんだよ」

白久は結んでもらえたばかりだ。


「なんとっ! (けが)らわしい獣神(ケモノ)なんぞと絆を結ぶとは!」


「っせーよ」

「本当ですね。

 その汚れきった魂を浄めてさしあげます!」

白久&みかん(マンダリーヌ)の前に現れたのは藤慈&リリス(リリシャルス)

藤慈が紅火特製の水鉄砲を構え、神世物質化している為に魂体に見える聖水の霧を勢いよく放った。


絶叫。


気絶して落下を始めた黒魔女(マナライティア)はラピスリに乗って戻った青生が抱き止めた。

【このまま俺が支配を解くからね】【青生……】

【心配しないで。

 彼女は勤勉だからブルー様を知っているよ。

 あの鏡が記憶していた少女神様は彼女だよ】

額に手を翳して目を閉じた。


【俺、闇呼吸着する~】不穏い~っぱい。

マナライティアの魂には藤慈の神聖水が効いたが、纏う不穏が過ぎる程に濃いので、彩桜は闇呼玉を腹部に当てて目を閉じた。



―・―・―*―・―*―・―・―



「マナライティアよ、目覚めなさい。

 悪しきオーロザウラの呪縛を解かねばなりません。

 周囲の不穏や禍は全て浄化しました。

 その蓋を開けて、呪縛の核を滅しに参りましょう」


オーロザウラの支配を受けてしまったマナライティアが自身の魂核を守る為に成した結界に青生は語りかけて触れた。


「この結婚の絆も偽り。

 貴女にではなく、呪縛の核に繋がっています。

 断ち切りたいのでしょう?

 俺は異界から来たブルー。

 安心して結界から出てください」


内が見えない球体の結界に横に筋が走り、その上部分が少しだけ持ち上がった。


「よく見て構わないよ。

 鏡から浮かんだ姿を見たのだろう?」

清々しい煌めきを纏う翼を広げた。


「はい、ブルー様」出て跪拝。


「弱ったままでは辛いだろう。

 魂を浄め――」【滅禍浄破邪】

「――祝福と回復を」【浄治癒】


「これほどの幸せがありましょうか……」

浴びたキラキラで笑顔も輝いた。


「良い笑顔になったね。

 神には陽の気こそが大切。

 では、悪神オーロザウラの呪縛を断ち切りましょう」


「はい!」



―・―・―*―・―*―・―・―



 狐松は居間で縮こまっていた陽太郎の母をアトリエに案内した。

その途中、大部屋で勉強している若者達や高級旅館さながらの大浴場、2階の書庫も見せて、渡り廊下では広い庭と馬と犬達も見せた。


「この離れを『アトリエ』と呼んでいます。

 美術と音楽の館ですので」


扉だけでも芸術作品のような大正モダン。

それを開けると広いキラキラな空間にグランドピアノが7台。

もう言葉なんて出やしない状態だ。


「左側には演奏会が可能なホール、正面の奥と階段の向こうにはスタジオ、右側には美術作品を保管している部屋が並んでいます。

 2階が歴史研究部の第二部室となっています。

 勉強会も2階で行っています。どうぞ」



―・―・―*―・―*―・―・―



「あの(おぞ)ましいものは……?」


赤黒い模様が蠢く岩にも見える塊を前にしたマナライティアは恐怖に囚われて後退った。


「それが呪縛の核。オーロザウラが持つ支配という神力の核でもあります。

 支配は他者を意のままに操る能力的神力。

 つまり貴女は、貴女にとって不本意極まりない事をさせられていたのです」


「いったい何を……?」


「見ない方が良いとは思いますが、気になるでしょうから垣間見(かいまみ)る程度にだけ開いておきましょう。


 この壁の向こうは記憶の領域です。

 貴女の過去は、貴女自身が守りました。

 何も壊されていませんし、偽りで上書きもされていません」


壁に手を当てて歩いていたが、

「この辺りからが支配を受けて以降の記憶。

 此処は例えるなら索引ですね」

手を当てている箇所を溶かして穴にした。


「見るのでしたら覚悟してくださいね。

 ですが、貴女自身の記憶ではありません。

 オーロザウラの記憶です。

 書物を読むが如くで十分です」


マナライティアは目を閉じて考えていたが、

「ご迷惑をお掛けした方もいらっしゃるでしょう。

 私は……神として見なければなりません」

強い眼差しを穴に向け、覚悟したと気を整えて覗いた。



―・―・―*―・―*―・―・―



 子供達からは見えない角度から様子を伺い、子供達が気付けば緊張してしまうからと、すぐに狐松と陽太郎の母は居間に戻った。


「楽しそうに勉強していたでしょう?」


「そうですね。

 あんな陽太郎を見たのは初めてです」


「クラシック界の超新星キリュウ兄弟に関しては?」


「いえ……クラシックとか、わからなくて……」


「音色に魂を委ねるだけ。

 眠くなれば眠ってもよいものですよ」


ノートパソコンにスピーカーを繋いでクルリと向けた。

画面には笑顔の彩桜。

ページ上部へとオートスクロールしていく。


「七男、末っ子が現部長の彩桜君。

 私は六男の藤慈君と親友でして、そのご縁で居候させて頂いているのですよ。

 お兄さん達も歴史研究部の部長をしていました」


同一人物の表情違いとしか思えない写真に、ローマ字での名前と簡単なプロフィールが流れていく。


「部を作ったのは長男の金錦教授なのです。

 ですから部活動の場を提供してくださっているのです。

 金錦教授のお勤め先は煌麗山大学ですので、東京の家に泊まるだけなのです。

 輝竜家は家族が多いのでバスも所有しています。

 ですので旅費も不要です。


 食事は四男の黒瑯さんと従兄のリーロンさんが提供してくださいます。

 ノワールドラコを経営しているシェフですので」


「えっ? あの有名なレストランの?」


「はい♪ メニューに採用するか否かを中学生の純粋な反応を見て決めたいそうなので、試作ですから此方も費用は不要です。

 つまり遠征しても東京であれば、ほぼ無料なのです。

 ですから今後も費用は請求しませんのでご安心ください」


「それでも申し訳ないのですが、それでしたら……はい。

 あの、こちらは有名な方ですよね?」

スクロールは止まっていて、彩桜達の両親がアップになっている。


「はい♪

 有名なキリュウ夫妻がご両親なのです。

 オーストリアを拠点として活躍されていますので常は不在なのですが、金銭的に不自由していないのはお分かり頂けますよね?

 キリュウ兄弟もステージデビューしていますので、一家の年収は……ご想像にお任せしますね。

 では年末年始のコンサートの映像を流しますね」



―・―・―*―・―*―・―・―



 マナライティアが泣き崩れた。

その肩にブルー(青生)が手を添える。


「今の貴女の姿を流しますね。

 魔に堕ちたオーロザウラの支配と禍呪の影響で髪も瞳も黒く染まり、肌も浅黒くなっています。

 過去の貴女をよくご存知の第1公爵ご夫妻ですら、オーノマイトナールの妻であるマナライティアは同じ名の別神(べつじん)だと信じて疑っていません。

 ですから、あの核を破壊し、偽りの絆を断ち切れば本来の貴女の姿に戻り、誰も同一神物(どういつじんぶつ)だとは思わないでしょう。

 貴女なら破壊する術をご存知でしょう?

 さあ早く、貴女の術で、貴女を取り戻しなさい」


「はい!」

脈動する不気味な『岩』に向かって飛んだ。







ロシア帝国の詳細云々よりも先に、襲撃して来た黒魔女ことマナライティアに対処しなければならなくなりました。

オーロザウラ持ちのオーノマイトナールの支配を受けて操られ、全てを捧げてきたマナライティアが元に戻れるようにと静かな闘いが始まりました。



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